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                ※技能試験の合格発表

 結論からいうとまた不合格である。しかも先行きに暗雲がたれこむ予兆を示唆させる事態がいくつかあり、免許センターを出るその足取りは重いものであった。

 この日の早朝、予習不足を補うため構内で練習をしようと出社。ところが練習前に職場のある装置が異常をきたしておりその処置に時間をとられ充分に練習ができなかった。またその足で試験場に向かったのだが、職場の鍵をうっかりポケットに入れたまま持ってきてしまい、後から出社した会社のメンバーが職場の鍵が開けられず計り知れない迷惑を掛けてしまった。鍵を受け取りに同僚N氏が憮然としてバンで免許センターまですっ飛んでくる。申し訳なさすぎて返す言葉もない。朝から幸先が悪い。

 試験場ではもうお馴染みで目の検査から始まる。しかし今日は日本人の列ばかりだ。それも若い人が多い。前の順番の女の子に聞くと自動車学校の卒業生で今日学科試験の人達ばかりなのだそうだ。そういいながら彼女は普通AT限定の卒業証書を見せてくれた。もう卒業、就職を迎える季節なのだと実感する。よしんば、ほとんど列の全員が視力を測るため目の検査で非常に時間が掛かってしまう結果と相成る。自分は継続のスタンプを押すだけで急いで技能受付へ。最近は一日の受付人数を14人とし午前7人午後7人と先着順で受け付けていると聞いたので、あまりモタモタしていると午後の試験に回されてしまい、午後から出社できなくなってしまう。慌てて受け付けをするがそれがアダとなったか今日は受験番号102つまり2番目である。

 今日はあまり同志と出会わない。目の検査の順番待ちでカルロスと挨拶しただけだった。本日のコースは1番という事で難易度の低いコースという事もありまずはホッとする。コースの下見で歩き出すとぺーさんがどこからともなくひょこひょこと付いてきた。と、言っても自分はコースなどとうに暗記していてぺーさんと世間話をしながら歩くばかりで張り合いがない。さて今日は新機軸のひとつで会社の作業着で受験する事にした。厳しい試験官の心証が少しでも良くなればとアノ手コノ手な訳だが、そういう意味では初回から不精ひげを落として試験に臨んでいる。それはともかく非常に寒い。コースは雪が舞っており強烈な西風が吹いている。近隣の山々は頂が白い。作業着の下にはしっかりとスウェット上下を着込んで屋外見学時対策をしてきた。大型専用の8番乗り場に集まった本日の受験生、カルロス、ぺーさん以外は初お目見えの方ばかりとなった。

 今日の試験官はCさんという方、見た目も話も温和な方だ。是非採点のほうも温和であって欲しいと思う。前回の少し多重人格系で苦手なB試験官は、今日は目の検査の係員だったので“しめた”と思ったものである。オリエンテーションで気になったのは、6月からの中型免許の説明があり“今後よく考えてから受験してください”とつくづく意味ありげに言われたことだ。どういう事なのだろうか。
試験が始まる。自分は2番目なのですぐ荷台テントに乗り込む。ぺーさんは本日受付が遅く6番目で、いつも必ず1番目のカルロスはきょう4番目。

 さて自分の番、いつものように発車、外周から踏切へと順調にこなす。メリハリもまあまあ。ブレーキもカックンにならない程度。安全確認や進路変更は研究どおり。C試験官はなにかとこちらの足元を見ていて気になる。なるべくクラッチに足を乗せないように気をつける。S字に入る。狭路だが進入が他の3コースと違い鈍角なのでラクである。ホームを見る余裕もでる。ぺーさんがこっちを見ながらホーム上を走っている。試験官が手板に鉛筆でチェックを入れ始める。なんだろう?クランクは慎重にハンドルを切るが第一カーブはやはりギリギリだ。縁石を踏みそうになったが試験官の目線は他にいっている。しめた。課題の中で交差点を何度も通過するが今日はそのたび嫌なタイミングで信号が赤になる。先を見越してカックンにならない様に停止する。方向転換(バック車庫入れ)は前回まで何度も止まって車庫に収めていたが、今回は1回で決めた。

 最後は坂道発進、問題のシフトミスもなくスムーズにパス。発着点に戻る。安全確認は多少散漫になったが課題をそれぞれスムーズにこなすことができた。試験官にどうだとばかり“終了しました”とギヤを後退に入れエンジン停止。C試験官のコメントを聞く。

“Hさんね、S字で脱輪してたのわかった?あと坂道入るカーブでも白線のゼブラ踏んでたよ。曲がるときは後輪の動きもちゃんとミラーで確認するようにしてねー。あとちょっとハンドル操作が遅れることがときどきあるね。そこを注意してください。

