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                 ※2F待合室よりみた試験コース
 1月下旬某日

 倉庫会社に勤める自分はトラックドライバーと接する機会が多い。免許取得の参考になる話を聞くため一発で大型免許を取得した猛者がいないか声をかける。一人S岡市のC部免許センターで取得した人がおり、仕事もそこそこに武勇伝を熱く語ってくれる。しかし職場には主に他地域のトラックが乗り入れてくるため、なかなか必要な情報を得ることができなかった。そこでこの日午後からの休みを利用してH松市K松のS部運転免許センターに出向いてみることにした。ここが一発試験の舞台となる。時間は午後3時半で1Fロビーはがらんとして窓口もほとんど無人であった。なぜかブラジル人とおぼしき外国人の姿が何人かみられる。うろうろした挙句、通り掛かった掃除の方をつかまえどうしたらよいか聞くと“安全協会の窓口で聞いて”と言う。更新手続の際に印紙を購入したり協会加入をお願いされる窓口である。3人ほど女性が退屈そうに窓口に座っていた。

 そこで窓口嬢のひとりに問いかけてはみるものの、自分自身に試験についての知識がまるでないため、その結果彼女に質問攻めとなり大変面倒くさがられたが、とにかく順を追って受験手続をする。まず言われるがまま住所変更の窓口で合併に伴う市名の変更の手続きをする。そのあといよいよ受験票の作成に入る。書名は“運転免許申請書”といい、ここに住所、氏名、生年月日、電話番号を記入して免許と一緒に提出、受理されると封筒に入れて自分に渡される。そして受験の手順を追って説明してくれた。尚、普通免許を取得している場合、運転実技となる技能試験のみで学科は免除となるらしい。試験は月、水、木の週3日に行われており、最初はここに来るか電話で予約をいれるとのことだ。

 まだ若い窓口嬢は決められた次第に手続きが進むと、急に立て板に水を流すが如く“試験の予約はしていかれますか?”などと聞いてくる。しかしまだ試験の概要もわからないうちの受験ではあまりにも無謀なので今日はここまででセンターを出た。大変くたびれた。帰り道ふと近所の書店に立ち寄り大型免許の参考書を購入する。存外、一発で免許を取得したい人の需要があるらしくこの種の書籍について難なく購入することができた。見ると試験の手続きや心得から実車の操作など技能試験全般について懇切丁寧にかかれており、学科試験が不要なのもここではっきりわかった。また法改正前のため路上試験もない。

  最初にこれを読んでおけば試験場でうろつかなくてよかったのだ。

 さて数日後の1月某日、仕事の谷間を利用して急遽午前中の休みを取りふたたび免許センターへ出向く。参考書でイロハの“イ”の字くらいは判ったところでコース図の入手と試験の予約を取ってくる算段である。朝9時頃に到着。先日と打って変わってロビーはさまざまな手続きの人でごった返す。それも前回同様ブラジル人らしき外国人が多い。技能試験の窓口へ行き、試験の予約をする。係員が“大型は大変混み合っていますので次回は2月初旬になります”と言われる。いや、そのほうが予習の時間があってむしろ好都合とも思ったのだがそのやりとりを横で聞いていた眼光鋭い初老の係員から何かパンフレットを渡されいきなり予想外の事実が明かされる。

“今度中型免許ができると6月から大型の技能試験はS岡市のC部免許センターに移るよ。だからいま、ここでは駆け込みで混み合っている。5月いっぱいまでに合格せんと面倒だぞ”

 この年の6月の中型免許新設のことは風の便りに知っていたが、自分はただ試験の車両が変更になるだけだろうと思っていた。しかしここS部免許センターではコースが手狭で大きいトラックは走れないのだそうだ。S岡市は遠い。とてもじゃないが試験に通えない。いま現在の受験申し込み状況からしてひと月に2回、つまり5月までの4ヶ月までに都合8回は受験できそうだ。その間には何とか合格できるだろうが、それにしても面倒な事になった。何が何でも8回のうちに合格しなければ・・。

 気が重くなったが取り直して試験コースについて聞いてみた。すると“総合窓口でコースのコピー(道路図面)を買って裏手にある技能試験待合室に試験コースが掲示してあるからそれを書き写しなさい”との事。早速コピーを4枚購入し(1枚30円、コースは全部で4コースまであるため4枚買った。)ロビー裏手の試験コースに出る。

 更新手続きで訪れるだけだと気が付かないが、免許センターの東側には教習所の教習コース同様の広々とした試験コースがある。この時間、面白いことに多くの受験生がコースの上をぞろぞろ歩きまわっており本日の試験コースを覚えている。まるで歩行者天国のようだ。朝の時間、車両が入るまで開放しているのだ。ここでも外国人が目立つ。

 すこし離れたトイレ横の階段を昇り、おずおずと2F待合室に入る。待合所は東側がガラス張りになっておりコース全景が見渡せる。外人で鈴なりになっている。その反対側壁面に掲げてある大型のコース図を捜し出し書き写した。これは意外に骨の折れる作業で、なおかつ後で見直すと間違っていた。近くでは外人が壁面の普通車のコース図を見て“トマ~レ”とか“ヒダ~リ”とか言いながら一所懸命仲間同士で議論している。なぜ外人だらけなのだろう?面倒承知で費用の安い試験場に受験にきているのだろうか?

