第37回 能登地震の復興で地域の選別はやめよう(時事)(令和6年1月31日)

 

【※】英語の社説は後半に掲載しています。

 

能登半島地震の今後の復興について、地域の選別を語る方々がおられるようです。聞くと、人口が少ない地域は、病院などもあるより人口の大きな地域に移住してはどうかというもの。私の理解では、その方がインフラの復旧も効率的だし、費用も安く済むというのが理由のようです。

 これは、いわゆるコンパクトシティの構想に近いと思いますが、根っこには予算が限られているという認識があると思います。また、予算が限られているという理由には、多くの人が、思わずうなずいてしまうようにも思います。

 地方自治体なら、確かに予算に限りがあります。

 しかし、これが国になると全く話が違ってきて、国債という事実上の貨幣を自分で発行できてしまいますから、その意味では予算に限りがありません。

 もちろん、過度なインフレになることには注意が必要ですが、デフレの現在なら、コロナ禍の時のように多額のおカネを発行する余裕があります。

 

 国(政府)の負債が1200兆円(でしたっけ)もあるのは大問題で、「借金で破綻する~」とはよく言われることですが、これだけ負債があっても破綻するどころか、ウクライナの復興に何千億円も拠出する約束ができる(笑)状態なのです。

 実は、この負債は見た目だけであって、実質的には返す必要がないものです。特に日銀が保有している分については、形式的な数字のやりとりだけでして、民間の分は国債を発行して借り換えを繰り返すだけで、国は痛くもかゆくもありません。逆に言えば、返さなかったからこそ、今まで1200兆円も積み上がってきたのです。

 これは、ざっくり言えば、今まで発行してきた「円」の発行残高というべき数字なのです。今まで1200兆円発行してきましたよ、という「記録」なのです。

 日本政府は、日銀に国債という借用書を渡して円を発行させますが、実態上の子会社である日銀と親会社の政府とは、連結決算で借金はチャラになります。まじめな日本政府は、形式上は日銀と数字のやり取りをしていますが、実質的にお金のやり取りはありませんし、繰り返しになりますが、民間の国債を償還する際には、また国債を発行して日銀にお金を発行させて借り換えていきますから、数字が積み上がるだけなのです。

 もっと詳細に書きたいところですが、個人のささやかなブログですので、今回はこれくらいにしておいて、もう一つ付け加えたいと思います。

 

 それは、南海トラフ地震や首都直下型の地震が起きた場合、その被害規模は東北や能登の比ではないからこそ言いたいと思います。

 日本は自然災害大国であり、日本全体に広く分散して住むことが防災上必要で、復興の際には、無事な他の地域が助けることができます。今、東京や大阪エリアに大災害が起きたら、他の地域に助ける力が十分にあるでしょうか。

 

 さらに、現在の世界は資源の争奪局面に入っていると言われていて、食糧もそうです。食糧自給力の弱い日本では、将来はコオロギを普通に食べさせられているかも知れません。

 日本国内で自給できるものは、食料を始めとして生産力を引き上げて、いざという時に国民が困らないように準備すべきですが、そのためには、農業と水産業が非常に重要です。また、本来は木材資源も日本は自給できる環境にありますが、国内の森林を朽ちさせる一方で外国から大量の木材を輸入しています。せっかくの環境を無駄にし、破壊しているといっても良いと思います。

 食糧と木材を外国から買わずに自給できることは、今流行のSDG‘sにも資するところ大だと思います。

 農林水産業、つまり一次産業を発達させるためには、国土全体を有効活用しなければなりませんから、そういう意味でも被災地の復興は重要で、農林水産業の人口もノウハウも絶やさないようにしなければならないと思います。

 また、人口が少ない地域に、今後、新たに移住者を増やすためにも、道路や鉄道、港湾、空港、上下水道、電気、ガスなどの基本インフラには十分に投資しておくべきではないでしょうか。

 

 いずれにしても、被災地の方々が元の場所に戻って幸せな暮らしを営めるように心より願っていますし、日本全体で応援したいものだと思います。

 

 なお、国債や国の借金の話について、それは変だとか、もう少し踏み込んで勉強したいという方には、次の本をお薦めします。

 いずれも三橋貴明氏の著書(経営科学出版)です。

「財政破綻論の嘘」、「マンガ財政破綻論の大嘘」、そして「年金倍増で日本経済は大復活する」も経済の専門知識がなくても、とても分かりやすい本です。ご参考になれば幸いです。

 

◆さて今回の英語です。地震 earthquake をキーワードにして、過去の社説データベースを検索してみました。

 

 取り上げるのは、2000年1月24日付のロサンゼルス・タイムズ社説です。

 タイトルは、“Warming Winds From the Aegean” エーゲ海からの暖かい風

 

 何だか、ジュディ・オングさんの「南に向いてる窓を開け~」(笑)が聞こえてきそうなタイトルですね。この曲の歌詞のWind is blowing from Aegean という部分は何となくこの社説のタイトルと字面が似ている気がします(笑)。

 

