◆それにしても、自分なんかはこのブログにて何らかの本を取り上げ、「面白い!」だの「つまらん!」なんて事を好き勝手に語っているわけだが、しかし今日ふと気がついた。そもそも人生に於いて「超傑作!」なんて叫びたくなるような本なんて、そんなに多数あるわけがないのである。せいぜい10冊程度なんではないかな?多く見積もったとしても20冊程度だろう。あとは言ってみれば「普通に」面白い本なんだと思う。しかし、この「普通に」面白いという点が結構大事なのではないかな?そんなに超傑作ばかり探し求めていては疲れてしまう。「普通に」面白けりゃ充分じゃん!‥‥と割り切って、もっと気軽に読書した方がよろしかろう。

さて、入手困難な幻の名作‥‥というものがミステリの世界にはある。つまり大昔に一度出たのだが、しばらくしたら絶版になってしまい、その後は何故か全く復刊や再刊されなかったために読むことが出来なくなってしまった‥‥といったもの。よって、この類いのものは古書市場でとんでもない高値が付いたりもする。例えば海外ミステリで言えば『マクロイ/幽霊の2/3』『カ-/幽霊屋敷』『ボワロ&ナルスジャック/技師は数字を愛しすぎた』‥‥等。創元推理文庫版『カ-/幽霊屋敷』なんて昨年ようやく新訳再刊されたが、これなんて60年ぶりくらいの再刊なんじゃないのかな?少なくとも自分が小学校2~3年の頃には既に絶版になっていたはずである。そしてその後は古書市場でも入手困難本の最たるものであった。こうした入手困難な幻の傑作は他にも結構あるが、ただ2000年代に入ってからの復刊ブ-ムにより、少なくとも前記の3冊は現在では創元推理文庫で復刊されたり新訳で再刊されたりしている。ちなみにこの『カ-/幽霊屋敷』だが、自分は1990年代後半の早川ポケミス復刊フェアにて出た『震えない男』(内容は『幽霊屋敷』と同一である)で入手して読んだが、正直なところカ-の作品の中ではかなり物足りないレベルだという印象だった。

また、華々しくデビュ-して相当騒がれたにもかかわらず、その後は新作が全然出ない海外作家もいる。あれは確か1980年代だったと思うのだが、特に名は伏すが、海外の某ミステリ作家の某作品が創元推理文庫から初めて刊行され、結構な話題となった。自分も購入して読んでみたところ、大傑作というほどではなかったものの、「それなりには」面白くて楽しめた記憶がある。しかしその作家の他の作品が、その後、全然出版されない。「あの作品1つしか書かなかったんだろか?」「新たな作品は書いていないのかな?」なんて思っているうちに、自分もその作家の事なんてすっかり忘れてしまった。すると、つい最近ある方のブログにて知ったのだが、その某作家の他の作品が、最近某文庫で出版されたそうなのである。う~ん‥‥特に話題にもならなかったので全然知らなかった。老舗の創元推理文庫とか早川文庫から出たわけでもなかったので、これでは自分も気がつかなくて当然だろう。ちょうど地元の図書館にあったので借りてみたのだが、もう冒頭20ペ-ジくらいを読んだだけで「とてつもなく」つまらなく、読むのを中断してしまった。たぶんこの本、読まずに返却してしまうと思う。「きちんと最後まで読めば最終的に面白くなるのかも?」とも思ったが、これはやはり読んでてしんどい‥‥。そもそも傑作たるものは、冒頭の20ペ-ジを読んだ時点で「凡作とは何かが違う‥‥」といった雰囲気があるものなのである。しかしこの作品にはそれが全く感じられなかった。何より「頑張って最後まで読んだけど、結局はつまらなかった」となった場合、これはもう時間をドブに捨ててしまったようなものではないか。途中で見切りをつける勇気も時には大切である。

