有名な犬の十戒以外にも、犬に捧げられた言葉があります。それが【犬の聖歌】と呼ばれるものです。






この世の中では親友でさえ、あなたを裏切ったり 敵になったりします。

手塩にかけて育て上げた子供たちも、育てた恩 を忘れてしまうかも知れません。

私たちが信頼する最も身近で親しい人も、信用を翻すかも知れ ません。金銭は失われるかも知れない。 一番必要としている時に、手元にはないかも知 れません。

名声はたった一度の思慮に欠けた行動によって 消えてしまうかも知れません。 うまく行っているときの私たちの栄誉に対してひざ まずいていた人々は、失敗の暗雲がわたしたち の頭の上を覆ったとたんに、恨めしく石を投げつ けてくるかも知れません。

この利己的な世の中で人が手に入れられる、 絶対にわがままでなく、決して見捨てず、決して 恩知らずでも不誠実でもない友こそ、犬なので す。

陪審員の皆さん、富める時も貧しき時も、健や かなる時も病める時も傍にいてくれるのが、あな たの犬なのです。

寒々しい風が吹き付けても、雪が激しく降っても 、飼い主のそばならば冷たい土の上でも眠ること でしょう。



与えるべき食べ物がなくても、手にキスをしてく れることでしょう。

世の中の荒事によって負った傷や腫物を舐めてく れることでしょう。

貧しき飼い主であろうとも、王族であるかのよう に安眠を守ってくれます。

友が一人残らずあなたを見捨てようとも、犬は見 捨てはしません。富が翼を持って飛び去り、 名声が地に堕ちても、犬は天を旅する太陽のよ うに変わることなくあなたを愛してくれます。

幸運に見放されて、友人も家もない世の果てに 追いやられても、忠実な犬は共にあること以外 の何も望まず、危険から守り、敵と戦うのです。

すべての終わりが来て、死が飼い主の身を包み 冷たい土の下に埋葬されるとき、人々が立ち去 った墓には前の足の間に頭を垂れた気高い犬が います。

彼の眼は悲しみにくれながらも、油断なく注意を 払い、死した飼い主にさえも誠実と真実を捧げ ているのです。