「メルカリ ハロ」はなぜ好調? 利用者が増えている、納得の理由

スポットワーク市場に参入した「メルカリ ハロ」が好調だ。サービス開始から3カ月弱で登録者数500万人、事業者の数も5万店舗を超えた(2024年5月末時点)。異業種からの参入にもかかわらず、急成長できた要因はどこにあるのか。

 

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 「スポットワークが盛り上がっている」となれば、当然、ライバルが登場するもの。リクルートなども参入を予定しているので、競争激化は避けられないだろう。こうした未来が見えている中で、メルカリはどのような戦略を描いているのか。執行役員CEO Workを務める太田麻未氏に話を聞いた。

 

●異業種から参入した狙いと現状

メルカリ ハロの利用者は、30代が23.8%、40代が20.3%、50代以上も18.1%と幅広い。3人に1人が「会社員・団体職員」と、社会人の副業ニーズにも応えていることが見てとれる。

 

 メルカリは、グループミッションとして「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」を掲げている。人が持つスキルや時間という価値を循環させる事業アイデアは、数年前から構想に上がっていたという。

 

 スポットワーク業界に参入した背景について太田氏は、「社会課題である人手不足の解決と、自由で柔軟な働き方を求める求職者のニーズに応えられると考えました。既存のフリマアプリやフィンテック事業との親和性も高いと判断し、グループ全体への波及効果を期待しています」と語る。

 

●リクルートとディップも参入

 

 メルカリはHR関連事業に参入したわけだが、短期間で会員数が大きく伸びた要因は2つある。1つめは「市場の成長」だ。スポットワーク協会によると、国内のスポットワーク登録者数は2024年3月末時点から2カ月で約700万人増加し、5月末時点で約2200万人に上っているという。

2つめは「フリマアプリ メルカリ」の存在である。月間アクティブユーザーは2300万人を超えるなど、その存在感は大きい。巨大な顧客基盤を抱えていることも急成長を後押しした。

 

 スポットワーク市場の二大勢力は、先駆者のタイミー(登録者数700万人)とメルカリである。ただ、2024年秋からはリクルートとバイトルなどを運営するディップが参入することを表明している。

 

 HR業界の大手企業が加わることで市場の拡大がさらに加速するとともに、競争の激化が予想される。この動きに対して、太田氏は「(メルカリ ハロは)業界の中でも独自のポジションを築けるのではないか」と自信を見せる。どういうことか。

 

 スポットワークを始めるには、専用アプリのダウンロード、会員登録、本人確認、銀行口座登録などが必要でハードルが高い。一方、メルカリ ハロの場合、メルカリで本人確認が完了していれば追加情報は簡易なものだけとなるので、すぐにスタートできるというアドバンテージがある。

 

 アプリを開き、「はたらく」のタブをクリックすれば、すぐに仕事を検索できる。日常の買い物ついでに仕事を探すことができ、マッチングが可能となっている。メルカリ ハロを使って働いたことがある人の約6割が「スポットワークは初めて」と回答していることを考えると、そのハードルの低さがうかがえる。

会員数や登録店舗数を順調に伸ばしているものの、課題もある。現状、求人の絞り込みは「都道府県」と「日時」しかできないので、開発の余地がまだまだある。例えば、利用者からすると「職種」や「給与」といった検索ができれば便利なはず。同社もそのことはよく理解していて、「スタートアップ的に開発を進めています」という。

 

●既存事業との相乗効果

 

 スポットワークの特徴として、仕事が終わればすぐに給与を受け取れることが挙げられる。ユーザーはプラットフォーム側から給与を受け取り、企業はプラットフォーム側へ後日支払う仕組みだ。ここで、メルカリ ハロならではの顧客体験が生まれる。

 

 仕事で得た給与はモノを買ったり、家賃にあてたり、飲食などに使われることが多い。一方、メルカリの場合、メルペイやメルカードといったフィンテック事業と、買い物ができるマーケットプレイスの両軸がある。

 

 つまり、メルカリ上でスキルや時間を提供し、対価を得る。得た対価をまたメルカリのサービス内で利用できるというわけだ。まさに同社のミッションでもある「価値の循環」といえる。

 