 また、この新聞社のあるカリフォルニア州自体も大きな地震のあるところで、1906年のサンフランシスコ大地震 “San Francisco earthquake”はご存じの方もおられると思います。

 

◆さて、社説の大意ですが、エーゲ海の長年の敵同士であるギリシャとトルコが友好関係の新時代に入りそうで、とても良いことだから、この地域の指導者たちには努力してもらいたいというものです。かつては戦争の寸前までいった両国の友好関係復活のきっかけには、1999年8月に発生した壊滅的なトルコ地震の際にギリシャが強い同情を寄せ、その後、トルコは逆にギリシャが地震に見舞われた時にお返しをしたというものです。そしてその功績の大半は、トルコへの敵意をかき立てたギリシャの元首相の子息であるパパンドレウ外相にあるというものです。

 何と良い話ではありませんか

 良い話なので、全文を掲載することにします(笑)

 (今回、単語の説明はつけませんので、ご承知おきください。)

 

Warming Winds From the Aegean

 エーゲ海からの暖かい風

 

Peace is breaking out on the southern flank of NATO, with longtime Aegean Sea adversaries Greece and Turkey promising to enter a "new era" of friendly relations.

 長年エーゲ海で敵対してきたギリシャとトルコが友好関係の「新時代」を迎えることを約束し、NATOの南側で平和が生まれそうだ。

 

Cooperation between the two countries, which came close to a war less than four years ago, is significant and may well hold the key to the resolution of territorial disputes in the Aegean and the reunification of Cyprus.

 4年も前に戦争寸前までいった両国の協力は重要であり、おそらくエーゲ海の領土問題の解決とキプロス再統一のカギを握るかもしれない。

 

The latest eruption in the "outburst of solidarity" between the two took place in Ankara last Thursday when Greek Foreign Minister George Papandreou, on the first high-level Greek visit to Turkey in 37 years, signed a handful of agreements to build up trust between Athens and Ankara.

 両国の最新の「連帯の爆発」は先週木曜日(一月二十日)、ギリシャの外務大臣ジョージ・パパンドレウが37年ぶりにトルコへ初めてハイレベルでの訪問を行い、アテネとアンカラ、二国間の信頼を構築するためのいくつかの協定に署名したとき起こった。

 

Under a portrait of Kemal Ataturk, the father of modern Turkey, who chased the Greek army out of his country in 1923, the two governments even agreed to co-sponsor the 2008 European soccer championship.

 1923年にギリシャ軍を自国から追い出した近代トルコの父、ケマル・アタチュルクの肖像画の下で、両政府は2008年のサッカー欧州カップを共催することでも合意した。

 

More accords will be signed next month when Turkish Foreign Minister Ismail Cem visits Athens.

 2月、トルコのイスマイル・チェム外相がアテネを訪問する時には、もっと多くの協定が調印されるだろう。

 

Icy relations between Turkey and Greece showed the first significant signs of thawing last August when a devastating earthquake in Turkey triggered an outpouring of sympathy in Greece, and Turks later reciprocated when Greece was struck by an earthquake.

 トルコとギリシャの冷え切った関係が最初の重要な雪解けの兆しを見せたのは昨年八月、壊滅的なトルコ地震の際にギリシャが同情をほとばしらせた時で、その後トルコはギリシャが地震に見舞われたさいにお返しをしたのである。

 

A great deal of the credit goes to the courage of Papandreou, the son of a Greek prime minister who stoked hostility toward Ankara.

 功績の大半は、トルコへの敵意を煽った元首相の子息であるパパンドレウ外相にある。

 

Turkey too is changing.

トルコも変わりつつある。

It is improving its poor record on human rights and has been rewarded with growing clout in the Caspian Sea region and a much-prized invitation to eventually join the European Union.

 同国は人権に関して劣悪な実績を改善しつつあり、その結果としてカスピ海地域での影響力が増大し、最終的には欧州連合(EU)への加盟という非常に高く評価された招待を受けている。

 

The test of the new, improved relations between Greece and Turkey will come in the handling of their dispute over some uninhabited islands in the Aegean and over Cyprus, an island populated by a Greek majority and Turkish minority and split by a U.N.-guarded border since 1974.

 ギリシャとトルコの新たな改善された関係の試金石は、エーゲ海のいくつかの無人島と、ギリシャ系多数派とトルコ系少数派が住んでおり、1974年以来、国連が警備する国境によって分断されているキプロス島を巡る両国の紛争の扱いにあるだろう。

The resolution of the Cyprus issue clearly rests in Athens and Ankara, whose leaders have the influence and power to solve this problem for the benefit of all in the eastern Mediterranean.

キプロス問題の解決は、明らかにアテネとアンカラの肩に掛かっており、その指導者には、東地中海に住む人々すべての利益のためにこの問題を解決する影響力と力が備わっている。

 

 < どこの国で起きても大地震は恐ろしい災害ですね。被災地の一日も早い復興のため、協力し合いましょう。>

 

では、今回はこの辺で。

 

(注)このブログの内容を使った結果について、管理人は一切の責任を負いませんので、自己責任でお願いします。