
「Agnus Dei」
「スタートの曲だよ」ウェインライトは言う。「この曲は何年も僕の頭をこづき回してきた。もともとはバイオリンのための曲だったんだけど、僕の女みたいな声が入ったせいで印象が変わってしまった」
「どこか東欧の真ん中あたりにある国の感じがする曲で、コンバロンの音で始まるんだ。木と弦で出来たハンガリーの楽器でね。木槌で演奏するのさ」
「僕はずっとミサ曲やレクイエムのファンだった。この曲を書き始めたのはイラク戦争が始まった頃だった。"Agnus Dei"というのはラテン語で神の小羊(キリスト)という意味なんだ。世界に対する我々の罪を許したまえ、という感情をこめたんだ」
「いまの世界では、我等に平和を与えよというだけじゃ足りない。何か神の関与みたいなものが必要なんじゃないかな」彼は少し黙ってからこう付け加えた。「僕たちはそれを手に入れることができる。僕はそう信じてる」