以前のブログで絶賛大推薦した奥泉光の「クワコ-」シリ-ズ。現時点で3巻まで出ているが(注・それ以前に出た番外編的な『モ-ダルな事象』を含めるとすれば、全部で4冊出ていることになる)、この3冊を改めて読み返すことにした。

 

 

もう何度目?‥‥という読み返しになるが、しかし絶賛大推薦してしまったために却って不安になってしまったりもする。あれだけ絶賛大推薦してしまった以上、ブロ友さん達が「妖美(よみ)さんが絶賛していたので読んでみたんだけど、なんか全然面白くなかった‥‥」なんて事態になっても困るので、取り敢えず再読して面白さを再確認したかったのである。

このたびの再読の結果について書く前に、この奥泉光という作者についてちょっと触れておきたい。「クワコ-」シリ-ズがちょいとおバカっぽい小説なので、「この奥泉光って、なんかふざけた作家か?」と思われるかもしれないが、いやいやいやいや、奥泉光の作家としての業績は凄いのですよ。芥川賞とか野間文芸賞とか谷崎潤一郎賞とか柴田錬三郎賞とか毎日出版文化賞とか、そうした文学賞をあれこれ受賞している。そして本職は大学教授なんですな。つまりきっちり純文学している学者作家さんが、ちょっと肩の力を抜いて「たまには笑えるものでも書いてみましょうか?」とチャレンジしたのが、この「クワコ-」シリ-ズなんですよ。

ちなみにこの「クワコ-」シリ-ズ、ネットで見てみたら、恐ろしいまでに評価が分かれている。自分同様に大絶賛している人がいるかと思いきや、「全然面白くなかった」と貶しまくっている人もいる。以前も書いたが、この「クワコ-」シリ-ズって相当「読者を選ぶ」というか、笑いのツボが合うかどうか?‥‥が重要ポイントとなる。笑いのツボが合えば「こんな面白い小説は読んだことが無い!」になるだろうし、合わなければ「どこが面白いのかさっぱりわからん!」になるんだと思う。自分は前者。この「クワコ-」シリ-ズの笑いのツボは自分には直球ど真ん中&どストライク的なところがあり、本当に何度読んでも楽しめる。永久に「クワコ-・ワ-ルド」に浸っていたい気分だ~‥‥というくらい好きなんである。もう何度目の読み返しになるかは忘れたが、このたびの読み返しでも「1ペ-ジの中で少なくとも五度は笑える」みたいな感じである。それでいて、ミステリとしても意外に上質なんだな。もしこのたび読まれた方々がいらしたらお尋ねしたいのですが、真相とかきっちり推理出来ました?見抜けました?自分は1作たりとも見抜けませんでしたが。そのくらい、何気にミステリとしても実はレベル高いですよ。尤も事件を解決するのは主人公の桑潟幸一准教授ではなく、常に文芸部所属のホ-ムレス女子大生「ジンジン」なんですけどね(ジンジンのキャラ、最高!)。

さて、このたびの再読で新たに感じたことを。このシリ-ズは次のような構成になっている。

 

第1巻『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』

(1)呪われた研究室

(2)盗まれた手紙

(3)森娘の秘密

第2巻『黄色い水着の謎』

(1)期末テストの怪

(2)黄色い水着の謎

第3巻『ゆるキャラの恐怖』

(1)ゆるキャラの恐怖

(2)地下迷宮の幻影

 

第1巻収録の「(1)呪われた研究室」「(2)盗まれた手紙」は全く問題なく楽しめると思う。しかし問題は「(3)森娘の秘密」なんだな‥‥。これがネック。(1)(2)に比べるとちょっと面白さや笑いの点で落ちる。いや、自分的には充分力作だと思うんですが、やはり(1)(2)に比べるとちょっと笑いの「キレ」が鈍い。なんか変にしつこい。展開もスロ-。よって、読んでて退屈してしまう読者もいらっしゃるかもしれない。

となると、この「(3)森娘の秘密」を読んで「クワコ-・シリ-ズは、もうここまででいいや‥‥」と思ってしまう方々がいらっしゃるのではないか?‥‥というのが、自分としてはとてつもなく不安なのである。

というのも、その後の第2巻『黄色い水着の謎』に収録されている「(1)期末テストの怪」と「(2)黄色い水着の謎」の二作が揃って大傑作なのである。たぶんシリ-ズ最高傑作はこの2つであろう‥‥‥と、自分的には思っている。

つまり、もし第1巻収録の「(3)森娘の秘密」が「なんかイマイチ‥‥」と感じたとしても、何とか第2巻までは我慢して引き続き読み続けて欲しいのである。この第2巻までは何とか我慢して辿り着いて欲しいのである。「クワコ-・シリ-ズ」の評価は、あくまで第2巻の『黄色い水着の謎』までを読み終えてから下して欲しいものだ‥‥‥と思っているわけです。

今回言いたかったことはそれです、はい。

 

◆9月22日(金)の自宅音楽鑑賞。