†団栗講座†

袋を取りに行った白兎は陪審員と出くわし
何か案があると一緒に戻ってきた
そして道すがらくずのつるを集めてきて
あっという間に籠を編んでくれた
どうやら編み方は三月兎でくずの使い道は帽子屋に
知識として教えてもらっていたようだった
実際やるのは初めてと言うがかなり容量がいい
「編んでるのを見たことがあるから真似しただけ」
と陪審員は言うがそれでも中々できないものだ
しかしどんなにやっても隙間はあるもので
木の実が落ちてしまうような所もいくつかあるが
そこは大きな葉っぱを敷き詰めて隠している
お陰でスカートで包んでいた分が楽々はいった
「これは三月兎に依頼した方がいいね」
私のスカートの破け目を見て陪審員がそういった
「でもほつれくらいなら私も自分で縫えるから大丈夫」
余り三月兎に迷惑をかけたくない私が言うと
「アリス、服縫えるの?これ縫い目以外のとこ破けてるからこの部分だけ布を代えるかしないと綺麗にできないよ」
そう淡々と陪審員が続け
「評議をするけど三月兎に任せるべきだと思う人は?」
その言葉に白兎と影ちゃんが手を挙げた
「評決、三月兎に任せるべき」
私を見上げ陪審員が告げる
機械なのかと思うほど
言葉に感情がほとんど含まれない
てきぱき淡々というイメージ
これで十二歳とはとても思えない
一番最年少が牡蠣ちゃんで六歳だ
その次が陪審員ので白兎の十六歳で二十歳の眠り鼠
そして帽子屋の二十二歳と
チェシャ猫とダイナと影ちゃんの
三人が二十四歳で王が二十六歳
三月兎と女王とトゥイードルの双子が二十八歳と続く
そう考えているといつの間にか
影ちゃんが同じような籠に木の実をいれて持っている
籠はひとつしかなかったはずだし
よく見ると私と同じようにスカートが破けている
いつ破けたんだろ?と疑問に思っていると
「そういえば……陪審員はお庭で…何…していたの?」
白兎が陪審員に質問した
「女王が白薔薇が多すぎて気に食わないから色を塗れと命令したトランプ兵の様子を見に行ってた帰り」
淡々と陪審員が答えてもう歩き始めている
「薔薇に色を塗るの?なんだか面白そうだね♪あの広い庭の薔薇にって結構大変だから手伝ってもいい?」
「でもアリス……その前に…着替えないと………」
陪審員に話しかけていた私に影ちゃんが言うが
「また三月兎の仕事を増やす気?着替えて汚れたら洗濯も大変だよ。それに薔薇の棘で服を傷つけるかもしれない。よって着替えずにするべき」
終始淡々と述べられる
確かにそうだけど言い方がきつい気がする
勿論陪審員に悪気はなくこういう口調なのだ
「次いでに食事の前にはお風呂に入ること、全員」
その方が効率がいいが
いつの間にか全員参加が決まっている
こういう要領が良いのも陪審員の特長だ
「それとその木の実どうするの?大量にあるみたいだけど?」
陪審員が二つの籠と白兎の葉っぱの入れ物を見て言う
「え~と~……実は特に意味はなく落ちてたから何かに使えるかと思って拾ってきただけなんだよね。胡桃や栗なんかは食べられるけど一番多い団栗って……どうなんだろ……食べられないよね。これ」
痛いとこを付かれた感じで私が苦笑しながら
団栗をひとつ取り上げて見る
「団栗も食べられる。炒って食べたり磨り潰して団栗粉としてもいいし。それはクッキーやパンなんかの材料に使えるよ。灰汁抜きが必要な団栗と必要ない団栗があるから中には生で食べられるのもある。色々使い道はあると思う。水につけて選別しなきゃならないけどね。といっても古い物は浮いてきて新しいものだけ下に沈むから簡単だよ」
陪審員が淡々と説明してくれる
その知識に関心する私達
団栗が食べられるなんて思いもしなかった
食べるのは栗鼠など動物だけと
しかし動物が食べられて
人が食べられないことはないかとも思った
「見たところアリス達の拾った団栗は灰汁が少ない種類みたいだからそのままでも食べられるけどほぼ無味だから炒った後に塩をふれば問題ない。刻んで団栗珈琲も作れる」
「ちょっと見ただけで……種類までわかったの……?」
陪審員の言葉に影ちゃんが驚いたように尋ねる
「そんなこともないけど大抵この森のエリアにあるのは灰汁が出ない団栗が多いからね。それに道すがら聞いてきた範囲で取れる団栗も限られてるし選択肢を絞るのは簡単だよ」
と陪審員は簡単そうに説明するが
つまりは何処に何の種類の団栗があるか
だいたい覚えている訳であって
その記憶力に改めて関心する
「団栗は栄養価が凄く高いから昔は貴重な食料だったんだ。でも多くが灰汁のある渋い団栗が多いから手間がかかるのかもしれないね。でもここの団栗は比較的に灰汁の無いものが多いからさっき言ったけど炒って食べたり団栗粉にしてクッキー等にするのが一番良い。結論として使い道有り」
陪審員らしく最後は結論で纏めてくれた
そういえばこの間トウィードル不在中に
チェシャ猫を追いかけた時も
逃走中のチェシャ猫の行動パターンから
次の出現場所を予測して帽子屋に教え
見事に捕まえたことがあったと思う
分析能力もいいんだなということをを思い出し
そんなことを考えながら森を進んだ


(挿絵/Ant-Me)