今年のジャイアンツを見ていて大きく変わったと感じる場面がある。
それは中継中に時々映し出されるベンチでの光景、そう坂本と丸である。
二人は打順の並びから考えても、試合中ベンチで一緒になることが必然的に多くなる。それも功を奏してか、事あるごとに二人は熱心に話をしている。当然、時には冗談も言っているだろうが、ほぼ野球の話に終始しているはず。元来坂本は常に高みを目指し、先輩後輩、敵味方を問わず、野球について貪欲に質問する事で知られる。2年前だったか、テレビの企画の中で、ジャイアンツの若手が自分に何も聞いてこない事について苦言を呈していた程だ。
そこへ今年、丸が加入してきた。坂本の1つ後輩になるが、右左の違いはあれど打撃についてのコミュニケーションを常にとっている事が窺える。そして二人は別にコソコソ話している訳ではない。当然、回りにいる若手には聴こえているだろうし耳も大きくなるだろう。必然的に会話は他の選手へと波及していく。そう、今年のベンチでは選手間でよく話をしているのだ。去年までにはあまり見なかった光景である。傍観している選手などいなくなった。それはそうだろう。もし坂本と丸が何を話しているか興味がないという選手がいたら、それはもうユニフォームを脱いだ方がいい。
スポーツにおける"反省"は、リアルタイムと振り返りの二点が必要になる。振り返りの反省は誰にでも出来るが、リアルタイムでの反省は指摘してくれる人がいないと出来ないことが多い。試合中、的確に指摘してくれる存在はチームにとって大きい。その点で言うと坂本は去年までキャプテンとして孤立していたのかも知れない。それが丸という存在を得て話しやすい環境に変わったのではないかと推測する。これはチームにとってプレー以上の相乗効果を発揮していると言って過言ではないだろう。
8月17日対阪神戦の試合中も、先発のルーキー高橋に対して、右に宮本コーチ、左に小林を差し置いて丸が何かを話していた。たぶん三盗を二つ許した事について気になった事を野手目線で話していたのだろう。こんな光景は見たことがない。しかもFAで移籍してきて1年目の選手がだ。リアルタイムで指摘された事で、高橋は振り返りで映像を見たとき、納得の反省が出来るだろう。そういう蓄積はプロとしてのスキルアップに必ず直結する。岡本にしても若林にしても大城にしても、この二人から発信される言葉の一つ一つが確実に糧となっていることは確かだ。

ジャイアンツは現在首位をキープしているが、苦しみながらもその位置を保てるのは、ベンチでの一体感がもたらしているのではないだろうか。坂本、丸の精神的支柱の存在が、適材適所、自分の役割を肌で感じ失敗しても下を向くことなく前を向いていられるのだ。そしてその後ろにはレジェンドたる慎之助の存在もあるのだ。
残り30数試合、優勝に向けてのカウントダウンが始まるのが待ち遠しいが、ここからがまた苦しくなる事をこの三人は知っている。
油断は出来ないがどんなゴールを見せてくれるのか楽しみに待ちたいと思う。