2014年6月の読書メーター読んだ本の数:16冊
読んだページ数:5319ページ
ナイス数:662ナイス
津軽の
感想最近太宰治が好きで仕方がない。彼の軽妙洒脱な文章を数行目にするだけで楽しくなってしまうのです。今回もケタケタ笑って、故郷への愛にジーンときて、最後は何故だか励まされて、幸せこの上なしという感じで本を閉じました。本作は故郷である青森の思い出を巡る云わば旅行記で、小説?という疑問はありますが、中身はダメ人間主人公(=作者)の自虐的な語りで世間を斜めから見たり、失敗して恥をかいたり、小さなことに感動したりと安心の太宰印の展開なので違和感なし。ところでこの作風って桜玉吉と良く似てません? 道理で好みに合う訳です。
読了日:6月30日 著者:
太宰治
りら荘事件 (講談社文庫)の
感想58年刊とのこと。言葉の端や若干の女性蔑視的な考え方に時代を感じさせますが、連続殺人の緊張感、論理的な解は今読んでも充分に新鮮で楽しい。本格としては満足のいく一冊でした。しかし同時に、推理物について回る探偵の役割について考えさせられるものが。優秀な探偵ほど瞬時に解を導くとすれば、物語の途中では確かに不要。実際本作の探偵登場も八割が経過してからでした。ですがぽっと出のキャラクターに愛着が湧かないのもまた事実。ラストだけ出てきて正答を述べて帰る姿には、只々ぽかんとするばかりでした。やはり探偵はヘボでいいかな?
読了日:6月28日 著者:
鮎川哲也
とある飛空士への恋歌3 (ガガガ文庫)の
感想前巻を読んだ段階で「空戦を期待できない」と感じたのは、ここ迄2冊も費やしていながら主人公に他者を出し抜く努力の描写も無ければ、才能の示唆も死地に強いという伏線も無かった為です。なのにシビアな戦争で勝ち抜けるようなら、それはご都合主義の賜物でしかないと。そして実際にそれが起きた様です。空戦の描写は流石の一言でしたが、それだけに主人公が参戦した結末が「覚醒したから」的安易さで片付けられてしまったのが非常に残念でした。只同時に、これが山岡荘八ばりに連綿と続く大河小説だというなら期待できる気も。ここから本気出す?
読了日:6月26日 著者:
犬村小六
ラヴクラフト全集 (1) (創元推理文庫 (523‐1))の
感想どうも最近ブーム再燃との噂を耳にして購入。思えば自分も約四半世紀前にTRPGをやったり、ネクロノミコンなる本を持っていましたが、肝心の氏の作品は未着手でした。自分の勝手な想像では宗教的な絡みの強いホラーだと思っていましたが、案外SF寄りの設定で発狂じみていない内容である事が逆に驚き。ただ本作は深淵な設定を楽しむ物と捉えてますので、一冊で理解できる物ではないのかと。手紙のやり取りで進む「闇に~」が良作。文通相手が得体の知れない物に立ち向かい、徐々に変化していく様を描くという手法が面白い。怖くはありませんが。
読了日:6月22日 著者:
H・P・ラヴクラフト
陽炎の男 (新潮文庫―剣客商売)の
感想相変わらずの勧善懲悪で分かり易い物語に加えて、小兵衛が90歳まで死なないと早々に最強宣言をしてしまったシリーズの三巻目。かといって水戸黄門ばりのマンネリズムが控えている訳でもなく、一見すると先の展望に対して期待を持ち辛そうな本作なのですが、過去2作よりテンションが上がってきているのはどゆこと?? 小兵衛の気持ちの良いキャラを軸に個性的な登場人物が増え、広がる世界観が心地良いという事もありますが、大治郎の成長、三冬の恋心と読者を惹き付けるポイントもしっかり押さえてて抜け目なし。短編なのに続きが気になります。
読了日:6月20日 著者:
池波正太郎
十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)の