 求人サービスを使う場合、一般的に「仕事を探す」タイミングで使う人が多い。使用頻度が限られるので、アプリを探すのに手間取ったり、アカウント情報を忘れてログインできなかったりすれば、「使い勝手が悪いな」「ちょっと面倒だな」と感じたことがある人もいるはず。

 

 一方、メルカリを日常的に使用していれば、常時ログインしたままなので、急に時間が空いたタイミングでそのままメルカリ ハロを使うシーンが生まれやすい。「こういった流れは他社が真似しようと思っても、すぐにはできないのでは」と自信をのぞかせる。

 

 同社は新たな機能を追加していく予定で、その中のひとつに「デジタル給与」がある。資金移動業者(銀行以外で送金サービスを提供する登録事業者)としてメルカリが厚生労働省から認定されると、金融機関を介さず、アプリ上で給与をそのまま受け取れるようになる。

 

 資金移動業者として認定されるタイミングはいつになるのかは分からないが、実現すればメルペイや暗号資産との取引ができるメルコインとも親和性が高くなるはずだ。

 

●スポットワークが雇用の「入り口」に

 

 スポットワークは、これからの働き方にどのような影響を与えるのか。求人を見て面接し、働くという従来の流れでなく、まずスポットワークで体験してから長期間働くかどうか決めるというカタチに変わるかもしれない。履歴書と面接だけで求職者の人となりを理解する必要があった企業側にもメリットがある。

 

 スポットワークが拡大すれば、単発・短時間のアルバイトが増えるだけでなく、仕事の探し方や働き方の選択肢が広がるのではないか。企業にとっても、雇用できる人の対象が増えるほか、リピーターや長期就業に切り替える人と出会える機会も多くなるかもしれない。

 

 法律面など解決しなければならない課題はあるものの、スポットワークは仕事の探し方、働き方を大きく変えていく可能性を秘めている。同社のミッションを体現するサービスとして展開するメルカリ ハロが、今後のスポットワーク業界でどのようにポジションを獲得していくのか、引き続き注視したい。

以下参入時の記事。

● メルカリ ハロとは、メルカリが提供するスポットワーク求人サービスのこと。メルカリのフリマアプリを通じて無料で利用でき、「だれでも、すぐに、かんたんに」働けることをコンセプトに、3月6日から1都3県で求人を掲載している。

メルカリは11月13日、隙間時間などを活用して、単発・短時間で働けるスポットワーク事業に参入し、新サービス「メルカリ ハロ」の提供を発表した。2024年初旬に首都圏の一部からスタートし、順次全国に展開するとしている。

 

【詳細はこちら】メルカリで仕事が探せる「メルカリ ハロ」の詳細

 

 同サービスは、メルカリアプリでスポットの求人を探せるサービス。アプリ下のタブ欄に新設された「はたらく」から、近辺のスポットワークを探すことができる。すでに本人確認済みのアカウントがあれば、新たに情報を入力することなく仕事への応募が可能。メルカリと同じように、パートナー(求人側)とクルー(働き手)の評価を可視化でき、同社が持つ月間2260万人の顧客基盤を使い、幅広い属性・経験を持つクルーとマッチングできるとしている。

 

 給与は「メルペイ」を通じた給与デジタル払いにも対応予定。メルカリ ハロを利用して得られた給与を、銀行口座への振り込みに加え、メルペイでも受け取れるようになる(サービス当初は銀行口座振り込みのみ)としている。

 

 13日から求人募集パートナーの先行受付を開始。サービスの発表を記念し、問い合わせ・事前登録したパートナーには、サービス開始時から当面の間、手数料を無料にするキャンペーンも実施(終了日は未定)するという。

新サービスにより、メルカリやメルペイなどを通じて提供する「モノ」「お金」「信用」の循環に「時間・スキル(働く)」が加わることになる。メルペイのチャージ元に売上金、銀行口座、与信、ポイント、暗号資産に給与が追加され、これをメルカリでの買い物、コード/ネット決済、メルカードなどに利用可能。メルカリエコシステムの拡大とともに、年間GMVの底上げが見込めるようになる。

 

【訂正:2023年11月13日午後7時00分 当初、「メルペイ」を通じた給与デジタル払いに対応するとしておりましたが、追加取材で、サービス開始当初は口座振り込みのみ対応し、メルペイを使った給与支払いは今後対応予定であることが判明したため、タイトルと本文を訂正いたしました。

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