だって恋しましたから

うふっうふふふ、あはははっあはは

廊下に響く笑い声
嗚呼、煩い

「何事ですか?煩いですよ」
煩くて作業に支障がでる。
車椅子(と、いう名の厠)を操り部屋を出れば廊下中に広がる人間の臭い

嗚呼、臭い。
「ゴメンナサイ、以後気をつけます!」
と謝罪したのは赤毛の少女で顔こそは見えなかったものの、人間臭く、先程の笑い声の主だ。その赤毛の少女は私に背を向け走っていった。手には何かを持っていたようだが、わからなかった。

嗚呼、人間臭い。

早く作業に戻ろうとした時、誰かが走って来る音がした。あの人間が走ってきた方からバタバタと聞こえてきた。


走ってきたのは首のない少年。黒い烏のような翼にらその身体に私は覚えがあった。たしかアザゼルの後継者の…

「門田…でしたね、どうしましたか?そんなにお急ぎになられて」
彼は首がないからかわりに肩に下げてたスケッチブックを取り出し、字を書いて私にそれを見せた。
お世辞にもその字は綺麗とはいえなかったが、男らしからぬ丸みのある文字で[三つ編みの女の子を見かけませんでしたか?]とかかれてあった。

「嗚呼、あの女の子ならあちらに行きましたわ。

…何かあったの?」

ホントは聞くつもりなんて無かった。ただの興味心に押され問う。

門田はスケッチブックに新たに字を書き足した。[あの娘に首持ってかれました。]

たしか門田は数日前に人間界から帰ってきたと聞いた。しかし、首がないとは聞いてない。しかもその首を人間ごときに持ってかれるなんて……
「貴方程の悪魔が何故…、油断でもしましたか?」
そう問えば身体を横にして否定し、スケッチブックを突き出した。[わざとです。あの娘に罪を着せる為です]

…納得した。
[だって、恋しましたから。]

…聞きたくない台詞。
「…それを私に言うのですか?」
わざとらしく咳ばらいし、先程の少女が去った道を指差す。

追いかけなきゃいけないのでしょう?

[ありがとうございます、ベルフェゴール様!]そう言って門田は少女を老いかけるという仕事を再開する。

ホントは彼の仕事を奪ってやりたかったけど、生憎私が仕事を奪う相手は生きた人間のみだ。ここにいる者を【怠惰】にしてはいけない。そういわれたのだ。


廊下に足音、今日も受刑者は恋をする



嗚呼、人間臭い…



これだから人間は嫌いなのだ


車輪の音が扉を思いっきり閉めた。