感想ミステリを読んでいると聞くともなしに聞こえてくる伝説の一冊。ということで少し佇まいを正して取り組みましたが、結論から言えば非常に僕の好みに合っていて面白かった。つまりリーダビリティに気を遣った大変「読ませてくれる」作品でした。ただ引っかかるのが、本格的なミステリ読みが読んでも同様に満足いく内容だったろうかという点。殺人の動機、背景にある青屋敷事件との絡み、探偵の役割などが、パチッとピースが嵌っていく感じをさせなかったのがその理由です。云わばミステリ入門編といった印象。楽しめるミステリをお探しの方には是非。
読了日:6月16日 著者:
綾辻行人
GOSICK IV-ゴシック・愚者を代弁せよ- (角川文庫)の
感想初巻からミステリともファンタジーとも微妙な年代設定だなと感じながら読んでいましたが、本書でやっとその理由が明かされスッキリ。史実の時代背景を多く利用した舞台設定となっていますが、その史実部分を思ったよりも丁寧に物語に絡めていると感じられる部分が有り好感でした。また肝心なミステリ部分も、途中まで焦点がぼやけて分かり辛い、トリックが同じものを使ったケイゾクの方がリアルという難点はあったものの、無理に技巧に走らず時代背景をうまく利用した落とし方はすんなりと受け入れる事が出来こちらも好感。予想を上回る一作でした。
読了日:6月14日 著者:
桜庭一樹
萩を揺らす雨―紅雲町珈琲屋こよみ (文春文庫)の
感想事前に小耳に挟んでいた情報によればオール讀物推理小説新人賞作とか。確かに一話目はその様な雰囲気もありましたが、全体的には概ね装丁から受ける印象を損なわない、珈琲屋と主人公のお草さんに纏わる人達との人情物語といった趣でした。76歳と高齢でありながら若々しい感性と好奇心を持つお草さんは現代社会に在っても堂々とした振る舞いで、年輪を感じさせる余裕でもって若者達をいなしていく姿が見所でしょうか。短編が故か話を急いでご都合主義的な展開が多い様にも見えなくもないですが、否、これが年の功という奴です。御見逸れしました。
読了日:6月9日 著者:
吉永南央
オーデュボンの祈り (新潮文庫)の
感想良く言えば天才的、悪く言えば理解不能。氏のデビュー作との事ですが、確かに若々しさというか尖った印象を受けました。虚と実を織り交ぜた不条理な世界観は何故の連続で頁を捲る推進力にはなっていましたが、それも納得できる解答や伝えたい命題が明確であってこそ。後期クイーン問題やカオス理論の独自解釈については解りやすく述べられていたものの、只それだけを伝えたいにしては舞台装置が異質で、もっと別の命題があると想像させられるのが自然でしょう。そこが読取れない所に読後をモヤっとさせている一因があるのかと。読解力のある方向け。
読了日:6月9日 著者:
伊坂幸太郎
とある飛空士への恋歌 2 (ガガガ文庫)の
感想「あの名作の作者」を合言葉に気合を入れ直し挑んだ今巻。しかし前巻以上に期待も緊張も無い展開には閉口するばかりでした。空戦も冒険も期待できる要素がなく、学園ものにしては同級生に魅力が無い。ならば恋愛ものかと言えば、描写の伴わない空台詞の連なりを漠然と眺めさせられるだけで血肉のある行動や心理が見えず完全に他人事。描写力には不自由していない作家さんなだけに、何故台詞周りになるとこうも力を抜く必要があるのか不思議でなりません。恋と復讐を同居させたヒロインとのドラマが残された拠り所か。是非大切に扱って頂きたいです。
読了日:6月8日 著者:
犬村小六
夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)の
感想たった二か月前に読んだばかりの本を読み返すとは…これが中毒と言うやつですか? しかし改めて読み返しても素晴らしい本。主人公は二人とも自分の目的の為にどんどんと行動します。その度に情景が移り変わり独特な世界が広がっていくと共に、様々な人と出会い、様々な出来事に触れ、時に失敗も連なり、それが知性とユーモアに溢れた文体で紡がれるともう読者は現実に戻る暇を与えて貰えません。只々笑い、没頭し、気付けば甘酸っぱい結末にお腹の底を暖められ、本書に惜別の思いを募らせる事になるのです。この中毒性は本当にヤバい。また読もう。
