2024/03/20
《えいえん》

Dolce & Chocolat.のオープン日
あと20分 店の前には数人だが行列ができていた

「本日はありがとうございます」
「もう少々お待ちくださいませ」
真尋が陳列の最終チェックをする間 侑里と彰人は表に出て並んでいる人々に挨拶をする

「開店おめでとう!」と 聞き慣れた声がして
花束を持った津田将一が小走りに近づいてきた
彰人のゼミの先輩であり 真尋の元カレでもある
「津田先輩 ありがとうございます」
彰人は頭を下げながら 侑里の背中を軽く押して促す
「ありがとうございます」と侑里が花束を受け取ると
津田はあいた手でスマホを取り出した

「撮るよ!並んで」
「あ……ちょっと待ってください」
彰人が声をかけると真尋も出てきて 津田に挨拶した 侑里の両脇に真尋と彰人が並ぶ
「えー?私が真ん中?」
「社長だからね」
彰人がすまして腕をくむ
「とるよー!」
津田の合図に 侑里は2人の肩に手を置いた

お客が途切れることもなく盛況に終わって
3人とも安堵の表情で閉店を迎えた

「おつかれさまでしたー!」
缶ビールを軽く合わせて乾杯
彰人はもちろんノンアルだ

「あぁ よかったね お客さんが来なかったらどうしようと心配だった」
「売上は目標の160%とれたから 上出来だな」
「明日もお客さん たくさん来ますように」
明日もあるから 控えめにしておこうと言いながら
侑里も真尋もすでに缶の中身はほとんどない

「あ……そうそう これちょっと味見して
実は昨日 新作チョコを試作してみたの」
真尋が箱の蓋を取ると 甘い香りが漂った
「あ 可愛いね 薪?」
「どれ……」彰人も手を伸ばした

「美味しい 真尋 これいいね」
「ほんと?やった!」
「うん 美味い……うま……い……けど」
「え?花岡さん?」
「真尋 これ…シャンパン使ってるね?」
「うん……え?だめ?」
「だって 花岡くんは…」

彰人がアルコールを受け付けないことを真尋は知らなかった まさか自分が作った試作品で酔うとはおもいもよらなかったのだ
「花岡くん 大丈夫?」
「あ ああ」
「ごめんなさい 花岡さん…だからノンアル……」
「大丈夫 真尋は悪くない ここで休んでる」 
自分のデスクに伏せ 彰人はそのまま眠ってしまった

初めて見た彰人の姿に真尋は驚きを隠せないが 笑っている侑里を見ていたら安心した
「大丈夫 前にもね こういうことがあったの
ベンチで休んでいたら そのうち歩けるようになったから 帰る頃にはさめると思う」
「それならよかった 花岡さんにも苦手なものがあるのね」
寝せておいてあげよ……と侑里が彰人の肩にそっとブランケットをかけた
「これ……美味しいから販売しましょ アルコール入りというのはPOPに書けば大丈夫」
「ほんと?私も気に入っていたから嬉しい」

どのくらいたっただろうか
彰人が気がついた時には 2人とも軽く酔っているようだった
話す声は気だるそうだが ボリュームは大きめになっている
(全く……2人ともどれだけ飲んだんだ? 嬉しいのだろうから大目にみてやるけど……)
笑ってたしなめようとしたその時だった

「じゃあ……侑里さん 何年も男の人と付き合っていないの?」
「え……っと……高校生の時が最後かな……」
「え?じゃあ……もう10年以上 なぜ?」
「うーん なぜって言われても……いいのよ もう
私は今後 恋愛をするつもりはないから……」
彰人は起き上がることができなかった
何とも言えぬ思いがゆっくりだが全身を駆け巡る
侑里の言葉は冗談とは思えない ずっと忘れることができないとだろうと思わされた

だが その話も長くは続かなかった 
「ね……真尋 このチョコもらっていい?」
「どうぞ……ふふっ花岡さんは食べないわよね」
他愛のない話になり 2人の笑い声がした

「明日に備えて そろそろ帰ろうか」
彰人が伸びをすると 侑里と真尋が同時に見た
「あら お目覚め?」
「花岡さん 次からは気をつけますね」
真尋が胸の前で両手を合わせる
「大丈夫 少し寝たら すっきりしたさ」
彰人は少しだけ缶に残っていたノンアルコールビールを飲み干した
ずっと手にしていたそれは 生ぬるかったが 苦みが喉から落ちていった

星空

部屋に戻った彰人は いざ寝ようと目を閉じても
なかなか眠れなかった

なぜなんだろう……
本宮がもう恋愛をしないという理由はわからない
だが これだけはわかる
何年もそばで過ごしてきたのに 俺はひとりの男として見てもらえなかったということだ

いつかは本宮に思いを伝えようと思っていた
社員が増えて会社も安定してきたら?
はっきり決めていたわけではないけど
こうしてそばにいれば いつかその日は来ると思っていた 
でも そんな日は永遠に来ないのか?



翌朝 睡眠不足は否めないが 彰人は背筋を伸ばして店へと向かった
「おはよう」
侑里の笑顔が いつもより輝いて見えた
「おはよう」

彰人は覚悟を決めた
本宮が恋愛しないというなら 俺もしない
本宮の夢をひとつひとつ実現するために 俺は全力を注ぐだけだ
こうしてその笑顔が見られるなら 俺はそれでいい

「さあ 今日も頑張ろう」

おわり

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一応 ここで完結でよろしいでしょうか……
ご覧いただきありがとうございました😊

上の画像はこちらを加工しました
この画像の彰人さまは 缶ビールを手にしていますが
ここでは 普通に飲んでしまったのでしょうか……
それまで飲むことってなかったのかな……
私の書いたお話の中ではちょっと違いますが
そこは 全部作り話なので
ご了承ください……ませ

そして 番外編を出そうと思っていますが
それはドラマの話に準じていないものを勝手に書こうと思っております🙇‍♀


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#中川大志
#花岡彰人