宵闇の森、その奥地にある井戸に一人の人間と一体の人形が腰をかけていた。

「ヴェー…寂レタ村…マルデ墓場ダネ…。ウフフ。

使用人(メイド)の服を着た可愛い女の子が口を開く。その声はどこか固い。
「イタリア…童話は、何刻だって墓場から始まるものだ…」
闇を纏った大男が口を開く。疲れているのだろうか、目には隈があった。
<ナンデ コノ村ニハ 今 誰モイナイノ?)
                (──其れは 昔、皆死んだからだ>
<ジャア...ナンデ 昔 村人皆死ンジャッタノ?)
黒い大男の足元を、ネズミが通り越していく。

(──其れは 黒き死の病のせいだ>
黒き死の病、それは、かつてこの地で流行った感染病。魔女刈りの結末がこのような結果だと、誰が思っただろうか。
<ジャア...何故 ソノ森ノ 村ニ 兄弟ハイタノ?)かつて、あの村には、魔法使いの兄弟がいた。黒き死の病が土中漂う誰もいない寂れた村に。

(──其れは 或の【イド】が 呼んだからだ>
<ジャア...何故 【イド】ハ 何ノ為ニ 人ヲ呼ブノ?)

(──其れこそが 奴の本能だからだ>
衝動は人を呼ぶ、それが奴の本能。理由だなんて存在しなかった。

ザクッ、ザクッ

 墓穴を掘っても 掘っても 掘っても
必死に掘っても 土には黒き病が詰まった「悲惨な時代」が掘り起こされる

人が死ねばそれを埋める。また死ねばそれを埋め、死んでは埋め、また死んでは埋めてと、
黒き病の多層菓子「無惨な事態」は層を重ねる。

黒き病の本能は、 ≪生キル事≫と≪増エル事≫
殺セと 侵セと 衝動に走る病は止まることを知らずに加速する。
衝動のままに身体を蝕め、自分を土へと沈め、やがて地層菓子へと姿を変える。

「増エ過ギテモ…結局宿主ヲ殺シテシマウノニネ…」

黒き病は同じ事を幾度となく重ね、土へ還る。

「人と大地の関係と同じだ…さぁ、物語を続けようか…」

人が死に、土へ還るのと同じように


続く