なぜ、双葉山さんは現役中にこの本を出版したのか?
出版は昭和14年(1939年)5月15日です。
そうです、その年の春場所(1月)に連勝が止まっています。
そして、夏場所は15勝、全勝優勝です。
その中での出版、なぜか?
それは、「あとがき」に真意があります!
もう版権が消失していると思われますので、あとがきをお見せします。
文章化すると‥‥
「私は年齢の点から云いましても、又、自分の今日まで歩んできました道を考えましても、自叙傳なんかを作るべきものではないことは満々承知致して居るのであります。
それにも拘わらず、ここに敢て私の今日までの、謂は自身の上話を申し上げることにしましたのは、今日まで発表されました私に関する幾多の読み物が、余りに出鱈目過ぎますから、私としては、祖先に対しましても何だか済まないような気も致しますし、又後援会の方々に対しましても、何となく相済みませんような気がしますので、ここにお恥ずかしいことですが『双葉山自叙傳』と銘打ちましたものを世間に送ることに致しました。」
とあります。
当時の偉大な横綱でも、色々な事を言われていたのだと想像が付きます。
おそらく、世間での“出鱈目な評価やうわさ”がストレスだったのでしょう。
ちょっと時代はずれてしまいますが、昭和12年5月場所千秋楽の日に吉川英治さんが双葉山さんに次の言葉を贈っています。
「江戸中で一人さみしき勝角力」
あの、横綱の今の気持ちも同じなんだろうな~
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