昨日の続き。


何故彼女は涙ぐんでしまったか。



勿論、その場では上手く振舞うだろう。

でも、一人になって考えてみると、何だかとても悲しくなってくる。


何故か。


優し過ぎるからだ。


彼女は言う。


自分に恋情を抱いている相手がいて。

自分はそれを受け入れるつもりはなくて。

それでも相手が自分にその気持ちを打ち明けてきたならば。

それ以降私はその人と関わることはできない。

関わりたくない。

気を持たせるようなことはしたくないし、

私はきっとずっとその人に恋情を抱くことはないだろうから。

打ち明けられない限りは普通に接触できる。

たとえ私が相手の気持ちに気付いてしまったとしても。

けれど、打ち明けられてしまったら、もう、無理。

相手は、私がその気持ちを知っている、ということを知っているから。

辛い。怖い。



だから彼女は「10年来の友人」とも距離を置くことになる。

彼女が望んでそうしているわけじゃない。

狡い表現をするようだが、彼女はそういうふうに「できている」から。

彼女は彼を嫌いなわけではない。

距離を置けば彼が悲しむだろうことも分かっている。

だから彼女は思い悩む。

悩んでも悩んでも彼女が楽になる答えは見つからない。


距離を置かなければいいのに。

彼もそんなに気にしてないよ。

今まで通りに付き合っていけばいいんだよ。


そんなことは言われるまでもなく考えが及んでいる。

でも、無理なんだ。


彼女はそういうふうに「できている」から。



優しさは弱さの覆。

彼女は何と愚かしくて脆い生き物なのだろう。


けれど。愛しくて美しいと思う。

僕は、やっぱりどこかおかしいのかもしれない。





第三者にとってはひどく馬鹿げた話。


何度も言うけれど。

例えば、の話、だよ。