白鵬関のこころ | 内藤堅志オフィシャルブログ「労働科学研究者 内藤けんしの"ちょっといい話かも!"」Powered by Ameba

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労働科学研究所 協力研究員。
第1種衛生管理者。
労働衛生・安全、技能伝承、ストレスを研究しています。成功、活躍した人を分析して「運」も研究しています!

横綱白鵬関が6月5日のブログで「V一夜明け会見」を行わなかった理由を吐露しました。
10年以上白鵬関の記録を取り続けてきた私、また男性として同じ経験がある私‥‥、読んでいて泣けてきました。


白鵬関は家族をとても大切にする人です。とてもつらい中での優勝だったと思います。


ブログには、「13日につらい結果を知った」とあります‥‥。
スポーツ報知さんの5月27日(火曜日)の記事では「白鵬自身が心境を語っておらず、理由の詳細は不明だが、今場所、特に終盤は普段と少し様子が違った。13日目(23日)までは取組後の支度部屋での問いかけに応じていた。だが14日目(24日)の取組後は、一切の問いかけにも無言を貫いた。」とあります。

時期が一致します。


また、様々なところで取り上げられていた「いつも歌う君が代を歌わなかった」その理由‥‥、
勝手な推測ですが横綱の性格上、「奥さんが苦しんでいる時に自分だけ歌ったら、申し訳ない。優勝を祝ってもらうのは良いが、自分から祝うのは、今は自粛する」だから歌わなかったのではと思います。


すばらしい“心”、“つよさ・信念”だと思います。
また、周りに今の辛さを気づかれずに、最後までやり抜く心、態度も素晴らしいと思います。



「泰然自若」という言葉がありますが、これとは次元が違う気がします。相当なエネルギー、周りへの気遣いが必要だったと思います。その結果、無愛想になったり、表情も曇ったりします。



ちょっと学問の話になりますが、
・ 辛い、嬉しい、怒りなどの自分の感情を周りに悟られないようにする
・ 相手の(お客さんの)感情に自分の感情をあわせる
このような状況のなかで行う仕事を「感情労働」と言います。(注1)

感情労働の代表として、キャビンアテンダント、営業職、冠婚葬祭業、芸能人、アナウンサー等があります。もちろん、プロスポーツ選手も含まれます。

たとえば、女性の労働者が生理痛のなか笑顔で接客する、とてもつらいことです。男性でも、疲れていても笑顔で頑張る、辛いことです。

周りに不幸があった時、ニコニコして仕事したり、集中して仕事したりするのは疲れるはずです。きっと仕事を休みたいと思うはずです。

何事もないように相撲に集中することもとても大変なことです。

このように、「感情労働者」は旧来の仕事と違い非常に疲れます。
下の図にまとめてみました。
感情労働1



感情労働2




五月場所、もしかしたら横綱は休みたかったと思います。奥さんの近くにいて上げたかったと思います。

しかし、白鵬関は常々「最後まで取り続けることが横綱の仕事」と言っています。
だから最後まで、やり抜いたと思います。
(しかし疲労は大きかったと思います。また、一つ間違えれば大きなケガに繋がる可能性もあります)




私は、あえて次のように表現させてもらいます‥‥「奥さんのために中止にした会見」。
横綱はブログでご迷惑をかけましたと言っています。
しかし、大切な人に対するストレスを考えた場合、素晴らしい決断だったと思います。



何度も挫折をして、今の地位に上り詰めた白鵬関だからこそわかる人の心、素晴らしいと思いませんか?
私は、国技大相撲の横綱として誇りに思います。


注1 
The Managed Heart: COMMERCIALIZATION OF HUMANFEELING by Arline Hochschild.1983. 「管理される心 感情が商品になる時」 A.R.ホックシールド著 石川准・室伏亜希 訳. 世界思想社.2000.4