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ギャンブル依存症の方々へ

私は重度のギャンブル依存症でした。人生の転落から社会復帰に至るまで、少しでも多くの依存者の方々へ届いて欲しいと願い、この経験をまとめました。ギャンブルは何も生みません。幸せな生活を取り戻して下さい。


夫や妻に隠れてギャンブル、恋人にお金を借りてギャンブル。現在ではその人口は相当数かと思います。
中には大事な人のお金にまで手を出している方々も多いのではないでしょうか。

過去の常連仲間女性(以下U)もそんな依存者の1人です。
Uは夫も子供もいるごく普通の主婦でした。
一軒家のローンがあり生活は楽ではないと話していましたが、共働きで何とかやり繰りしている。そんな何処にでもいるような女性でした。

Uと出逢った経緯に関しては記憶が曖昧ですが、とても美人な女性だったのは記憶しています。
Uは服装も地味で化粧すらしないタイプでしたが、とにかく金遣いが荒い。そんな印象でした。
ギャンブルをする人間が金遣いが荒いのは当然です。しかしUに関しては主婦でパートをしているのに凄いお金持ってるな、と感じた記憶があります。

Uがパチンコ屋へ来るのは毎日ではありませんでしたが、開店と同時に店に入ってくるタイプでした。
後に聞くと並ぶのが恥ずかしく、知り合いに見付かるのが怖かったそうです。

Uはよくカニ※をしていたのを記憶しています。ストック機など、稀に据え置き※のイベントなどがあったので、その台を狙うお客は多かったです。
※カニ:台を1台1台横に移動しながら打つことです。
※据え置き:前日の台がリセットされず設定やストックなどが変更されてない状態です。
Uは即当たらないと台を移動し、自分が打っていた台が爆発していると怒りを露にする。容姿とは裏腹にそんな変わった性格でもありました。
あまり儲けている姿はみたことがありませんでした。
ずっと監視している訳ではないので儲けている日もあったと思いますけどね。

ある日、私はUの軍資金が何処から出ているのか気になり、Uの生活の詳細を聞くことにしました。
休憩札を貰い某牛丼屋へ言ったことを覚えています。私が誘いました。
正直美人だったので仲良くなりたい下心があったのかも知れません。
「お金持ちだよね」
短直にそんな質問をしたと思います。
するとUは
「貯金だよ」
「内緒のへそくり」
と笑いながら話していました。
きっと借金でもしてるんだろうな。そんなことを考えた気がします。
その後特に深い話はしなかったと思います。
再び店に戻り別々にスロットを打っていました。

Uがお金の相談をしてきたのはその会話をしてから間もなかったです。
「1万円借りられないかな」
「もう少しで当たりそうなんだ」
当時常連内での貸し借りは普通だったので、そのくらいなら大丈夫だよと貸しました。
1万円など当時の感覚では現在の千円くらいの感覚でした。
あれだけお金持ってたのにな。そんなことを感じた気がします。

翌日お金は戻ってきました。
信用あるなと思いましたが、私もこの頃軍資金が無くなると誰かに相談していた時期なので、2度目もあるだろうなとは思いました。
依存者は皆同じことを考えますからね。

2回目にUがお金の相談をしてきた時、様々な事情を聞くことが出来ました。
「3万円借りられないかな」
そんな軽い感じだった記憶があります。
その日は即答せず何に使うのかと問いました。
するとUは隠していたことを全て話してくれました。
軍資金にしていたお金は、旦那さんから支払いに充ててくれと依頼されたお金だったのです。
その他にもローンや生活費に充てるお金も軍資金に使っていたそうです。
更には管理名目で預かっていた子供の貯金にまで手を出していました。
あれだけ使ってバレたらどうするんだろ。そんな余計な心配もした気がします。
しかし特に驚きは無かったです。
同じような人間、より酷い人間を沢山知っていましたからね。
まだマシな方だなと感じました。

その日私もお金が無かったので、記憶は曖昧ですが3千円程度を貸したと思います。
その後Uは店には現れなくなりました。3千円も戻りませんでしたが別に気にもしませんでした。
それよりUともっと仲良くなれなかったことが残念だった気がします。

それから私は毎日常連達と飽きずにギャンブル三昧でした。
この頃はまだキャッシング枠もありましたので完全麻痺状態でした。
「無くなればまた借りればいい」
そんな依存症の典型とも云える生活を送っていました。

その後Uが店に現れたのは3千円を貸してからかなりの月日が経過した頃だと思います。
返済を迫ることはしませんでした。再会できたことが嬉しかったですね。
ただUの少し印象は変わっていたのを覚えています。

閉店後に近所の公園で2人で話したのを鮮明に記憶しています。
缶ビールを買ってベンチで飲みました。
「帰らないと子供や旦那が待ってるよ」
私は気になって質問しました。
Uは笑いながら
「離婚したよ」
「親権もあっち」
かなり軽く答えていたのを覚えています。
驚きはありましたが、こちらも同じような人間を多く見ていたので納得しました。

聞けば生活費などのお金の使い込み、旦那さん名義でのキャッシングなど全てバレて離婚になったそうです。
切欠は督促状や旦那さんへの債権者からの催告。
Uのことを全て信じ込んでいた旦那さんに問い詰められ、全て正直に話したそうです。

Uはそれでも
「これからは朝から通えるし」
「お金も自由に使える」
ふっきれた感じで笑いながら話していました。

ギャンブル依存で旦那さんと別れ、最愛の子供とも会えなくなる。
そんな状況下でもUにとってギャンブルの方が完全に上回っていました。

最後にUと会ったのは私が依存症末期の頃でした。
誰かと会話をすることすら面倒になっていた私は、Uのことや他の常連仲間もお金にしか見えませんでした。
こいつ昔貸した3千円のことも忘れてるし。
そんな器の小さい怒りすら感じていたと思います。
全てに置いて私の方から壁を作っていたと思います。
今としては考えられませんけどね。

Uとは女性の常連仲間では付き合いが一番長かったです。
2人で呑みに行く事もありましたが、関係は持ったことはありません。正直欲はありましたけどね。
今では連絡先すら知りませんが、未だに何処かで打っていると思います。
Uの依存症が現在も継続しているのなら、精神が崩壊しているかも知れません。
私より長いことになりますから。

ギャンブル依存で使ってはいけないお金を使い込んでしまい後悔する。
挙句人生すら崩壊させてしまう。
ギャンブルとはそういうものです。
異常な世界ですが、その人口は数万人規模だと思います。
今後も経ることなく増加するでしょう。

ギャンブルは何も生みません。
何もかも奪い去ります。

気付いた時には手遅れです。

一日でも早く引退して下さい。