夕食を食べることなく亡くなった主人。


主人には、


“家族で食卓を囲みたかった。”


という後悔が残っていることを人伝いに聞いた。



それと


“迎え入れてあげてください。”


という言葉も添えられた。



主人が食べ損ねた献立は、大好きだった麻婆豆腐。



そういえば…あれ以来作ってなかったっけ…。



そんなことに気づいた。



私は久しぶりに麻婆豆腐を作って主人を迎え入れた。



主人の写真の前に、献立を並べ、久しぶりに家族で食卓を囲んだ。



あの日は、いつも以上に子ども達のお喋りが止まらなくて、子ども達は、主人が食卓に座っていることを見えなくても感じていたんだと思う。



賑やかな雰囲気が好きだった主人の喜ぶ顔が浮かんだ。



迎え入れることで、主人は、一つの後悔を昇華させて、温かい料理の湯気と共にまた昇っていったんだんだろうな。



それから、迎え入れたことで、私たちの止まっていた時間が動き始めたように思う。



迎え入れることは、お互いの時を動かすことになるのだと知った。



それは、結び直しが行われた感覚で、新たな私達の関係のスタートだったように感じる。