月曜日の深夜。目が覚めた。

左手の中指の先が痛い。

痛みで眠れなくなってしまった。


数日前に爪の横側が赤くなっていたので薬を塗りカットバンをしていた。

月曜日にその部分が赤く盛り上がっていた。

化膿しているのだろうか。

仕事もあるので病院へ行かなくてもなんとか回復すると思った。

しかし身体は、NOと宣言した。

痛みは次第にズキンズキンと響き続けた。

我慢できなくなった。


火曜日の朝、病院へ駈け込んだ。

皮膚科なのか外科かわからないので、総合病院へ行った。

外科だという指示を受ける。


外科のドクターはわたしの指先を見て、

「これは爪の下に菌が入り込んで、爪の下の肉が化膿して爪の横から盛り上がって

 きたんです。」

「治すには、薬を飲むか手術のふたつがありますが、どうしますか?。」

「薬で治るものですか」すぐにはいとは言ってくれなかった。


「手術は痛いですが、やりますか。」

外科のドクターにそんな言い方をされたのは始めてだった。

ほど痛いのだと直感した。

しかし、もう選択肢はない。


「今夜みたいに痛くて眠れない状態は続けられません。手術をお願いします。」

「わかりました。かなり化膿してるので緊急手術をしましょう。」


ドクターは看護師に指示をした。「隣りの手術室で準備をするように。」

待合室では多くの患者が待っている。

わたしは手術室の手術台に上がり、仰向けになった。

こころの準備ができていない。


ドクターは「指に局所麻酔をします。これが痛いのです。局所麻酔の経験ありますか。」

「全身麻酔は何度もありますが、局所はありません。」

「そうですか。我慢してくださいね。」

看護師はふたりに増えている。


麻酔の注射が始まる。

まるで骨になにかを突き刺している痛みだ。

信じられない激痛だ。


看護師がふたりでわたしの身体をフォローしてくれた。

なんとか痛みをこらえることができた。


ドクターが麻酔を指先にまで伝えようとマッサージをしているようだ。

「どうですか、感じますか」と指先になにかを押し付けた。

「少し痛いですね。」

「おかしいな。どうもあなたは麻酔が効きにくい体質なのかもしれないですね。
わかりました。それでは、もう一本注射をしますね。」

普段飲んでいる心臓の薬の関係かもしれない。


またあの痛みが走る。全身で我慢をする。

必死で手術台のどこかの部分をつかんでいた。

ドクターはまた聞く。「どうですか。」

以前より痛みは減っているが、感覚は少しある。


「このまま手術をします。我慢してくださいね。」

メスで爪の横の肉を切り取って、爪を縦に切り取っている。

失神するような話だ。

痛みを感じる。

これは想像を絶していた。

麻酔があまり効かない状態だから。

手術は終わった。トータルで30分はかかったと思う。


今週の土曜日まで必ず毎日来てくださいといわれる。

いつ完治するのかよくわからない。


後でわかったのは、「ひょうそう」という病気で、爪の下に例えば黄色ブドウ球菌が
感染して化膿して、激痛が走り、最悪の場合手を切断しなければならないこともある
危険な病気らしい。
手術の予備知識が無くて良かったとすら思った。


2日目の診察。

ドクターと看護師が包帯でカバーして固定した指先の包帯を解く。

またひどく痛い。


指の先が見えたその瞬間、看護師が見ないほうがいいですよと話し、手で指で隠した。

指を見て具合が悪くなるひとが多いのだと思う。


指先の肉芽をドクターはピンセットで切り取っているようだった。

麻酔がないため、爪の間に釘を刺すような痛みが走った。


激痛は一体いつまで続くのか。

友人に話したら経験者がいて、泣く人が多いらしい。

あまりの痛みのためだろう。

途方にくれそうになった。


しかし、次の日からは抗生物質のせいもあったのか痛みは次第に少なくなっていく。

通院までの痛み。

手術の痛み。

2日目の痛み。

ようやくいま痛みが減ってきたようだ。


痛みとはなんだろう。


痛みについては、最近がんの場合でも、いかに患者の痛みを減らすかということが

ようやく真剣に取り組み始められていると思う。

いわゆる<緩和ケア>だ。



わたしたちは、どこでどのような事態に会うのかわからない。

一瞬のことだ。

事故のように病気になることもあるのかもしれない。


痛みを消すことはできない。

しかし、ガン等の重篤な病気の場合はもっと緩和について患者の立場にたって、

様々な視点から取り組んで欲しいと思う。


痛みというものがいかに生きる意欲を奪い取るものかは、多少は知っているつもりだから。

痛みをこらえる限度というものがあるのかもしれない。


生き続けるということに関して、とても大きな課題なのだと思う。


いかに苦しまず生を全うできるか、痛みを減らすことでより生を全うできるか。


今回も叫びそうになるほどの痛みのなかで、支えてくれたのは看護師さんたちの微笑み

の力も大きかったと思う。

感謝している。


ひとはひとによって生きている。

わたしたちは支え合っている。