時は江戸時代、天保。老中水野忠邦によって、質素・倹約を旨とする天保の改革がなされていた時代。

 舞台は吉原の小見世山田屋。

 そこで春をひさぐ花魁達を描いた群像劇です。


 群像劇といっても、互いに独立した話ではなく、合縁奇縁で寄り集った花魁をそれぞれの角度から描いていて、それぞれの物語が合わさって一遍の長編物語になっています。


 著者30歳の若さで書いたとは思えないほど心理描写・情景描写が濃密で、味わい深い一冊でした。

 自由を奪われ、その身を切り売りするしかない女達。

 吉原に通い詰める男たちの宿業。

 そして、間夫が許されぬ身だからこそ燃え上がる男女の逢瀬。


 けれど、悲劇や心中ばかりが描かれているわけではありません。

 女達の力強く、たくましく生き抜く様。

 同業者達の絆と縁。

 

 それらが強く胸を打つのは、やはり登場する人物達が生き生きと描かれているからでしょう。

 一人一人が実在の人物だったかのようなリアリティがあり、引き込まれて読みました。

 特に物語中盤の主人公である三津の生きざまに心打たれました。


 命がけの愛と性のドラマ。

 男女ともにお勧めの一冊です。

花宵道中 (新潮文庫)/宮木 あや子
¥580
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 ひねくれた性格なもので。

 好きな作家の作品でも、一番有名な作品はなんとなく後回しにしてしまうんです。


 けど、やっぱり読んで良かった!

 

 後回しにしていた甲斐もあって、この作品が「梨木さんらしさ」がたっぷり詰まった作品であることが分かります。


 少女の成長。深呼吸するような自然な生きざま。そして、魔女の修行。

 小説なのに、まるでエッセイのようなリアリティ。


 何より印象的だったのは、主人公まいの決断。魔女との生活を打ち切って、新しい街に行くことを決めたこと。

 

 人生のなかで、新しいことを始めるために何かを捨てなければならない場面って、必ずあるものです。

 まいが何を思いこの決断を下したのか。

 それを考えると、この作品全体の深みがぐっと増す気がします。


 映画も原作に忠実な良作であるとのこと。

 ぜひ、映画も観てみようと思います。

西の魔女が死んだ (新潮文庫)/梨木 香歩
¥420
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 探求は終わり、ゴールは達せられた。個我はついに真の統一に達し、分かちがたい存在となる。対立する性的要素は調和された。


 タロットカード。

 その魅力の最大の秘密は、「起源が良く分からない」というところにあるのではないかと思います。

 カードの絵柄はどれも象徴的で、特に大アルカナの22枚のカードはあれこれと想像を掻き立てられる魅力が満載ですが、けれどこの正しい解釈というのは今もって分からない。

 タロットの解説書によって全然違うことを言っているのは、タロットカードに少しでも興味のある方にとっては、周知のことだと思います。


 だからこそ、読み手の解釈の力、そして占いを受ける対象の個性が重要になってくるのだと思います。

 ある程度「自由」に解釈しうる曖昧さ、それこそがタロットカードの魅力だろうと僕は思っています。


 この本では、タロットの絵柄はユングの心理学を応用して解釈されています。

 タロットは一人の個人が、その内的探求を繰り広げる旅の姿として考えられています。

 「愚者」から始まり、「運命の輪」までのカードで、個人は自我を発達させ、成熟していきます。

 一個の人格として完成された個人は、今度はその自我を危険に晒しながら、無意識の領域へと旅立っていきます。

 それが「女力士」から「世界」までの過程です。


 この解釈は、22のカードを連続でとらえ、神秘的でありながら現代にも通じる、かなりお気に入りの解釈法です。

 ということで、タロットに関する本は幾つか読んでいるのですが、代表でこの著作を紹介しました。

タロット(新装版)/アルフレッド・ダグラス
¥3,045
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