朝目覚めた。
外は静寂に包まれている。
「嵐の前の静けさか…。」
敬太はつぶやいた。
そう、前日沖縄には荒れ狂ったタイフーンが満を持して上陸していた。
きっと今の静けさは台風の目とやらに睨まれているのだろう。
いつ奴が狙いを定めて再び襲ってくるだろうか…
敬太は「明日、暴風域が抜けていなかったらスタジオ練習は中止」という指令をウップス隊員にだしていた。
敬太はドアを開け空を見上げた。
爽やかな空、軽快に走る雲、素敵な歌を奏でる鳥のさえずり。
「………ん?」
敬太は直ぐに異変に気付いた。
直ぐにテレビという名の情報だだ漏れ機を付けた。
「タイフーンが過ぎ去ってる……だと………。」
その瞬間嫌な胸騒ぎとともに焦りに似た何かを感じた。ふと時計を目をやる。
「ふん……遅刻じゃねーか!」
コンクリートジャングルを颯爽と走りぬけ、スタジオという名の戦場にたどり着き、不平タラタラの猛獣「メンバー」を必殺平謝りで倒し、俺はようやくベースという装備を身にまとい、一人前の男になるべく前進してゆく。
そうして、なんとか今日の任務をこなし、邁進相違で体もボロボロになりながらスタジオを後にする。
そんな敬太にも今日を生き抜く希望が一つ、たった一つだけあった。
『今夜はカレーだ…。』
KEITA