東京女子プロレスのYouTubeチャンネルのでじもん対談と週プロのインタビュー、どちらも先日行われた水色ベルト前の鈴芽選手をクローズアップしたものだった。東京女子は旗揚げの時から週プロ等でチェックはしていたが、SNSで情報を追いかけてみたり、ユニバースで試合をちゃんとみるようになったのは昨年あたりからだったので、対談もインタビュー記事も非常に興味深かった。



鈴芽選手のイメージは『真面目で常識人』『(スペース等で)相手の話を待ったり、しっかり聴く気遣いの人』という2つだった。どちらも彼女が高校卒業して社会人としての経験があるからなのだろうと思っていた。勿論それはかなり大きいと思うが、時折彼女から感じる不安定さのようなものの正体(原因)はよく分からなかった。しかしインタビューと対談でその部分も納得いった。


インタビューで語られていたが、彼女は本来ネガティブだ、と。言い方を変えると、自己肯定感が低かったり、自分に自信がないというタイプという事になるのだろう。しかし『鈴芽』として表舞台に立っている時はそうした本来のネガティブな自分とはまた違う自分になっていて、そのズレが彼女から感じる不安定さの正体なのだろう。


今も自信満々でリングに上がっているわけではないと思うが、昨夏の辰巳リカ戦から少しずつ気持ちに変化もあったのだろう。その証拠にというか、夏以降の彼女はがむしゃらさの中にも冷静さを感じるようになった。それが顕著に感じられたのが今年のでじもん対決。

どこでも攻められるぞというような序盤から、狙いを定めての一点集中攻撃。自分の中でしっかり試合を組み立て、それを着実に実行できていたように見えた。



今回の水色ベルトに関していえば決して時期尚早とは思わなかったが、奪取した後ベルトにどんな価値観を付けていきたいかが見えなかったので辰巳リカ選手に防衛してもらいたいと思った。結果もそうなった。


もしこれが白ベルトなら「辰巳リカ選手が持っているから取りたいと思った」でも良かったと思うけれど、インターナショナルは巻く選手が色付けをしていかなければならないベルトなので、その理由だけでは弱かったんじゃないかな?

鈴芽選手の辰巳リカ選手に対する気持ちを否定するとかではなく、ベルトに対する執着心が結果に直結したという話。



でじもん対談は非常に純粋に楽しかった。

遠藤有栖選手のちょっとおバカな感じの明るさや周りの目なんか関係なしに自分の感情をさらけ出す様子は、鈴芽選手にはうらやましく見えつつもそれ以上に笑わせてくれて大きな支えになっているという雰囲気が伝わってきて非常に微笑ましかった。あとは遠藤有栖選手が一皮むけるキッカケさえあれば、タッグベルトをでじもんが巻くのも遠くないと思う。そのキッカケは対戦相手からかもしれないし、タッグで試合をしていくなかでパートナーの鈴芽選手からかもしれない。



分析じみた勝手な事をグダグダと書いてきたが最後に1つ。

鈴芽選手に限った話ではないが、今回は鈴芽選手がシングルをしてもらえたらと思う選手がいる。実現はかなり難しいと思うし、実力差は歴然かもしれないが、我闘雲舞のボスであるさくらえみ選手。


東女の現在のトップは瑞希選手だけど、彼女のプロレスラーとしての基礎の部分や自由な閃きは恐らく里歩選手らとともにさくらえみ選手のもとで培われた部分が非常に大きいというのは、当時から知るお客さんには周知の事実だと思う。白ベルトとタッグを取った直後のノリに乗っている状態の瑞希選手ですら勝てなかった実力者だから、今の鈴芽選手は「結局、手の上で転がされただけだった」と試合後に感じるかもしれないが、とんでもない経験値を得られると思う。



またさくらえみ選手はキャリア25年以上の大ベテランにもかかわらず、未だに進化を続けているというのも凄いところ。少し前にアメリカだかメキシコだかでDPWのベルトを賭けて坂井澄江選手と試合をしていたが、その試合の中で昔からさくらえみ選手を見てきたお客さんも初めて見る技を出してきた。男子も含め普通はそれくらいのキャリアの選手はとうに進化が止まっている。


昨年はでじもんvsおれぱんがあったが、シングルは難しくてもでじもんvsリセットならもしかしたら…と思う。さくらえみ選手のスケジュールと甲田さんがOKを出すかの調整が難しいけれど。


何やかんや書いたが、今回のでじもん対談と週プロインタビューはただ興味深かったというだけでなく、『プロレスラー・鈴芽』というのにとどまらず1人の人間として非常に魅力にあふれた人だと感じた。