ラブカは静かに弓を持つ③静寂のセルフイメージ | エンタメがカルシウム

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全国著作権連盟

JASRACあたりがモチーフとされてる

著作権連盟の社員が

音楽教室スパイとして潜入して裁判の証拠資料を集める話。

 

 

著作権というものは

著者が没後70年経つと

連盟への申請は不要となり

楽曲を自由に使用できるとなってる様子なのですが…

 

著作権連盟VS音楽教室の争点

 

教室にてレッスン時に演奏する

クラシック以外の歌謡曲やPOPSにも

申請を出して

著作権使用料を払えというもの。

 

言い分としては

 

①没後70年経っていないから。

 

②作品は子供と同等であるというアーティストを護るため。

 

そんなこんなで

 

会社からの差金で

 

スパイとして潜入する20代後半あたりの青年。

 

この青年

 

幼少の頃にチェロを習っており

帰宅途中に誘拐されるという事件に見舞われていて

PTSD心的障害からきたと思われる睡眠障害で

心療内科に通院しながら働いてる最中、音楽教室への潜入スパイを指示されることになる。

 

会社は組織であり

 

つきもので当たり前のように派閥があり

 

本当にエリート集団なのかよ!とツッコミたくなるくらい

 

権威という欲にあさましく、

 

出世のためなら手段は選ばないて雰囲気。

 

 

こちらの事件がモチーフになってるのかもしれない。

 

 

その上で若い人の手を汚させて

 

自分らは、ふんぞりかえってる印象を持たせていて

 

誰でも入れない会社でありながら

 

行動が全く品が良くない団体に描かれているんですけども。

 

そんな感じなので

 

その辺の韓国エンタメの

 

反日、抗日映画やドラマのように

 

日本人が悍ましく描かれている

 

あさましく悍ましい人間関係が繰り広げられていきそうなものの

 

文体としては

 

終始、淡々としており主人公が、そういった性格で

 

更にかなりのイケメンだという描写。

 

感情を表に出さないキャラ

 

なので誘拐の描写がイマイチ深くは掘られておらず

 

チェロ=金持ちと思われた、

 

あるいは美少年だったから

 

そういう目的のため誘拐されて

 

ニュース誌面に出るような

 

大きな事件にはならぬまま

 

気がついたら帰されたのでは的な

 

幼少だった本人の記憶が定かでない。

 

幼少頃の誘拐騒動は

 

ハッキリと具体的には記されてはいないものの

 

心理描写のみで感情移入できて

 

その人の人生や

 

それに付随した感情が

 

鏡に映ったように鮮明になるような文体だと思います。

 

作者は安檀美緒さんです。

 

作者いわく

 

どうしても○○のような感じという音楽や物語が溢れてしまう昨今なので(アイデアはで尽くしている)

 

 

どれにも似ていない新しい組み合わせの物語を!という思いで

 

苦戦して練り作り上げた様子です。

 

レビューでも

 

みなさん仰ってる様子ですが

 

自分も講師の浅葉と主人公のサシノミのシーンには引き込まれました。ちなみに浅葉と某有名映画の好きなシーンが同じで驚きました。

 

あのシーンが好きな人はいくらでも居られるとは思いますけども。

 

あの映画が大ヒットしたとき自分は10代だったので

浅葉先生が、それを青いというニュアンスでいう部分も

驚きました。

 

10代だった自分はどうして、

 

あのシーンが心に深く刻まれたのか。

 

まったく分析していなかったので浅葉先生の語りには

 

なるほどと面食らいました。

 

映画みたいなことは起こらなくても、どうせ死ぬのなら矜持を持たせて死にたい。人類を救う的な恥ずかしい妄想。

 

この浅葉の語りが、

 

あまりに感傷的で主人公も油断してしまったという描写がありました。

 

そこから淡々とした青年の

淡々と見せかけて

実は熱いもの(音楽への情熱)持った

 

命をかけた組織との戦いが始まります。

 

音楽を愛する自分を気づかせてくれた

 

講師の浅葉の青い部分

 

自分の会社で起きた

 

を軸とした戦争へと巻き込まないためであるのか

 

とにかく、逸脱な文体により

 

スパイがよくないのではと思った後の感情の機微から

 

事後行動への変化

 

繊細な文学の詩かのごとく記されています。

 

死ぬ時に後悔しないために

 

どう生きるかという選択

 

浅葉との会話から見受けられる

 

自分の態度や言動は

 

自分への決死の救難信号なのだと主人公は感じ取ります。

 

脳の部位

 

扁桃体がパトカーの如く唸ったんでしょうね。

 

逃げるか戦うか………の合図。

 

 

ラブカという深海の海獣は妊娠期間が世界一ながいそうです。

 

そして外見は白イルカや鯨のようには可愛くなく

 

シャチよりも獰猛な顔つきで鋭い歯を持つ醜い深海獣

 

でもラブカだなんて名前は何となく可愛らしい

 

そんなギャップを持つラブカをタイトルにつけ

 

主人公のスパイをラブカと表現して

 

“静かに弓を持つ”と表現した作者にはアッパレです。

 

その短い表現に

 

中盤からの主人公の決心と行動が詰まっているから。

 

作者の

 

その文章描写は圧巻も圧巻です。

 

イエス!アンダン!

 

〜〜〜

 

そして修羅場後

 

スマホにgameと時間を潰すものはいくらでもある現代

 

“スパイ行為が裏切りかどうかも纏まらず日々は平坦に続いていく”と。

 

あくまで淡々としているように見えます。

 

時間泥棒と言われて久しいスマホにゲーム

 

現実逃避で没頭できるものが溢れている現代の日常の中

 

ひょんなことで主人公の奥底の感情が露見します。

 

“〇〇があるまでは生きようと思った。”

 

ここでアテクシは心の汗を流すこと20分。

 

だよね、アータ傷だらけだよね。

 

立ってられないくらいメンタルやられてるよね

 

泣いてええんやで

 

可哀想にえーんってなるわけですよ。

 

自分が悪いわけです結果論から言えば。

 

でも、彼の葛藤を見てれば(読めば)分かる

 

許せる何かを持ってる人格だという話です。

 

そんな描写が淡々とやってきます。

 

涙腺ポイントもベタではなくて

 

知らぬうちに刺されてしまった感じ。

 

この文体描写が宗教家の言動なら

 

お布施まっしぐらなんでないかいうくらい

 

自然にやられる感じです。

.くるぞ!くるぞ!感が全くないんですよね。

 

それらへの変動を表した文体まで、ものすごく逸脱なんですよ。

 

ラブラインは、殆どないのですが三船さんとのクダリも圧巻です。

 

主人公にたいして

 

三船さん良い女だったのに

 

やらかしたな貴方と思いましたもんね笑

 

 

なんのこっちゃだとは思いますが

 

音楽を愛する普通の人々の話なんですけどね。

 

ラストはハッピーエンドですわ

 

よくハッピーエンドに持ってけたな!と

 

これも驚きですが。

 

遠い昔から固定されたままだった静寂のセルフイメージを軽やかに飛び越える。

 

読了してから3ヶ月たった今も飛び越えてはいない自分がいるから

 

改めて感想文PART3ということで。ニヤニヤ

 

恐れの向こう側にある

 

手を伸ばすべき現実

 

その恐怖は幻で

 

時間は、ただ前に進むのみで逆行を許さない。