◆ガストン・ルル-といえば?‥‥という質問をすれば、その人がミステリ・マニアかどうかはすぐにわかる。即座に「『黄色い部屋』の作者ねっ」という答えが返って来れば、その人は確実にミステリ・マニアだし、「確か『オペラ座の怪人』の原作者だったような‥‥」という答えが返って来たら、その人は確実にミステリ・マニアではない。ま、いずれにしてもガストン・ルル-も今となっては『オペラ座の怪人』の原作者として有名‥‥といった程度であろう。
それにしても、かつてはミステリ史に残る大傑作として、ディクスン・カ-や乱歩を始めとするミステリ作家達が大絶賛していた『黄色い部屋』だけど、もう今なんて読まれてもいないんじゃなかろうか?「『城塚翡翠』は読んだことあるけど、『黄色い部屋』なんて読んだことないぞ」というのが現在の日本ミステリ界の現状だと思う。自分なんかは、ああいう古典的ミステリの香りに満ち溢れた作品は大好きなんだけど、しかし今となってはやはり古く、単なる古典に過ぎないと思う‥‥‥なんて言ったら暴論か?
しかし『オペラ座の怪人』も映画や演劇の影響で最近では随分と有名になってしまったが、自分が小学校低学年の時点では、ルル-といえば何といっても『黄色い部屋』だった。『オペラ座の怪人』なんて「ルル-のその他の作品の中の1つ」程度の評価だったと記憶している。何しろ自分が当時読んだ『黄色い部屋』の解説か何かに「ルル-には他にも『オペラ座の怪人』といった作品があるが、これはあまり出来が良いとは言えない」なんて書かれていたくらいなんですから(笑)。『オペラ座の怪人』って、少なくとも当時はその程度の評価だった。自分なんかはそれが刷り込まれてしまったもんだから、『オペラ座の怪人』にはず~っと手を出さなかった。それが後に演劇や映画で大ヒットしたもんだから、自分も40歳くらいになってからようやく文庫版を買った感じ。
ただ、ルル-の書いた『オペラ座の怪人』の原作そのものは、やはり大したことはないのでは?‥‥なんて思ったりもしている。あれって確かに映画とか演劇にすると「おおお~っ‥‥」といったレベルの傑作になると思うのだが、小説で読むとなると「はて‥‥?」といった程度のものなんじゃないかな?事実『オペラ座の怪人』の映画や演劇は大ヒットしたけど、あれをルル-の原作で読んで「感激したっ!」という意見は、これまで自分は聞いたことがない。
さて、実はルル-にはもう1つ「有名ではあるが、意外に読んでいる人は少ない」といった類いの作品がある。それは『黒衣婦人の香り』というもの(注・『夫人』と表記するヴァ-ジョンもある)。自分が『黄色い部屋』を初めて読んだのは「小学校の2年生くらいにジュニア版で」だったが、その本の解説に「『黄色い部屋』には、続編に該当する『黒衣婦人の香り』という作品がある」なんて書かれていたんですね。
しかしその当時は『黒衣婦人の香り』なんて、ジュニア版は勿論のこと、文庫版すら出ていなかったので、当時の自分は読むことが出来なかった。だから、ず~っと気になっていた。すると、確か1979年(=自分は高校1年)の春先だったと思うんですが、この『黒衣婦人の香り』が早川から文庫化されたのですな。書店の新刊コ-ナ-で見掛けて「おおっ‥‥」と感激して早速購入。
ところが、これがどうもピンと来なかった。なんか面白くない‥‥。読んでてとにかく退屈する。というわけで、確か3割くらい読んだところで挫折。そしてその後も結局は完読せぬまま。まあ、読んだ当時は高校1年の春先という事で、自分にはその良さがわからなかったという可能性は充分にあるのだが、ただ、様々なミステリ・ガイドやミステリ評論を読んでいても「『黒衣婦人の香り』は傑作である!」的な意見にはお目にかかったことがないので、やはりつまらぬ作品なんじゃないのかな?
というわけで、ルル-って結局は『黄色い部屋』だけの人‥‥って感じなのかもしれない。あ‥‥それから随分経ってからなんですが、創元推理文庫から『ガストン・ルル-の恐怖夜話』って短編集が出て、これはそこそこ面白かったような記憶がある。まあ、あくまで「そこそこ」でしたけど。
◆数ヵ月くらい前から書店の文庫コ-ナ-にて「ででんっ!」と平積みになっている本で、ずっと気になっているものがある。宣伝文句なんかを見ても、何やら凄そうな小説。あれはそんなに面白いんだろか?なんせ未知の作家なので、どうも手を出しづらい。しかも文庫版で数冊に渡るような長い長い物語のようなのですよ。ここ数年間、読書スランプ状態の自分に、そんな長い物語を果たして読み切れるのかと思うと、ますます手を出しづらい。そんな長大な作品をせっせと頑張って読むくらいなら、他に気になっている新刊本『今村昌弘/明智恭介の奔走』とか『M・エドワ-ズ/モルグ館の客人』等の無難な作品を読んだ方がいいんだろか?まあ、どれも図書館で借りるとしたら、かなり待つ羽目になるだろうけど。数年前だったら、ちょっと気になる本があれば、即座に購入していたものなんだけどな‥‥。ちなみに冒頭で挙げた「ででんっ!‥‥と平積み」の長大な作品というのは『三体』というタイトルです。読まれた方、いらっしゃいますか?
◆8月6日(火)の自宅音楽鑑賞。
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