読了日:6月7日 著者:
森見登美彦
ルパンの消息 (光文社文庫)の
感想あ~面白かった! などと陳腐な話を端から放つ感想文も如何なものなのでしょうが、何せ本作が読者をそうさせるのだから仕方がありません。長編ミステリである本作は所轄警察署が舞台で、お得意の人間臭い警察官たちが時効寸前の難事件に挑みます。正直小難しい物理的トリックはありませんが、その分十重二十重に覆われた動機のベールは重厚で、それを一枚ずつ剥がしていく様は読者を引き込み、尚且つ最後の逆転も抜け目なく仕掛けてあって読み応え十分。なので驚いた!より面白かった!な訳です。自分的には第三の時効を超えたかも。それ程の一作。
読了日:6月6日 著者:
横山秀夫
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。2 (ガガガ文庫)の
感想結末が何処に向かっているのか、物語から何を受け取れば良いのかが不明瞭で、純文学的な難しさを孕んでいるなぁと言うのが印象です。所謂リア充の社会に強い憧れがあり、孤独を跳ね除けてそこに飛び込もうというのであれば着地点も想像できるのですが、今の所は唾棄すべきぬるま湯の世界に何となくほだされていくという印象しか受けず、暗黒面に堕ちつつあるアナキンを見ている心境でもどかしいのが正直な所です。あとやはり描写がイラスト無しに不親切。結依とか前巻から理由も無しに髪型変えたりしてるけどそういうの止めて~。物凄く戸惑います。
読了日:6月3日 著者:
渡航
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (ガガガ文庫)の
感想2巻を買ったので復習。改めて読むと善悪が明確な対立構図に驚き。ラノベ読者層はこういった偏った価値観は却って受け入れられないと思ったのですが。自分も含め半沢直樹辺りが好きなら結構楽しめるのかも。ただ主人公が恵まれていて「ぼっち」という言葉が宙に浮いていたのが物語を薄くしていた様な。重松清の疾走辺りのぼっち感があればもっと感情移入が出来た気がします。あとイラスト頼みの描写には苦言を。自分はしばしば絵無し版を買うので描写が薄いと情景が見えず途方に暮れてしまいます。そゆことで準備完了。次は人気作の本領が見れるか?
読了日:6月2日 著者:
渡航
深追い (新潮文庫)の
感想所轄の警察署を舞台に日常の事件と関わる警察官の生き様を描く短編集。第三の時効とは対照的で、交通課、警務課、会計課などあくまで「普通の」警察官に焦点を当てた横山作品ならではの一作。当然派手な殺人事件等は起きませんが、人間の心の機微が基となる謎は複雑に入り組んでいて重厚。それを写真加工、花の知識、泥棒の侵入手口などちょっとした専門知識のギミックを切り口に解き明かしていく様からは、技巧のみに囚われたミステリでは中々体験できない深みを味わうことが出来ます。物語を構成するのは人間。それを再認識できる良い作品でした。
読了日:6月2日 著者:
横山秀夫
スローターハウス5 (ハヤカワ文庫SF ウ 4-3) (ハヤカワ文庫 SF 302)の
感想ドレスデン爆撃を経験した著者の半自伝的小説との事ですが、その意図に気付くまでは苦しめられました。痙攣的時間旅行者なる男の物語で、過去未来を往来しつつ戦争捕虜や宇宙人の誘拐という体験を語るのですが、読み始めは混乱するばかり。しかし次第に、辛い体験も「そういうものだ」と多くを語らない様子や、宇宙人視点より人類を鳥瞰する様子から却って著者の受けた衝撃が伝わって来る様で、徐々に引き込まれる事に。SF要素もありふれた戦争体験記で済まさぬという作者の執念を表現する要素という所か。勿論初めて味わう読書経験。世界は広い。
読了日:6月1日 著者:
カート・ヴォネガット・ジュニア読書メーター