で、これは結構マニアたちの間で言われている事なのだが、まず前者の「何十年も絶版になっていて読めない⇒古書価格が高騰している」といった類いの作品。マニアは必死になって古書店を探し回り、とんでもない高値ではあるが、古書店で見つけて入手出来る場合もある。しかしそうした作品には、実は「散々苦労して古書店を探し回り、高値を払ってようやく手に入れたのに、読んでみたら全然面白くない」という共通点がある(笑)。落ち着いて冷静に考えてみれば、それは当然の事と言える。その作品がそれなりに面白いのだとしたら、出版元だってそんなに長らく絶版にしたりはしないだろうよ。その証拠に『Yの悲劇』や『そして誰もいなくなった』や『占星術殺人事件』や『十角館の殺人』なんて、過去に一度も絶版にはなっていない。常に容易に入手可能である。傑作とは本来そういうものである。

また、後者の「新たな作品が翻訳されませんな‥‥」というケ-スだが、結論から言うと、これも「実はつまらないから」というケ-スが多い。そりゃそうだ。出版社だって「これは傑作だ!売れるっ!」と思ったら、その作家の他の作品も続々と翻訳して出版するはずである。なのに出版しないという事は、出版元も「これはつまらない。売れない‥‥」と判断したからなのだろう。

先ほど挙げた「(今では入手可能だが)往年の入手困難本」も、復刊や再刊された時に読んでみたら、まあ、どれも大したことはなく、復刊や再刊前に必死に古書店を探し回って高額入手したマニアの方々には「御苦労様でした」と言いたいところである。

ただ、あれらの中で『ボワロ&ナルスジャック/技師は数字を愛しすぎた』(創元推理文庫)だけは、今ではちょいと気に入っている。決して「傑作!」と騒ぎ立てるようなものではないし、自分も復刊後に初めて読んだ時は「なんだ、こんなもんか‥‥」程度の印象しか持たなかったのだが、その後に暇潰し的に再読してみたら、なんか不思議な魅力を感じた。何でも世間では、この作品は「密室もの」として有名らしい。というわけで自分も「密室ものの傑作」なんて事を期待して読んだのがいけなかったのかもしれない。なんせ自分は密室&不可能犯罪の巨匠たるカ-の愛好家なのである。この程度のトリックで「おおお‥‥」とはなりませんよ。だから、その密室トリック自体が大したことなかったので、期待外れ‥‥なんて単純に考えてしまったのだろう。しかし再読してみて気がついたのだが、これって実は「お話」自体がなかなか面白いのである。そうか‥‥これって密室トリックをメインにした本格ミステリとして読んではいけないのだな。あくまで「お話」を楽しむべき「サスペンス・ミステリ」なのであろう。そういえば大昔の創元推理文庫では、この作品には「猫」マ-クが付いていた(昔の創元推理文庫は内容によってマ-ク分けされており、「猫」マ-クは「サスペンスもの」であった)。特にお薦め本というわけではないのだが、それこそ充分「普通に」面白い。「なんか暇潰しに読むような本が見当たらない。困った‥‥」なんて時に、図書館辺りで借りてみてはいかがだろうか。

 

 

◆8月9日(金)の自宅音楽鑑賞。

 

↓CD

旧PHILIPS盤、「オ-パス蔵」復刻盤、「タワ-」復刻盤‥‥等でも持っているが、これはつい最近出た、オランダのメンゲルベルク協会による最新リマスタ-盤。

 

 

↓CD

もう何種類ものリマスタ-盤で所有しているため、どの盤がどんな音質だったか、わけがわからなくなってきた。

 

 

↓CD

ブルックナ-の第1を聴くのであれば、ヨッフムの旧盤(DG)か新盤(旧EMI)あたりを使うのがベストであることは重々承知しているのだが、この日はちょいとゴ-ジャス・サウンドに浸りたくなったので、敢えてカラヤン&BPO盤を使った。ちなみにこの音盤、初CD化の時は第1+第5のカップリング2枚組だった。

 

 

↓CD

普段だと旧EMIのHS-2088リマスタ-盤で聴いているのだが、この日はWARNERから再発された2014年リマスタ-盤を使ってみた。

 

 

↓レコ

発売当時はあまり話題にならなかった音盤だが、今になってこうしてLPレコで聴いてみると、演奏録音共にちょっと興味深い。このカム&BPO盤(DG)はCDでは所有していないが、この国内再発廉価盤のLPレコで充分。ジャケットも素敵だ。