三回に分けて長野のドラフトについて述べてきましたが、ここではプロを拒否した三年間、その後のプロでの活躍を検証してみたいと思う。

  • 社会人での3年間は長野にとってプラスかマイナスか

当然だがプラスだったという人はほとんどいないだろう。私もそう思っている。

単純に年齢だけで比べるなら大学社会人で7年間過ごしてプロ入りした選手は沢山いる。

しかし大卒から二度の指名を蹴るのは異例だ。せっかくプロから指名を受けているのにアマで過ごすことは前回でも書いたようにリスクでしかない。ご存知のように長野は巨人に入団後、新人賞にも輝き数々の数字も残しているが、だからこそ大卒で指名された時にプロ入りしていればどんな選手になっていたかと想像も膨らむ。

※まだまだブログアップに必要なスキルが低く見ずらい表になってしまったことはご容赦ください。オレンジ色はタイトル。

 

長野の主な打撃成績だが、巨人時代は入団以来100安打以上を記録するなど非凡な打撃センスをみせつけ、二年目に首位打者のタイトルを獲得し三年目には坂本と共に最多安打のタイトルも獲得した。四年目もこの二年と遜色ない成績を収めるが、今日までを全体として見てみると長野のピークはこの三年間に集約される。しかし2014年の怪我の影響で2015年は著しく成績を落としたが2016年に一度盛り返したあたりは彼のポテンシャルの高さも窺えることは確かだ。ここまでは数字を見てなぞっただけの話。

それを鑑みた上で近年の成績についての見解を述べると、怪我の影響が全く関係なかったとは言わないが、やはり長野本人にとっては三年間をプロで過ごしたかアマで過ごしたかの違いが私は大きいように思えるのだ。単純に考えても高卒でドラフトにかからなかった選手が大卒で指名された訳なので、少なくともその四年間でスキルアップしたのは確実。その後のさらに一番伸びしろの大きい時期をプロに委ねなかったのは個人的には残念に思っている。当然アマでの三年間で長野が全く成長しなかったとは言わない。しかしアマのレベルで戦っている世界とプロの世界が違うのは明白で、出来ることなら日ハムで三年間過ごした長野と巨人での一年目を比べてみたいとさえ思う。

長野の打撃の特徴としてよく挙げられるのが、ホームベースから離れて立ち、かつボール球へのコンタクト率が多い事。これは彼の長所でもあり逆にウイークポイントでもあるのだが、私は投手の投げる三つのストライクのうち一つを確実に捉えることの出来る打者が三割打者になると考えていて、やはりボール球に数多く手を出す打者はコンスタントに打率は残せないと考えている。また投手の投げる四つのボール球をしっかり見極められる打者は四球が多くなり打数という分母が減り打率も上昇するとも考える。その部分でいうと長野という選手は非常に評価のしにくい選手であり、目を見張る成績であるかと言えばそうではなく逆に全然だめなのかと言えばそうでもない。彼は26歳シーズンでプロになったため監督コーチは指導がとても難しかったと思う。触らなくてもそこそこできるが触って改善している悠長なことも言ってられない。現に何度かベースから離れていることを矯正しようとした節も見られたが結局彼の打撃スタイルは入団以来大きな変化はなかった。要するに彼の長所を生かした形でここまで来た訳で欠点を矯正するには至らなかった。この点においてもアマでの三年間はどうだったのかと考えてしまうのである。

ここまでは長野にとって三年間はどうだったかの見解。

  • 巨人にとっての長野という選手は?

長野が巨人ですべての打順を経験していることはご存知だとは思うが、チームからもファンからも中心選手として扱われながらのこの事実に私は注目している。

巨人が長年頭を抱えて解決しないのが一番問題とセカンド問題である。皆さんの記憶にも残っていると思うが坂本も多く一番を経験し長野の一番もどちらかというとしっくりくる打順だ。先述の通り二人は最多安打を獲得しているが、実はこのタイトル、当然のことだが四番打者までの選手に多く、打順が上がるごとに獲得者は多い。要するにそこそこ以上の打率でスタメンを外れることなく上位打線で留まっていれば確実にチャンスのあるタイトルなのだ。打てなくともスタメンを張るような選手は自ずと打順は下がり打席機会は減り安打数も減る。なのでこの二人はどちらかが一番を打つことが多かったので、長野の各年の安打数と打順はリンクしているはずだ。ならば何故巨人はずっと一番打者に悩んできたのだろう。それは坂本は三番に定着できたが長野が一番に定着できなかったことが原因の一つだと考える。勿論二人以外の選手でその候補がいなかったことに大きな原因があったのは事実だがそのことで坂本か長野を一番で起用せざるを得なかったのも然りだ。長野が一番に腰を据えているときは総じてチーム状態も良かったように思うのだがいかんせん安定した成績が残せない。坂本は不調でも下位を打つことはないが、長野は三番がだめなら一番を打ち、それがだめなら下位に落ちる。そして調子を上げるとまた上位を打ち、そしてその度に坂本の打順が変わってきたように思う。結果長野は様々な打順を打つ、いや打たされる選手になったのではないだろうか。

