待っておったぞ 小四郎

私の軍ももうここまでだろう……
兵の数ももう数えるほどになっている

私は小四郎と相まみえる覚悟でおびき出した
一対一の真剣勝負だ

ただ向かってゆくのみ これまでと変わりはない

命を惜しんで敵に向かったことはない
とまどうことが隙を見せることになるのだ

刀のぶつかる音
小四郎の刀が折れたようだった
泰時のそばに向かった小四郎は刀を取り替えることはなく 兜を脱いで手渡している
私も兜を脱ぎ捨てた……渡す息子はいない

手綱をぐっと引いてもう一度向かっていく
折れた刀をどうした……と思ったその時

なんということだ
小四郎は私に飛びかかり そのまま2人とも地面に叩きつけられるように落ちた

咄嗟のことだ すぐには立ち上がれない
躍起になり向かってくる兵たち……
すべてが敵軍だ……
「どけ!手を出すな 誰も手を出すんじゃない!」

平六の声が全ての動きを止めた
土埃が舞う
小四郎が向かってくるのを容易くかわす
私は手を緩めることない
幼い頃から時折相撲をしてきたが
小四郎に負けたことはない
その頃と同じだ 
倒れた小四郎は地面に落ちた脇差に手を伸ばす
私はその上から踏みつける

ありったけの力を振り絞った小四郎に倒される
飛びかかってきた小四郎は
こどもだったあの頃より力をつけていた
だが そんなことで屈する私ではない
優位の小四郎を逆に組み伏せた…
そして……

そなたの命は 私に託された……

やめてくれと言わない 覚悟を決めた小四郎
その上から私は脇座を振り下ろす
目を閉じた小四郎の耳元 そのすぐ横
刃先はその地面に突き刺さった 

ここで そなたの命を奪ったら
だれが鎌倉を建て直すのだ

救われた命を無駄にするな……
私の思いは……そなたに託す………

もう……これで思い残すことはない
我ら畠山軍は 
誰に恥じることもない戦いぶりだった
ここに散った命を……意味のないものにするな

私は立ち上がり かつての仲間たちを見渡す
誰も無言だった 攻めてくる者もいない

愛馬にまたがり 私はどこに向かうのか
どこに向かうかわからず ただ歩き始めた
力の限りを使い果たした………
広く青かった空の片隅が赤く染まり始めている
私はかろうじて残っている力で見渡して歩く


その時だった

眩しいくらいの空の青が 突然真っ二つに割れた
と 同時に何も見えぬ闇となり私は闇の奥へ奥へと凄まじぃ速さで吸い込まれていった
懐かしい顔が浮かんでは消え 
私は真っ暗闇の……奥に 

その奥へと………もう何も見えなかった


おわり




いきなりの終わりで…すみません
どうしようもなかっです
脇差 (わきざし)は江戸時代のものであるというのもチラッと見ましたが
ここのお話では『短刀』より『脇差』の方がかっこいい気がして使いました
そもそも鎌倉時代に刀を二本もっていたか?も違う説もありますが そこは見逃してください(ドラマでも実際持っていましたが)





最後までご覧いただきありがとうございました

実はもうひとつだけ 考えているものがあります
ご覧いただけたらうれしいですが……😅