昆虫針 ~なぜ標本に針を刺すのか~ | 虫けら屋の「ちょっと虫採り行ってくる!」

(※前回の昆虫針紹介記事はこちら→【昆虫針】)。
 

…ということで、今回は
なぜ標本に針を刺すのか?
というお話。


普段から当たり前のように標本を扱っている人からすれば
標本に針を刺すというのは当然のことなのですが、
そうでない方からすると、かなりの “壁” のようで、
「針を刺さないで標本にしたい」という意見を時々見かけます。
 

針を刺すという行為が非常に残酷に思え、
どうしても抵抗があるとか。


では、なぜ標本に針を刺すのでしょうか?


昆虫標本というのは、

元々ただ作って飾っておくためのものではなく、

調べて、研究するためのものです。

 

それは今でも同じで、

例えばその虫を種類を調べたいと思ったときに、

様々な部分を調べる必要 があり、

虫の裏側(腹面)を見る必要があることも珍しくありません。

 

しかし、乾燥した虫の標本は壊れやすく、

細い足先や触角は簡単に折れてしまいますし、

チョウのハネなどはすぐに破れてしまいます。

 

そんな時、標本に刺してある針を摘まめば、

虫自体には一切手を触れずに好きな角度から観察することができるのです。


 

しかし、もし標本に針を刺していない場合、

虫自体を掴んで動かさなくてはいけません。

 

そうなると、先程も書いたとおり、

掴んだ拍子に脚が折れてしまったり、
チョウなど鱗粉はすぐ剥がれてしまいますし、
翅も簡単に破れてしまいます。

ちょっと移動させるだけで、
クワガタのフ節(脚の先)だって折れてしまうかもしれません。
 

…そう、

研究などで使う度・動かす度に
標本がボロボロになっていってしまう可能性が高い
のです。

しかし、
標本に針を刺せば、針を摘まむことで
虫に直接触れずに標本を扱うことができるようになり、
結果、標本を破損させる可能性がグンと下がるのです。



 

つまり、標本の針を刺すというのは、
決して残酷行為を楽しんでいるのではなく
標本を壊さずに観察する、大切にする ために行っているのです。

 

 


…さて、

「標本に針を刺すのは残酷だから、自分は刺さずに作る」という方、
標本を移動・観察したりする際の “破損の可能性” は考えておりますか?