差し迫った現在の不幸な状態が実際には起こらなかった出来事を

「思い出させる」強いて言えば作る出す原因

記憶とは情報を継続的に選択、追加、削除、再配置し更新する

「再構築の過程」である

全ては生き残り生活していく為の必要な適応のプロセスである

何をどのように思い出すかは現在の気分によって決まる可能性が高い

現在の気分を変化させる事は必須である

幸せなものであれ、いわゆる「普通」の記憶が時とともに構築され再構成され動的に変化していくのに対して

トラウマの記憶は固定され静止している

トラウマの記憶は過去の圧縮された経験によって刻まれた「記憶痕跡」であり

脳、身体及び精神に深く刻み込まれている

 

記憶の戦い

偽りの記憶の真実、真実の記憶の偽り

そして偽りの聖杯としての「記憶抹消薬」

記憶とは歴史的な嘘の積み重ねだ

記憶と同時に優れたフィクションには特定の日付けと時間がなければならない

そうすれば、恰も真実のように見える

 

顕在記憶と潜在記憶

前者は意識されているが後者は比較的無意識である

 

顕在記憶(宣言的でエピソード的)

宣言的記憶は記憶の世界における詳細なデータ(買い物リストの一覧表みたいな感じ)

意識して語る事が出来るこの宣言的記憶は記憶のごく一部に過ぎない

 

顕在記憶の第二の形態は「エピソード記憶」

肯定的であろうが否定的であろうが感情と活力に溢れており、それぞれの人生経験を豊かに記録している

エピソード記憶は「合理的な」(顕在/宣言的)領域と「不合理」(潜在/感情的)な領域の間に

動的インターフェースを形成する

 

エピソード記憶(自伝的記憶)は意識的に思い出すというよりも

人生のある一場面がスケッチのように自然に湧き上がってくるようなもの

一般に事実の羅列である宣言的記憶よりもエピソード記憶はニュアンスに満ち曖昧である

 

潜在記憶は感情的で手続き的、感覚、感情及び行動の寄せ集めとして湧き上がってくる

潜在記憶は主に感情と技術(スキル)あるいは「行動パターン」と呼ばれるような

身体が自動的に行っている「手続き」の周囲に組織化されている

実際は情動記憶と手続き記憶は混ざりあっている

 

手続き記憶は大きく三種類ある

1、学習された運動活動

2、生まれつき備わった緊急反応(生存本能を喚起する)

3、接近または回避、引き寄せまたは反発

 

意識されてない潜在記憶と、より意識されている顕在記憶の間を行き来する能力は

トラウマ体験を統合するとともに広くは自分の過去は何者だったのか、現在の自分は何者か

そして未来は何者になろうとしているのか知る為の重要なテーマである

 

 

「再交渉」は単純にトラウマを追体験することではない

むしろ、特定のトラウマ記憶痕跡を構成している様々な感覚・運動要素を手続き記憶にアクセスする事によって

少しづつ再検討をする事である

自律神経が調整不全を起こすと

「過覚醒/圧倒」又は「低覚醒/シャットダウン・無力感」というどちらかの状態に陥る

その調整不全を起こしている自律神経の手続き記憶にアクセスし

それらに付随した活性反応を蘇らせる完了させる事

これが「再交渉」である

再交渉された手続き記憶は再評価されたエピソード記憶及び陳述記憶にあらためて結合される

 

トラウマを抱えている人は慢性的な収縮状態に陥ってる

「収縮→拡大→収縮→拡大」のサイクルを繰り返す事によって内側の感覚のい「流れ」が感じられ

「リラックスした感覚」が広がっていく

 

人間には障害を克服し内側のバランスや平衡を回復する基本的で普遍的能力が生まれながら備わっている

これは圧倒されるような体験や喪失の後の惨状を耐え抜き癒す本能である

 

「擬陽性への偏向」を進化に過程で身につけてきた

危険に晒される可能性が高くても低くてもいずれにしても危険だと察知する傾向性が人間には生来備わっている

「真実の罠」は日常的に存在しており破壊的な影響力を持っている

自分や配偶者や知り合いと酷い口論をした事、あるいは誰か他の人が必死で言い争っているのを見た時の事を思い出して欲しい

第三者を観察していると如何にして争いがエスカレートいていくか、そして相手の言い分を聞けば聞くほど攻撃されたと感じて

ますます自分の言い分に固執していく様子が手に取るようにわかる

感情が激昂すると「自分が正しく相手の言うことは全て間違っている」と考えてしまう

自分が感じていることこそ真実であり、それゆえ他者が感じている事、あるいは信じている事は危険な間違いであると

それぞれが確信してしまう、白か黒かという「絶対的な真実」に偏りがちな傾向性の為であり

特に激しい感情に囚われている時は、それが義憤となる

 

記憶消去の将来(愚か者の愚行?)

無垢な心はなんと幸せなことか

世界は忘れられつつある

忘れられた世界によって

汚れなき心の永遠の陽光よ

忘却するものは幸いである

忘却はよりよき前進を生む

過去を思い出さない者は同じ事を繰り返す宿命にある