タイトルは未定です。 | 【流石丸】さすらいのんまいもん☆【魁】

【流石丸】さすらいのんまいもん☆【魁】

タイトルを改変いたしました。
流石丸のさすがじゃのぉ(仮 から今回のタイトルに変更いたします。
アテクシ流石丸がいろいろな制限のある中 それを掻い潜り自分なりにおいしいと思えるものを探していこうかと思っております。
主にぺろ(麺類)が多いかもwww

街中にはたくさんのドラマが転がっている。

 多分。。。

 一人ひとりにドラマがあるんだと思う。

 きっと。。。

 今日はそんな中の一人にスポットを当てて観察してみよう。

  山沢 寿々 68歳。

 普通の主婦。というか老女。。。半歩前だと自分は思っている。

 連れ合いに先立たれ 早5年 いまや家を支えているのは 長男の駿だ。

 駿は出来た息子で 平凡ではあるけれども大学を卒業後、地元の会社に勤め、大学時代から交際していた彼女と3年後結婚をした。嫁は最初こそ遠慮がちだったものの 2年もしたら我が物顔で家内のことに口を出すようになってきた。
 寿々はそれを悪い事とは思っていなかった。むしろ頼もしくすら思っている。孫もでき、若いとは思っていても孫から言われる「おばあちゃ♡ 」の声に抵抗は感じていない。孫ももう6歳である。

 そんな寿々の下に一通の手紙が届いた。
 


 《 父 国崎渉儀  かねてより病気療養中のところ薬石効なく  5月10日午後4時30分73歳で永眠いたしました ここに生前の御厚誼を深謝いたしますとともに 謹んで御通知申し上げます
 おって葬儀ならびに告別式は下記のとおり執り行います


                    

      記



葬 儀 5月12日(水) 13時~15時
告別式 5月17日(日) 15時~18時
場 所 静流会館   大地町草延 

 なお 勝手ながら故人の意志により 御供花 御供物の儀は固く御辞退申し上げます

 平成21年5月11日


 花賀市海原町塩瀬1-2-3 

                     喪主 国崎隼人
                        親戚一同》


 寿々はその手紙を読み、ぼっと昔に想いを巡らした。

 寿々と連れ合いの正道とは 恋愛結婚だ。
 寿々は当時の女性の花形職のエレガ(エレベーターガール)だった。 
 正道はまだ大学も卒業したての駆け出しの営業マンだった。寿々の勤めるデパートの業者だったわけで本来ならば裏にある業者用のエレベーターを使わなくてはいけないのに ひょんなことから寿々を見初めてしまい毎日のようにエレベーターに乗りに行ったのだ。ある時は業者として また ある時は客として乗った。
 そんな正道をむげにできるわけもなく いつの間にか付き合うようになっていた。
 当時 寿々には親が決めた婚約者が居たのだけれどその人とデートのたびに違和感を感じるようになっており常に正道のことを気にするようになっていた。いつの間にかこの婚約者とは隔たりができ無理を言って破談にしてもらったのだ。
 
 「悪い人ではなかったけれど 生活観が合わなかったの」

 当時の寿々の断りの文言だ。

 程なくして正道と結婚することが決まり とんとん拍子に進んだ。

 そして 今がある。

 実はこの手紙にある国崎渉こそ当時の婚約者なのだ。

 「渉さん。。。亡くなっちゃった。。。」

 これは寿々の青春時代が幕を閉じたという事を暗に伝えているようにも思えて切なかった。
 
 涙が 右頬を伝う。

 断る時 若干の罪悪感があった。

 渉は寿々との結婚生活に夢を描いていたからだ。
 公務員だった渉は それほどのサラリーがあるわけではなかったから 結婚後の話になると まぁ 慎ましやかな話になるのだった。

 「給料はここまでだから こうして ああして 親にはこれだけ 自分たちが使えるのはこのくらい。。。寿々ちゃんも働いて貰わなきゃ。。。」

 現実感ありありの結婚後の夢を聞かせられ、堅実すぎて冒険のなさにウンザリするばかりだった。
 だが、正道との結婚生活を深めれば深めていくほど 渉が聞かせてくれたヴィジョンが正しいものだったと解った。
 解れば解るほど渉に対しての罪悪感が身にしみるのだった。

 正道との結婚に後悔はない。だけど この気持ちだけは拭えなかった。

 風の噂に 渉が別の女性と結婚したのを聞いた。
 
 「これで よかったのよね 渉くんには私じゃなかったのよ」

 そう言い聞かせ、きっと渉も幸せであるだろうと思っていた。

 




  5月17日

 その日 寿々は大地町の静流会館に来ていた。
 黒い喪服に身を包むのも寿々の年齢では珍しいことではなくなってきた。
 毎年、様々な縁者知人のうち誰かが逝くのを見送っている。
 だが、何回もこのような場に身を置いても慣れないのはどうしてなのか?
 今日はさらにそんな思いを激しく感じる。

 静流会館の入り口を潜ると、顔の知らない人ばかりだった。

 「ねぇ ちょっと あの方は?どなたかしら?」
 「さぁ。。。親戚筋では。。。ないと思うわ」

 本来は 葬儀に駆けつけたかったがあまりの駆け足葬儀で来るに来れず告別式への参列となった。

 受付で自分の名前を記した。

 「あの この度は。。。」

 一礼して香典を差し出した。

 「ありがとうございます。」

 受付の男性は深く一礼をした。

 参列者の中の弔問客の席に座り 祭壇を眺める。

 最近のものだと思われる渉の笑顔の遺影が真ん中に飾られている。

 「お互い。。。歳を取ったものですね。でも面影残ってますよ。こんな形で再会なんて。。。」
 
 受付の男性が誰かと話しながら寿々をチラチラ見ている。
 
 「そうよね 私 来てはいけなかったのよね。。。なぜ?私の連絡先を残しておいたの?渉くん これで お暇するわね。。。」

 そう 心で呟きながら席を立とうとした時、

 「あの 山沢さんですよね? あ 僕 渉の息子の隼人です。 本日はいらしていただいて ありがとう御座います。」

 隼人は深々と頭を下げた。

 「まぁ 息子さん。。。何も存じ上げませんで。。。こちらからご挨拶しないといけないのに。。。 この度は突然のことで」

 寿々もあらためて 挨拶をした。

 「あのぉお母様は大丈夫?」
 「母は 父の亡くなる2年前に他界してます。」

 隼人は俯きそうになる顔を上げて必死に堪えた。

 「それじゃ あなたとあなたの奥様が看てらっしゃったの?」
 「僕 嫁さんいないんで。。。独りで あ でも 病院とかも完全看護だったので。。。親戚とかいろいろ手伝ってもらって。。。」
  
 見れば隼人は自分の息子よりも10は若いか?まだ少年っぽさが残っている。顔立ちは渉の若い頃に似ているような気がする。

 「何も知らずに 私ったら。。。ごめんなさいね」
 「いえ。。。 あの ところで 告別式の後、お渡ししたいものがあるのでお帰りの前にお時間よろしいですか?」
 「え? ええ。。。」

 隼人からの突然の申し出に断ることのできない寿々だった。