 一礼して下車。すかさずぺーさんから“お宅S字で左後ろ落ちてたよ、ばかにハンドル切るの早いなあと思った”と指摘される。ホームでこちらを見てたのはその事だったのだ。ダブルタイヤなので衝撃はないがかなり大きな脱輪だったのだろうか。インターネットの免許取得記などの府中や埼玉では即試験中止項目である。これで本日の不合格は決定的となった。実はS字は一旦ハンドル角を決めれば後はスルスルと進むだけなので自分の中では息抜きタイムだった。それが落とし穴となってしまった。散漫な勉強や受験態度がそのまま運転に出てしまった。仕事では絶対やらないミスだ。今日はあっさり4.400円をドブに捨ててしまった。ショックを隠せない。ましてや簡単な1コースだったのだ。

 ぺーさんカルロス達と情報交換、といってもカルロスはあまり日本語を解せず身振り手振りとなる。“Cさんはやたら足元を覗くよ”と情報を流す。先の受験者アドバイスを受け続々と試験をこなす。ぺーさんは例によってコースを覚えてないのだが、今日の試験官は交差点の番号でなく“どん突きを左、左で方向転換ね”と判りやすく説明してくれるのでこれは有利に働くはずだ。カルロスも順調だ。今日は初受験の人はおらずカックン停止もみられず。

 しかし、どうした事か皆ことごとく“脱輪”や“白線踏み”を指摘されて帰ってくる。ホームでは解らないが実にさまざまな脱輪があるようでぺーさんも「ケチのつけっこだな」とため息をつく。ペーさんだけは外周路に置かれた障害物(パイロン4個)をよけるところで対向車に進路を譲らず進路妨害を取られていた。今日は試験車のほかに高齢者講習の普通車が4台コース内を走っており、その走りは技能試験的見地から見た場合まさに“暴走車”で、運悪くぺーさんの試験の減点はその講習車とのすれ違いの最中の出来事だった。

 お昼前に7人全員終了。C試験官の“お疲れ様でした”のひと言でロビーに戻る。今回は程なく結果発表、合格者はゼロであった。すぐカウンタに放置された受験票を拾いにいく。今度の受験日をすぐ確認すると次は4月あたま。なんと20日も開いているではないか。なぜこんなに間が開くのだろう?このスパンが続くようでは命運絶たれる6月まで何回も受験できない・・。これには受験者みな狼狽し試験官を見る。するとC試験官

“6月に制度が変わるというので駆け込みの受験申し込みが非常に多くなっています。本来なら大型の試験は週3回(月、水、木)だけなのですが、なんとかこちらとしても試験やってもらえるように月~金まで毎日午後まで試験やるようにしましたけどもう限界いっぱいですね。こんなに開いちゃって申し訳ないのだけど”との由。

 民間の公認教習所では5月末まで予約いっぱいとすでに断りを入れている。然るにこちらは公の“一発試験”制度なのだ。5月31日だろうと6月1日だろうと正規の手続に則った申込みは順番どおり受理する。試験前のオリエンテーションでC試験官がつくづく言っていた深意はこういう事だったのだ・・。

・・「たぶんあと何回も受けられないよ、受からんまま6月になっても恨まんでね」・・

 ぺーさんはじめ、みな血の気が引く。自分はとにかく新年度かつ月アタマの月曜の指定ではさすがに仕事上まずいので2日後に替えてもらう。これで初回からの相棒ぺーさんとお別れである。悲壮感漂う中、互いの健闘を祈る。次回の証紙を購入し暗澹たるきもちで仕事に向かう。

 いずれにせよ、まずいことになってきた。悠長にS字でひと休みするような生半可な受験態度では合格できぬまま6月を迎える気配が濃厚になってきた。いったい現在何人の受験希望者がいるのだろう。今日から次に指定された受験日の間をカレンダーで調べたところ、土、日、祝日を除いた試験日は14日間。現在大型技能試験は平日毎日行われているので仮に午前7人午後7人として一日14人ずつ受験した場合

14人×14日=196

 つまり現在S部免許センターには約200人ほどの受験希望者がいるという事で、この並みいる強豪と対等に渡り合ったうえ合格しなくてはならない。そんなことができるのであろうか?ましてやイチかバチかで受験希望者がまだまだ試験センターの門戸を叩く可能性は高い。もっとも勝ち抜き試合をするわけではないのだが・・。

 ちなみに本日の試験点数を聞いたところ、“Hさんね、受験票の日付のところに書いといたから”と手渡してくれた。そこには鉛筆でちいさく“50”と記されていた