「ピアノマンさん、エンジン番号削ったら、高く売れますかね〜?。」

 顔に幼さの残る省吾が、突然聞いてきた。

 なんでも、盗んでくる原付バイクの売る方法を考えていたようだ。

 車台番号、エンジン番号を削ってある時点で、出どころを怪しまれるのに。

 そんなことは、省吾の頭にないようだった。

 そういうことは、俺に聞くなと聞かなかったことにした。

 いかにしたら、少しでもお金を稼げるかを、四六時中、17歳の省吾は考えていた。

 小柄で、中性的な顔立ちの省吾。

 ボクはあどけない省吾の顔を見て、ボクにも同じくらい貪欲さがあれば、会社を大きくできるのになと思った。

 これくらいの歳のアルバイトは、寝坊も多く、省吾の家にも何度か迎えに行ったことがある。

 高校には、かろうじて行っていた。

 この時期、こんな中途半端な若いアルバイトが多かった。

 ただ残っている子たちは、寝坊しても、無断欠勤しても、またボクのところに戻ってきて仕事を続けた。

 日払いで貰える。

 それが1番大きい理由。

 時間はかかったが、少しずつ顔つきが変わっていき、戦力になっていった。

 この仕事をしていて、嬉しいことの1つだった。

 ボクのところにきた時には、どんな大人になるのだろうと心配したのに。

 それから、数十年。

 省吾は、お父さんの経営する喫茶店の2号店を任され、コツコツと働いていた。

 ちゃんとおさまるところに、おさまるものだなと、感慨深い気持ちになった。