二〇二〇年、人工知能と恋愛ができる人気アプリに携わる有能な研究者の工藤は、優秀さゆえに予想できてしまう自らの限界に虚しさを覚えていた。そんな折、死者を人工知能化するプロジェクトに参加する。試作品のモデルに選ばれたのは、カルト的な人気を持つ美貌のゲームクリエイター、水科晴。彼女は六年前、自作した“ゾンビを撃ち殺す”オンラインゲームとドローンを連携させて渋谷を混乱に陥れ、最後には自らを標的にして自殺を遂げていた……。









虹を待つ彼女


逸木裕


 


第36回 横溝正史ミステリ大賞受賞作


ということなんですが、横溝正志って誰だ??って思った方へ。


金田一耕助の「犬神家の一族」などを書いた人です。(私も知らなかった…ははは。)


 


結構面白かったです。前半部分は淡々と読み進めていたのですが、後半はどうなる??という気持ちが強くなり一気に読破してしまいました。


 


ドローン、人工知能、SNS、プログラミングしてソースコードかいて、コンピューターなしではこの物語が成立していかない、まさに現代小説。現代人向けのボキャブラリー満載ですね。アプリケーション、動画サイト、スペック、クラウドソーシング、デバック…etc.こういった用語で小説が楽しめる時代になったのだなと実感しました。


 


「虹を待つ彼女」はミステリなのか??


YES


探偵事務所、捜索、拉致、«雨»の正体は誰か(軽く叙述ものといってもいいのかな)謎解きも感じさせつつ、このあたりで判断したいところですがやはりどうしてもサスペンスチックな気がしますね。


 


NO


ヒューマンストーリーまたは恋愛もの。人工知能として蘇らせようとしている晴も生存していた人物である。数年前に自殺した晴にプロジェクトとして活動しているうちにだんだんと感情移入してしまう工藤。愛が故のラスト。


 


ラストを重要視したい私にとってはラブストーリーと言い切ってもいいのではないかくらいです。そして愛を知った工藤の成長に感動。君も人のために涙を流せるようになったんだね、と思いました。


 


最後に。新しい形のミステリだとしても、これだけIT 用語満載だと、数十年後に読み返したらこんな時代もあったよね~、懐かしいな~、古い!と感想が真っ先に来ないか不安です。こういった世界は日進月歩で明日には予期せぬ技術が生まれていることもありますよね。今だから楽しめる世界観の作品なのではと思いました。