今日は母の要望で

私たち家族が住んでいた家へ
 
父、母、弟、そして私
おじやおば、祖父が一緒の時もあった家
 
今は誰も住んでいない家
 
おじが死に
おばが死に
私が進学で家を去り
弟も進学で家を去り
祖父が死に
父と母が二人で暮らしていた家
 
8年前父が突然交通事故で亡くなって
しばらく母は一人で暮らしていたけれど
やがて一人暮しを別の場所に選んだ
私の住んでいる町であり、母の故郷
 
 
父は極端に無口な人だったけど
やさしかった
 
大好きだったのに
大好きだって一度も言えないまま
あの日突然死んでしまった
さよならも言えなかった
 
 
亡くなる少し前に
両親と私とでドライブに行った先で
なぜか私に買ってくれた小さなぬいぐるみ
もうすっかり大人だったのに
プレゼントなんて
 
 
形見になっちゃった
 
 
 
父はいつもどんなことを考えて生きていたんだろう…
 
近所の方のお身内が亡くなり
お通夜に参列して
家に戻る車の中で
飾っている熊が
ふと目に入って涙が出た
 
いつも不意に襲ってくる
この悲しみと涙のことを
書き留めておきたかった