◆かなり昔の話になりますが、1994年は江戸川乱歩生誕100周年記念という事で、様々なイベントがありました。特に評判になったのが、どこかの大手が莫大な費用をかけて製作した映画『RAMPO』。そして、そちらがあまりに騒がれてしまったため、ちょっと隠れた存在になってしまいましたけど、それよりも遥かに低予算で(確か)TBS&バンダイ・ビジュアルが製作した映画『屋根裏の散歩者』『押絵と旅する男』なんてものもありました。大手が高予算で作った『RAMPO』は世間で凄く話題にはなっていましたが、なんかちらほら聞いたところでは、とてつもなく評判が悪かった。「とてつもない駄作っ!」と正面から貶していた映画評論家もいたほど。それに対し、TBS&バンダイ・ビジュアルが遥かに低予算で作った『屋根裏の散歩者』と『押絵と旅する男』は、評論家や「映画通」の人達が「『RAMPO』なんかより遥かに見事っ!」と絶賛しており、自分もTVで予告編を見た感じでは「おっ‥‥これはっ‥‥」と感じるところがあったんですよね。少なくともその予告編を観ただけで「これって乱歩原作の持ち味をきちんとわかっている人が作った映画だな‥‥」という事がよ~くわかった。

そこで自分はそちらを観に行くことにしたわけです。当時はまだ今のようなネット社会ではなかったので、あの『ぴあ』(懐かしい!)を買って上映時間や上映映画館をチェック。1994年の3月に新宿の小規模かつマニアックな映画館で観た事をよ~く覚えている。メジャ-な『RAMPO』はあちこちの映画館で大々的に上映されていたのに対し、マイナ-な『屋根裏』『押絵』は数少ない映画館でしか上映されていなかったのです。ただ、『屋根裏』と『押絵』は同じ映画館で上映されたものの、『屋根裏の散歩者』が日中に3回くらいの上映だったのに対し、『押絵と旅する男』はかなり夜遅くの時間帯に1回上映されるだけ。はて?この扱いの違いは何なんだろ?よって、自分は『押絵』は諦め、『屋根裏』だけに絞りました。

当日映画館に出向いたら、めっちゃ混み!自分が観たのは14時くらいから上映された回でしたが、(自分は座れましたけど)満席だった上、後方には立ち見客もいたような記憶があります。そしてカップル客が多かったですよ(笑)。

さて、前述の通り自分が観たのは『屋根裏の散歩者』の方なんですが、これが予想していた以上に良かった。監督は実相寺昭雄で主役(=犯人)は三上博史。そして若き日の下宿住まいの明智小五郎は島田久作が演じていました。1994年という事で、三上博史も島田久作も若かったな~。まあ、監督が実相寺昭雄という時点で、これはある程度の成功は約束されたようなもの。そして島田久作は上手かった!自分はこれを観て島田久作という役者のファンになってしまったほど。というわけで、この実相寺昭雄版『屋根裏』、自分的には凄く気に入ってしまい、後にDVDでも購入しました。

問題はもう1つの『押絵と旅する男』なんですよ。これって当時VHS化され、自分はそれをレンタルビデオ店で借りて観たんですが、こちらも素晴らしかった。ていうか、自分としては前述『屋根裏』よりも、この『押絵』の方が映画としての完成度は高かったと思う。主役は浜村淳だったかな?そして他には天本英世とか鷲尾いさ子が出ていた記憶がある。ラストの蜃気楼シ-ンなんて、バックの音楽も含めて、実に素晴らしいと思ったもんです。ところがこれ、その後は何故かDVD化されなかった。VHSは出たのにDVDが出ない?う~ん‥‥何故なんだろ?DVDが出たら、これも絶対に買ったんだけどな。

↓ちなみにこれがそのVHS。画像はネットからお借りしました。

 

 

↓その中の1シ-ン。これも画像はネットからお借りしました。

 

 

↓これがラストの蜃気楼シ-ン。これも画像はネットからお借りしました。

 

 

ちなみに「通」からは散々駄作呼ばわりされた『RAMPO』も、当時VHSでレンタルビデオで借りて観たんですが、確かに「こ、これはちょっと‥‥」って感じでしたね(笑)。「これをお金を払った観客に観せますかい?」と言いたくなるようなレベル。そういえば、あれだけ話題になったのに、これもVHS化はされたけど、不思議とDVD化されなかったな‥‥。何故なんだろ?

添付画像はこれまたネットからお借りしました。

 

 

実はこの『RAMPO』では、一箇所だけ「おお~っ」と感心したシ-ンがあったんですよ。他はぐちゃぐちゃだったんだけど(ずっと呆れながら観ていた)、この「ある一箇所」だけは映像&音楽共にとてつもなく素晴らしかったわけです。よって、自分は「ここだけのために」DVDを買ってもいいかな‥‥なんて思ったりもしたんですが、結局は依然としてDVDは発売されていないようですね。前述『押絵』もそうなんだけど、VHSは出たのにDVDが出ないのは何故?

ところでその生誕100周年記念の1994年に、有名な作家や評論家に対して「乱歩作品のベストワンは?」というアンケ-ト企画があったんです。これって一般のファン対象ではなく、あくまでプロの作家や評論家を対象としたアンケ-ト‥‥ってのがポイント。その結果を見てびっくりだったんですが、4割くらいの人が『押絵と旅する男』をトップに挙げていたんですね。ちょっと意外でした。確かに『押絵と旅する男』は名作だと思うのですが、「う~ん‥‥乱歩作品ベストワンっ!‥‥てほどか?」と自分なんかは思うんですけど‥‥。

ちなみに人から聞いた話ですが、乱歩の『押絵と旅する男』って、数年前に某社の高校の国語教科書に収録されたらしいです。つまり文学的にも評価が高い‥‥って事なのかな?まあ、確かに乱歩作品で高校国語教科書に収録‥‥となれば、これはもう『押絵』しかないとは思います。まさか『芋虫』や『赤い部屋』や『畸形の天女』を載せるわけにはいかんでしょ。

 

◆6月21日(金)の自宅音楽鑑賞。

 

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