原点を再確認し 新たな一歩を踏む
原点を再確認し 新たな一歩を踏む
本年9月3日、社団法人倫理研究所は創立65周年を迎えました。
創立者・丸山敏雄の昭和20年同日の日記には、「9月3日(月)曇夫婦道起稿。この平和と世界文化建設の大任に入る」と記されています。前日の9月2日には「9時、ミズリー艦上、降伏文書調印。重光外相、梅津参謀総長。5時の放送をきゝ、只悲しみ、たゞうれへ、何事も手につかず」と耐えがたい心情が綴られ、深い悲しみが高い使命感へと転じての強い決意だったと理解できます。8月15日の終戦から、わずか20日後のことでした。
連合国軍が神奈川県の厚木飛行場に進駐し、連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサーが「コーンパイプ」をくわえて到着、GHQによる占領統治が始まりました。日本は混乱に陥ると同時に、歴史上かつてない岐路に立たされたのです。
倫理研究所の前身である「新世会」の設立趣意書には、以下のように記されます。
「我国は今、大切な時に当たっております。というのは、道義は乱れ、宗教心は薄らぎ、目を覆わしめることも少なくありません。今にしてこれを改めなければ、悔いを後に残すでしょう。日本の再建は、単なる理論や、掛声だけで出来るものではありません」「このまま捨てておいたら、日本が地上に存在する意義も無くなるでしょう。自ら助けるものでなければ、天は助けません。本会は、こうした止むに止まれぬ念願から発足いたしました」
丸山敏雄にとって、同会は日本の未来を憂えての創設だったことが窺えます。
今、戦後65年が経ち、先人の血の滲むような努力により、多くの課題を抱えながらも日本は廃墟の中から復興を遂げ、高度経済成長を経て、先進国の地位を確固たるものとしました。しかしながら、現代社会は趣意書が書かれた当時とは異質の「心の危機」といっても過言ではないでしょう。
モラルハザード、いわゆる道徳の荒廃が叫ばれて久しいですが、よくなるどころかますます悪化し、目を覆うような惨状が繰り返されています。
社会的には、100歳以上の高齢者の所在不明が次第に明らかになってきました。報道によれば、一部では数10年にわたり家族でさえ無関心だったといいます。中には行方不明の親の年金を、素知らぬ顔で長年受け取っていたとも報じられています。
それぞれに事情があるでしょうが、これは特別な出来事ではなく、「現代日本の病理」と捉えるべきでしょう。人間の念願でもあり幸福の象徴ともいえる「長寿」が、逆に不幸への道ともいえる日本になってしまったのでしょうか。損得、効率、合理性を追求するあまり、人にとって大切な「恩」や「感謝」が置き去りになっています。
行き詰まった時には「原点」に返れといわれます。国に「建国」があり、企業に「創業」があり、そして全ての人には「誕生」という原点があります。
今年度は倫理研究所創立65周年であるとともに、丸山敏雄生誕120年という記念すべき節目の年です。私たち皆がそれぞれの「原点」を確認し、新たな時代を築いていこうではありませんか。
<社団法人倫理研究所 法人局「今週の倫理」より転載>