【前書き】

今回の入院では、

テレビカード代節約のため

小説をたくさん持ち込み

読み漁った。

その影響であろう、

今回の入退院の記録は

小説風に書いてみようかと

ふと思ったサラ。


周りから

めんどくさいと思われる事は承知の上でも

やりたい事はやめられない性格である。

それに付き合ってくれる仲間に

感謝しなければならない。



【プロローグ】

サラはこのところ

目の不調を気にしていた。

ずいぶん前に

眼底出血を起こした後遺症と思うものの

乳がんの罹患経験があるため

当然、気にはなっていた。


入院にあたり

数冊の本を持ち込んだ。

久しぶりに本を読み始めると

普段に増して

違和感を感じた。

なんとなく読みにくいのだ。


単に目の問題か

脳に関係しているものか。


次回の乳腺外科の診察日に

主治医と相談しなければ

と思いつつ、

手術を控えているので

目のことは一旦忘れることに努めた。


【入院生活】

サラは、

乳がんのため失くした右胸を再建し

その後修正を繰り返していた。

今回が3回目の修正手術だ。


入院生活は、手術を含め

概ね良好であった。


サラ本人の体調以外のところで

いくつかのトラブルはあったものの

すぐに解決を見た。


入れ替わり立ち替わりする

同室の患者達は、

何度目かの入院のサラにとっても

今回はひときわ刺激的であった。


自分はコロナかもしれないと

騒ぎ出す同年代の女性。


韓国ドラマにありがちな女性刑務所の

牢名主のイメージと重なる容姿と言動の

サラよりほんの少し年下と思われる女性


もうすぐ90歳だという

どうやら痴呆が始まり出している女性


そんな彼女たちの言動については

サラには大きな影響は無かったので

ここでは省略しよう。

むしろ

彼女達と看護師達とのやり取りを

楽しんでいる節さえサラにはあった。


前日の診察で、

予想された退院日程の最短で

退院が決まっていた事を

むしろ残念にさえ思った。


同室の患者たちの様子を

もう少し観察してみたかったという

実に下世話な趣味とも言える。



いよいよ退院の朝。

退院当日の午前中に

ドレーンを抜いてもらう事になっていたため

その後すぐ出られるように

早々と支度をしていたところで


それは起きた。


「お食事が届きました〜

取りに来られる方、お越しくださ〜い」

と、いつもの年配の女性の声。

入院中、あまり動いていないものの

元来の食欲から食べ物につられ、

そそくさと

取りに行こうとした時だった。



……

サラの病室には

出入り口に向かって右側にトイレがある。


ちょうどその時は

左側に看護師さんがいて

ワゴンで作業をしていた。

どうやら今日1番で手術を受ける

90歳近い女性のフォローに来たようだ。


それを避けようと

右側にコースをとった直後

勢いよくトイレのドアが空いたその瞬間、

記憶が飛ぶような痛みを

右側頭部に感じる。


実際には記憶は飛んでいないのだが

かなりの痛みだったのは確かだ。

声も出ず、頭を抱えてしゃがみ込んだ。


それでも普段なら

しばらくうちに痛みも治り

たんこぶの一つで済む程度だ。


しかしここは病院。

そばにいた看護師達が見逃すはずもなく

たちまち数人に囲まれて

すぐベッドに横になるよう言われた。


血圧を測ると

最高血圧は140


これは普段100前後のサラにとっては

なかなか高めの数値といえる。

しかもこの日の朝は94という数字。


半ば無理矢理車椅子に乗せられ

頭部の撮影のためCT室へ。


その頃には痛みもすっかり治り、

大好物のイケメン若手医師と

話が盛り上がり楽しげに入室すると、

そこにいた技師たちに

「今日の一番乗りですよ!」

「ついてますね!」

などと軽口で迎えられた。


サラの様子を見て

大したことはないと判断しての事だろう。

そんな雰囲気に

罪悪感にも似た申し訳なさを感じた。


さて、

CTの結果、脳には問題なく

むしろ年齢より[若っぽい]脳と言われた。


この、若っぽい、が

バカっぽい、に聞こえて

聞き返して笑われたのは余談である。


ハプニングのため

退院時間は予定より遅れたものの、

無事退院できたサラ。 


頭を打ったことで、

「数日は

家で大人しく経過観察するように」

と無理な注文を出す医師に対して

子供のように素直に返事をして、

10日分の荷物と枕の詰まった

特大トランクを引きながら

病院を後にした。


そんな約束を守れるわけが無いのは

医師以外、

看護師でさえ誰もが知るとこだ。


すでに、この日の夕方には

また都内での用事のため

出かける事を決めていた。


さて、

10日ぶりに帰宅し、

荷物をあらかた片付けたところで、

夫に退院報告を忘れたのに気づき

電話をしようとしたら

なんと、

スマホが見つからないではないか。


家の電話はFAX専用にしてしまったため

鳴らして探すことも出来ない

もちろん何処にも連絡出来ない


しばらく探したが諦めて

自転車で最寄り駅へもどる。


自転車、車の運転は

次回外来診察まで禁止されているが

構っていられない。


駅には届いていなかったので

今度は最寄りの交番へ。


そこでも見つからず、

仕方なく紛失届を出しつつ、

交番の電話を借りてdocomoへ連絡。

携帯お探しサービスを利用するためだ


ただしこのサービスの難点は

表示された住所のピンポイントでなく

そこから半径300メートル以内という

なかなかの広範囲であること。


教えてもらった住所は

我が家とは違う町名だが、

お巡りさんが地図で調べると

半径300メートルには入っていた


そこでもう一度電話を借り夫に連絡。

事の経緯を説明し、

10分後にサラのスマホを鳴らすよう指示。


念の為5分はかけ続けるよう命令し、

お巡りさんにお礼を言って家路を急ぐ。


ぴったり10分後。


まだトランクが床に転がっている

自宅のクローゼット部屋から

鈍い振動音。


頼りない音を頼りに探し回ると、

それは

安物の服がぎっしり掛かった

ハンガーラックの下の隙間にあった。


電話を取り

これからすぐ出かけることを伝える。


妻の性格や行動を知り尽くしている夫は

「相変わらず忙しいな」

と電話口の向こうで苦笑いで送り出す。


愛情か諦めか。

おそらく後者であろうと

ほぼ確信しながらも

後ろ髪引かれることは無い。


スマホが見つかった事に

安堵するのも束の間、

再び出かける時間が迫っていた。

休む暇などない。


慌てて遅めの昼ご飯を詰め込み、

改めて支度を済ませ

急ぎ家を出た。



なかなかバタバタな退院日となったが

終わりよければ全てよし、

というところかもしれない。



【エピローグ】

偶然起きたハプニングによって

気にしていた脳のCTを撮れたのは

ついていると後から思った。


目の不具合は

やはり以前起こした眼底出血の後遺症の

飛蚊症と、

調節機能など年齢的なものであろう。


しかも今回の手術で

高額医療の限度をすでに超えていたため

脳のCTは実質無料。

こんなに素敵なトラブルなら大歓迎だ

と、

小さな幸せを感じたサラであった。



【あとがき】

人生は実に面白い。

悪い事もあれば良い事もある。

そんな事が濃縮された一日になった。


“今日も幸せありがとう”


この言葉は、サラにとって、

どんなハプニングも

後で振り返れば笑い話になる。

とにかく人生を楽しもう。

生きてる事に感謝しよう。

そう自分に言い聞かせる合言葉でもある。


🩷最後までお読みいただき

🩷ありがとうございました