長野不調時のオーダーを書くとき、スタメンは決まっているが何番を打たすか困ってしまう選手だったのかもしれない。

次に守備に関してだが私は上手い下手できっちり分けるのなら下手な部類に入ると思っている。しかしルーキーイヤーにエラーを5つして守備での不安を露呈したかにみえるがそれについては私は違った角度で見ている。ルーキーイヤーの長野は積極的な守備をしていたと思っていてその結果のエラー5だと思っている。次の年から三年連続でベスト9とGG賞を獲得するのだが、決して守備が上手くなったとは思っていない。この年齢で外野の守備となると自分の守備範囲や獲れる獲れないという打球判断はほぼ確立していると考えて間違いない。足が速くなる訳でもなく捕球技術が格段に上達する訳でもない。今持っている技術にプロの知恵が加味するぐらいだろう。私が感じたのは二年目からの長野は守備で冒険をしなくなったことだ。野球を深くご存知の方はわかると思うが、松本哲也が前進してヒット性のライナーをダイビングで捕るシーン、勿論捕球すればファインプレーだがたとえヒットになっても誰も文句は言わないだろう。そう長野はそれが多くなった。私がそのことを確信したのは長野はそんな打球が来たとき必ず「今の行けた?」みたいな確認を必ず隣の外野手にしていたからだ。長野クラスの選手が捕れるか捕れないかの判断ができないはずがない。そういう打球に積極的でなくなったのだ。だから長野のダイビングキャッチやスライディングキャッチが稀にしか見れないのもこのことからわかるし、そもそもその類は上手でもない。普通のフライやゴロを普通にエラーするようでは使えないので、冒険しない以上外野手のエラーは確実に減る。結果ベスト9とGG賞獲得の三年間は打撃成績のピークと重なった部分も大きいだろう。また送球についてだが肩の強さというポテンシャルは認める。だがランナー二塁でライト前ヒット、敵の三塁ランナーコーチは無条件で手を回していた。由伸のように肩の強さが敵にとって抑止力になっていなかったのだ。分析するとゴロに対してのチャージ、そして送球の正確さ、これが同じ肩の強い由伸と比較して劣るところなのだ。これだけ見てもやはり守備は決して上手いとは言えないと私は思っている。

そして私の最近の選手評価としてオールスターでのファン投票の推移を参考にしている。昔は組織票や人気だけで選出されていたこともあったが、最近はファンの目も肥えてきて単にそれだけでは選出されなくなった。その点でも不思議に思っているのが長野のファン投票での選出1回という数字だ。未だに巨人に戻ってきてくれと根強いファンがいるのにどうしてだろうと考えてしまう。要するに他球団の外野手に比べてどうなんだという評価なんだろう。巨人ファンも他球団のファンもシビアに見ているのだ。事実近年の長野はファン投票の外野手部門でトップテンにさえ漏れていた。これは巨人にとってとても由々しき問題であって、ファン投票で10位にも入らない選手が巨人のレギュラーを務めていたということを突き付けられていたのである。これを奇しくも長野自ら証明してしまったのが広島への人的補償だ。巨人で長年レギュラーを張っていた選手が広島ではベンチを温めることになるのである。私は移籍が決まった時レフトが守れなければ厳しいとFACEBOOKに投稿した。巨人でもはとんど守ったことがないからだ。皆さんも亀井の守備力について球界でもトップクラスなのは認めているだろう。しかし巨人では長野と亀井が同時に出ているとき亀井は必ずレフトなのである。ライトの重要性を考えたときどちらがライトに適任か火を見るよりも明らかなのにだ。これは紛れもなく私はレフトは出来ませんと言っているのと同じで、あの松井でさえ選手時代外野全ポジ守っていることを考えたら少し頭をかしげたくなることなのだ。そして長野がレギュラーを取れなかった広島にまだ巨人は負け越していることも忘れてはならない。

以上を踏まえても、巨人にとって長野入団は短いスパンで考えるとプラスだったが、丸のFAがなければ現状巨人でどんな形で働けたのかは疑問である。丸のFAによって長野が人的補償で出て行ったことを悲しむファンが大勢いたが、私は巨人にとっては渡りに船の移籍だったと思っている。確実に言えることは丸が来て長野が出たことで巨人のチーム力は上がったということだ。もし長野が残っていたら昨年の選手の使い方は変わっていただろうし、石川が日の目を見ることはなかったかもしれない。一軍の登録人数は決まっているのだ。

長野もいてくれ亀井を使え石川も頑張れ山下もレギュラー獲れ、は決して実現しない。

悲しいかなこうして新陳代謝を繰り返しチームは強くなっていく。私は長野が嫌いで言っている訳では無い。巨人が強くなるため強い巨人でいるために、こういう結果になったのにはこんな理由があったのかもしれませんよという検証をしたまでだ。私は坂本のファンだがいずれ坂本もチームにとって過渡期な存在になってくる。その時は忌憚なく意見を述べようと思う。

 

最後に2016年7月19日のスポーツ報知の切り抜きを載せる。二人の成績がきれいに並んで比較しやすかったので当時FACEBOOKに投稿した時のものである。

ヒット数はほぼ同じ。しかし四球の差。

この数字を打数から引いて打率を計算しなおすと面白い。

本当に丸が来てくれてよかったと思える。

 

最後までありがとうございました。