この件については以前の記事でも触れたかもしれないが、創元推理文庫が毎月のように新訳改訂版みたいな復刊をしている。しかし全てに成功してるとは言い難く、例えば『カー/曲がった蝶番』みたいに「旧訳の方が良かったな‥‥」と思われるものもある。ちなみに自分的には『カー/死時計』とか『スカーレット/エンジェル家の殺人』とか『チェスタトン/木曜の男』辺りを早く新訳復刊して欲しいところである。尤もチェスタトン以外は旧訳に特に「問題あり」というものではなかったので、そのままの復刊でも構わないのだが。

 
 
出版社側も最近は何を出したら「売れる」かがわからなくなっているみたいだ。だから「マクロイもの」あたりを散々復刊しているようですが、やはりそれなりに「優れもの」でないと、復刊的なフェアをやったところで売れはしない。マクロイは個人的には「そんなに面白いか?」的な疑問レベルの作品。他に出すものがなくなってしまったから、仕方なくマクロイで‥‥ということなんだと思いたくもなる。
 
 
マクロイ以上に「巨匠」ということで自分がピンと来ないミステリ作家がアンソニー・バークリーだな。故・瀬戸川猛資の名著たるミステリ評論『夜明けの睡魔』ではバークリーは絶賛されているのだが、しかしバークリー作品、どこがそんなに凄いのかが自分にはよくわからない。『毒入りチョコレート事件』は、自分なんかは前述のように故・瀬戸川猛資氏の絶賛により読んだものなのだが、う~ん‥‥どこが面白いのか、さっぱりわからない。
 
 
自分的に是非とも創元推理文庫から出してほしいのは『都筑道夫/蜃気楼博士』である。元々「子供向け」として書かれたものだが、いやいや、大人が読んでも見事な傑作!もちろん大人、特にミステリにある程度精通している大人が読めば、すぐに「トリック」「犯人」はわかってしまう事だろう。しかし乱歩の『悪魔の紋章』と並んで、これはミステリの教科書のような作品である。自分が子供の頃、この『都筑道夫/蜃気楼博士』をどれだけ胸をときめかせながら読んだことか!
 
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