部署内での飲み会では,席は毎回くじにより決めていた。





その時のあたしは端の席で,隣が山田さんだった。


山田さんは,事務所内ではあたしの隣の隣の席で,今年この部署に異動してきたばかりの人だった。


同じ部署とはいえ,安原さんが付きっきりで指導してくれていたあたしは,安原さん以外の人との関わりがまだ薄かった。


また,山田サンも今年異動になったばかりというコトで,仕事を覚えるコトに必死で周りとの関わりは薄かったと思う。



そんな入社して半年近く経ってもなお関わりのなかった山田さんと,くじによる全くの偶然から初めてまともに話すこととなった。




今思えば



この日に感謝するよ。




あの時,話しかけてくれてありがとう。







―9月―




部署内での残暑払いがあった。




きっとこの日,あたしの運命が大きく動き出した。




でも



最初は静かに動いたから




分からなかった。







ねぇ




あの時の偶然の席順が


きっとあたし達の運命の始まり。








私は,高校卒業とともにある保険会社へ入社した。



学生上がりのあたしは,保険なんて全くの無知で,本当に1日1日が勉強で,あっという間に過ぎていった。



辞めたいと思ったコトも何度もあるし
泣いたコトもたくさんあった。





そんな中で,惚れっぽいあたしは恋をした。




私に仕事を教えてくれた安原さん。
国立大出身のエリート,25歳。




後輩を持つ側になった今だからこそ思うけれど



あの頃のあたしは本当に全てにおいて無知すぎて,幼すぎて,周りの大人からすれば宇宙人だったと思う。




そんなあたしに
根気よく
丁寧に
優しく
指導してくれた安原さん。




あたしは当然のごとく彼に惹かれた。





でもそれは,いつも通りの片思いのままが心地よい…そういう恋。



まだ




もっと近くにいた運命の相手には気づかないままだった。