ここ数日、チェスタトンの読み返しをしている。

ミステリの世界ではカーと並んで自分が愛読している作家。

 

 

チェスタトンといえば、メインは創元推理文庫から出ている

★『ブラウン神父の童心』

★『ブラウン神父の知恵』

★『ブラウン神父の不信』

★『ブラウン神父の秘密』

★『ブラウン神父の醜聞』

といったブラウン神父シリーズ。

更には同じ創元推理文庫の

★『奇商クラブ』

★『木曜の男』

★『詩人と狂人たち』

★『ポンド氏の逆説』

といったあたり。

他の出版社からも2~3の作品が翻訳されていますけど、メインはやはりこの辺でしょう。

ちなみに純粋な長編は『木曜の男』のみであり、あとはどれも連作短編集みたいな感じです。

 

 

ミステリの古典であり、傑作粒揃い、少なくとも自分のツボに大いにはまっている作品だとは思うのですが、問題点もある。

チェスタトンの文章が超難解である上、翻訳も昔ながらのものをそのまま用いているため、「何を言ってるんだか意味不明」みたいな箇所が多々あるのですな。

まあ、自分の読解力不足‥‥っていうのもあるんでしょうが。

 

 

ここ数年間で、ちくま文庫から『童心』と『知恵』の新訳が、早川文庫から『童心』の新訳が『無垢なる冒険』ってタイトル(だったか?)で出まして、こちらは創元推理文庫版に比べて相当読みやすくなっています。

ただ、ちくまも早川もそこでストップしてしまっているので、ブラウン神父ものの全体像をつかむとしたら、依然として「読みづらい」創元版に頼るしかない。

自分としてはちくま文庫やハヤカワ文庫から引き続き新訳が出て欲しいところなのですが、これはちょっと期待薄‥‥って感じかな。

 

 

なお、創元推理文庫も最近は「リニューアル!」を謳ってチェスタトンを再刊していますけど、これは単に装丁を変えただけであり、新訳ではありません。

 

 

さて、今回読み返したのは

『童心』から「青い十字架」「奇妙な足音」「イズレイル・ガウの誉れ」。

『不信』から「天の矢」「犬のお告げ」「ダーナウェイ家の呪い」「ギデオン・ワイズの亡霊」。

 

 

自分としては『秘密』『醜聞』の読み返しをしたかったのですが、本の山のどこにあるのかがわからず、見つけることができませんでした。

よって、仕方なく『童心』『不信』の読み返しをしていた感じ。

 

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「ブラウン神父もの」未読の人にアドバイスしておきますと、まずは第1作目の『童心』、それも収録順に「青い十字架」⇨「秘密の庭」⇨「奇妙な足音」⇨「飛ぶ星」⇨「見えない男」までは、この順で読むべきです。

これは絶対ですね。絶対不可欠!

しかしその後となりますと、この5冊の短編集に収録された短編をどういう順序で読んでも、差し障りはないと思っています。

少なくとも致命傷的なマイナス面はない。

タイトル見て「面白そう!」と感じたものを拾い読みしていけばいいんじゃないでしょうか?

 

 

さて、ブラウン神父ものといえば、世間で「傑作!」とされている代表作としては、どうやら「奇妙な足音」「見えない男」「犬のお告げ」が挙げられるようです。

これらがベスト3的扱いを受けている。

 

 

ちなみに「奇妙な足音」と「見えない男」は『童心』に、「犬のお告げ」は『不信』に収録されています。

 

 

しかし、う~ん‥‥自分としては「見えない男」は確かに優れものと思うんですが、「奇妙な足音」や「犬のお告げ」は正直どうもピンと来ないのですな。

特に「犬のお告げ」は「どこが面白いの?」って正直思っており、それは今回再読しても印象は変わらず。

 

 

もし自分がベスト3を選ぶとしたら、『童心』収録の「秘密の庭」「見えない男」がトップ2。

「秘密の庭」に関しては以前も取り上げたことがあります。

 

 

あとは‥‥ちょっとタイトルは忘れてしまいましたが、少なくとも「犬のお告げ」や「奇妙な足音」だったら、むしろこちらの方が‥‥という作品が10個はあるぞ。

例えば前述の通り「犬のお告げ」は『不信』に収録されていますけど、同じ『不信』収録作品ならば「天の矢」「翼ある剣」の方が遥かに面白いと思うんですが、どんなもんでしょ?

 

 

ただ、最初に書いた通り、チェスタトンの文章ってとにかく難解なんですよ。

そこに輪をかけて翻訳が古いものだから、とにかく読みづらいです。

自分は読書スピードは早い方だと自負してるんですが、チェスタトンの場合、じっくりじっくり読まないと意味不明状態に陥ってしまうため、「チェスタトンの短編2つを読むのに、他の作家の長編1作読むくらいの時間がかかってしまう」程です。

他のチェスタトン愛読者の方々はそんなことないんだろうか?

しかも、そうしてじっくりじっくり読んだとしても、最終的にはやはり「1つの作品につき2割程度の意味不明な箇所」が見受けられるほどです。

 

 

さて、今回の読み返しの合間、買っておきながら未読だった『島田荘司/屋上』(講談社文庫)も読んだりしたわけです。

 

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いや~、難解チェスタトンの後に読んだものですから、とてつもなく読みやすさを感じる。

文庫本540ページほどの長さですが、すらすらすら‥‥っと、あっという間に一気読み!

『占星術』『斜め屋敷』『暗闇坂』『眩暈』といった全盛期作品に比べれば見劣りする感じでしたが、力作かつ傑作だと思いましたね。

繰り返しになりますが、何より読みやすい。

 

 

しかしですね、自分としては、この『屋上』だったら、文章が難解ではあっても、何故かチェスタトン作品の方に惹かれるんだな。

自分好みの奇想天外さの度合いから言えば『屋上』の方が上だし、もし誰かに「『童心』か『屋上』か、どちらを読もうか迷ってるんだけど‥‥」と尋ねられたら、「そりゃ『屋上』でしょっ!」と答えると思うのですが、しかし自分としてはやはりチェスタトンに惹かれる。

チェスタトンみたいなミステリの方が読みたい。

 

 

何故なんでしょうね?