 さてしばらくすると試験車両がコースに入ってきた。普通車が3台に大型試験車が1台。大型技能試験の車両はM菱ふそうの4tタイプで、ラッキーなことに仕事で乗っている冷凍車と全く同じ型式である。ただ増トン仕様で最大積載量5.500Kgとなり(法改正前の)大型車両という訳だ。荷台はごくふつうのバタ板平ボディ車なのだが、なぜか荷台最前に妙なテントが載っていてその中には椅子がひとつ据え付けてありここだけ異様である。コース書写を終え下の発着場に下りて、来たる受験にそなえ試験の様子を見学していく事にする。

 試験官はやはり先ほど窓口で“5月中に受からんと面倒だぞ!”と脅された初老の方であった。5~6人の受験者と試験官で点呼と簡単なオリエンテーションを済ませ早速試験が始まった。一番目の受験者が前方後方の確認ののち車両に乗り込む。すると受験者の一人が慣れた手つきで“よいしょ”と荷台に上がるとテントに入り込み中の椅子に座った。“何だろう?”と思ってそばにいた別の受験者に聞くと、次の順番の人がコース予習するための席なのだそうだ。

 受験者は年齢も素性もさまざまであった。1番目は外国人、初受験の人はカックンとブレーキをしている。いかにも運ちゃん系おじさんもいて試験では軽やかなハンドル捌きだが安全確認も軽やかであった。そんな彼らに試験の様子をいろいろ質問してだんだん自分の中で試験の概要が掴めてきた。5人程試験を観て午後からの仕事のため会社に戻ったがこの間の合格者は居ない様だった。尚、試験は100点からの減点法で採点され助手席に乗った試験官が受験者の運転を検分しミスをひとつひとつ減点される。70点以上が合格との事だ。

 それから日夜暇を見ては試験の予習である。コースは外周路の周回と中の課題があり課題にはクランク、S字コース、方向転換、踏切通過、信号のある交差点、コースはずれに坂道発進、あと外周路内に障害物通過の課題がある。試験場によっては縦列駐車の項目があるのだがS部免許センターの課題には含まれていなかった。コースは全部で4コースありこれら課題通過の順番組み合わせがそれぞれ違ってくる。まずこれらをすべて暗記する。

 運転そのものについては普段乗っている冷凍車と試験車が同じ型式のため多分大丈夫だろう。技術的なところでは日常の集配業務の時間を利用し職場ちかくの堤防道路の駆け上がりを利用して坂道発進の練習や会社構内で終業後に方向転換の練習をする。あと必要なのは運転中の安全確認などの独特な手順である。参考書をみては確認の方法や交差点の通過方法を覚え、集配の時間を利用して練習する。窓を開けて音を確認する踏切通過など普通免許取得したころを思い出す。

 インターネットを検索すれば技能試験で免許を取得したレポートのサイトが数多くあり“落ちては受け、落ちては受け”の悲哀や合格へのポイントがそれぞれレポートされている。ただ、S部免許センターでの取得をうたったサイトは見当たらなかった。試験場によって運転中の安全確認の方法など手順や方法や順番がまちまちで、それらレポートの中でも解釈の仕方が錯綜しており、合格後のコメントで“とにかく自分を信じること”などといささか無責任に書かれていたりする。N野県で最近合格した方のサイトで比較的詳細な記述のものがあり、これを参考にすることにした。尚、各ページで“取得にあたり参考になったWebがリンクで貼り付けてあり、その中の決定版といえるS賀県の方の技能試験研究サイトがある。数多くのリンクに貼られた技能試験合格のバイブル的存在のページらしいのだが、いそいそ開いてみたところ残念ながら半年位前にサイトが閉鎖されていた。

 その他にも事務的準備がある。朝の試験場は大変混み合っており各受付窓口は長蛇の列となるので証紙購入や証明写真の撮影など事前にできる手続きはあらかじめ先に済ませておく。尚、証紙とはS岡県収入証紙で、この場合いわゆる“受験代”となる。内訳は受験手数料3.300円、車両手数料1.100円、合計4.400円でこれが1回分の受験代の合計である。また受験票には3ヶ月以内に撮影した写真を1枚貼り付けておく。