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チャールズはちょうど6週間の休暇を終えたばかりだ。ピクシーズを4年前に結成してから初めての休みだった。もっとも、去年の冬にボストンからロサンゼルスまで走ったクロス・カントリーを別にすればの話だが。

彼はガールフレンドのジーンと一緒にヨーロッパを車でまわり、あちこちの景色を眺め、バンドのヨーロッパ・ツアーを前にした風変わりなインタビューをこなし、ずっと逃し続けてきた完璧なヨーロッパ風エンチラーダ(メキシコのパイ料理)を探しまわった。新しいアルバムも作った。



ご存じ。「BOSSANOVA」だ。以下はそれについての話だ。

「BOSSANOVA」は一言でいえば、好評だった「DOOLITTLE」でやり残したことを取り上げたものだ。

思えば最初のデモ・テープから数えて数年、彼らは着実に進化してきた。あのテープはイギリスのインディーズのレーベル4ADに熱狂的に迎えられ、彼らのデビュー盤「COME ON PILGRIM」としてそのままリリースされた。

初期の粗削りなデモ・テープに刻印された耳障りな凶暴さから、バンドとして初のフル・アルバムになった「SURFER ROSA」の斬新さへ。あれはアートと屑の両方を併せ持ったアルバムだった。そして次には、洗練されたビロードのような肌触りのポップ、「DOOLITTLE」へ。

ピクシーズは明らかに進化してきた。だが・・・彼らはメロウになってしまった、そしてコマーシャリズムに自分を売り渡してしまったと言う者もいる。

「そんな意見、俺は受け入れられないね」チャールズは大声をあげた。「前のレコードと最近のレコードの間の劇的な変化について大勢の人間があれこれ言ってるようだけど、彼らは本当に聞いちゃいないのさ。俺にとっては両方とも同じ"古いクソ"みたいなもんだ。変わったことは確かにあるだろうさ。俺たちは前より多くの金をレコードにかけられるようになった。それだけ"作品の価値"も洗練されてきてるわけだ。でも本質は変わらないんだよ」

「前の俺たちは"クレージーでハードコアで無茶苦茶なバンド"ってふうに言われてた。それが今じゃ俺たちはポップ・バンドだって言われるんだ。そりゃ違うだろ」彼はまくしたてる。ほとんど怒りを抑えきれないかのように。