他にも「あの世からの火」も多くの人に読んでほしいと思います。
下記、引用。
亡くなった松谷みよ子さんの「直樹とゆう子」シリーズ第四冊目。ゆう子たちのはとこエリコが、亡くなった祖父から死の直前に「若い世代に判断を委ねる」と託された、別荘の屋根裏部屋にあった段ボール箱の中身とは。終盤で、ばばちゃまの語った大陸での有り様を簡潔にあらわす一言が凄まじい
お金持ちのお嬢様エリカの祖父が遺した元七三一部隊の重要資料。児童書だけれど残酷な描写も隠さず書かれ(隠さず書くことが重要か)、私も詳しく知らなかったことが知れた。今の日本で暮らしている子供たちが触れる戦争体験は、空襲や原爆などの被害者側の戦争が多く、加害者としての戦争の知識はほとんど与えられない。エリカの祖父も孫娘にとっては優しいおじいちゃまであり、そんな人間を狂気にさせた戦争という特殊な環境を憎むべき。娘は最近あまり本を読まないけど、七三一部隊の具体的な研究内容が書かれた章だけでも読ませたい。
戦争中、大陸で生体解剖や細菌戦の実験台に「人間」をもちいたという、731部隊の資料が自分の別荘の屋根裏に隠されていたとしたら? もし、自分が中学生で尊敬する祖父が関係者だと知ったら? 中国人たちの非業な死の上に自分の贅沢な生活が築かれていたと知ったら? 物語の中のエリコのようにそんな物は見たくも知りたくもない。ゴミとして始末しようとしたエリコの苦しみ。そして直樹が怒りに燃えたように、松谷みよ子さんも怒ったのだ。民話に埋もれた人の思いをすくい上げたように。日本人皆がエリコにであり直視すべき歴史なのだと。
正直言って著者がこんなに社会派だったとは知らなかった。「ふたりのイーダ」の直樹とゆう子がそれぞれ大学生と中学生になっていた。身内にあった戦争の爪痕は、孫たちにとってあまりに過酷で忘れてしまいたいようなことだった。児童文学の部類に入る本にこんなむごい戦争の歴史を描くなんてとても勇気のあることだと思う。ここには戦後60年とあるからさらに10年が経っている。諸外国の人たちの目には日本人は戦争に対する意識が低いと映るのだろう。松谷さんが新しいことも大事だが、しっかり歴史も見つめなさいと言っている。