24回 プーチン大統領が登場した頃のロシア (令和571日)

 

 今日は大学生の剣道大会を見に行くつもりだったのですが、天気が悪かったので、ネットのライブ中継で我慢しました。昔、仕事で関係のあったある地方大学が、時々、全国大会に出てきます。その応援で楽しんでいるのですが、先月は、野球で東京ドームへ、柔道で武道館へ行ってきました。今月はバスケも来るので忙しい(笑)ですし、若い人たちの熱気に触れると気持ちだけでも若返るような気がします(笑)

 

 さて、ウクライナ戦争は、ロシアで内乱のような動きがあって緊張が走りましたが、1日で落ち着きました。後始末が続いていますが、何だかよく分からない点があって、まだ目を離せないですね。個人的には、ロシアの東側(日本側)にだって何かが起きてもおかしくないと思っています。

 

そして、プーチン大統領の動向は常に注目されていますが、では、彼が最初に大統領として登場した頃、ロシアの状況はどうだったのでしょうか?

 当時の社説にそれを探してみました。

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 プーチンの大統領就任は、200057日でしたから、ほぼ23年前のことです。

 

 200059日 ロサンゼルス・タイムズ社説

  【 Putin: a Mixed Picture  】プーチン大統領:混迷の様相

 

mixed picture は、複雑な状況とか混迷状態の時に使われる表現だと思います。当時のロシアが正にそういう状態だったのでしょう、この社説の和訳を掲載した世界日報「世界の論調」では、「『ロシアに秩序』が最優先課題」としていました。》

 

  Sunday's inauguration of Vladimir V. Putin as Russia's new president--the first democratic succession of leadership in the country's history--was rich in symbolism and promise. Putin, a former KGB officer, likes to invoke the word "democracy," but it does not come naturally to him. At 47, he is younger and more vigorous than his predecessor, Boris N. Yeltsin, and he shares none of the ideological baggage of the Kremlin leaders before him.

 ロシア史上初の民主的な指導者の継承であるウラジーミル・V・プーチンの日曜日(7日)の新大統領就任は、象徴性と将来性に富んでいた。KGB(旧国家保安委員会)出身のプーチン大統領は 「民主主義」 という言葉を好んで使うが、それは彼にとって自然な言葉ではない。47歳の彼は、前任者のボリス・エリツィンより若く、精力的であり、彼以前のクレムリン指導者たちのイデオロギー的な重荷を共有していない。

 

《 欧米のメディアは、しきりに民主主義のことを言い、自分たちの民主主義と違うと文句を言います。プーチンのというかロシアの民主主義も、必ずしも西側のそれと同じではないと思いますし、違っているのは自然だと思います。日本だって、聖徳太子の昔から「和をもって尊しとなす」の社会でしたし、五カ条の御誓文も「万機公論に決すべし」で、西側にとやかく言われる前から日本型の民主主義があったわけです。 》

 

  He is taking charge of a country that has accomplished a great deal on the democratic front but disappointed in its economic transformation. Putin's main goal will be to establish the rule of law and complete economic reforms without endangering democracy.

  彼は民主主義の戦線で多くをなし遂げたが、経済改革で失望している国の管理を引き受けようとしている。その主要な目標は、民主主義を危険にさらすことなく法の支配を確立し、経済改革を完成することだ。

 

欧米の民主主義democracyは、頭に付くDemoつまりデモに訴えて圧力をかける傾向がありますね。それを他の国に持ち込んで、アラブの春みたいなデモを仕掛け、政体を転覆させることがあることも指摘されています。日本でもアメリカのエマニュエル坊主、いや大使もデモの先頭に立ってましたね。LGBT理解増進法のデモだけど、実体は女性の危険増進法でしょう。とんでもなく余計なお節介。欧米の一部の連中にとって「民主主義」は、自分たちの目的を達成するための「手段」のようなところがあると思います。昔のキリスト教と宣教師は侵略の手段と手先で、インカ帝国など、世界中が酷い被害にあいましたね。日本も危なかった。もしかすると、それに似ているのかも知れません。

 

 Putin is an enigma. Even as a presidential candidate he said little about his policies or programs. He owes much of his popularity to waging a merciless war against Chechnya. He likes to reinforce his tough talk about restoring the greatness of Russia and flushing enemies "down the toilet" with macho images of flying jet fighters and practicing judo. He says the right things to the right constituencies.

 プーチン氏は謎に満ちている。大統領候補としても、政策や綱領をほとんど発言していない。彼の人気は無慈悲なチェチェン戦争に追うところが大きい。彼は、ロシアの偉大さを取り戻し、敵を「トイレに流す」というタフな話を、ジェット戦闘機を操縦したり柔道を練習したりするマッチョなイメージで補強するのが好きだ。彼は適切な有権者には適切なことを言う。

 

 《 「無慈悲」といえば、アメリカのイラク戦争も相当だったのでは?だいたい、大量破壊兵器があるという難癖をつけて始めたけど、結局は無かった。それがバレたのに謝罪も賠償もしていない。多数の人を殺しておいて、無慈悲もいいところ。それと、ロシア人が強いイメージのリーダーを好むのは勝手ですよ。アメリカ人だってジョークで余裕を見せるリーダーを好むけど、よく転ぶうえに認知症を疑われるようなリーダーも好むとは知りませんでしたな(笑)

 

 What he does is less reassuring. While promising to defend democracy, Putin tightened government control over the media. He backed legislation to give the security services influence over the Internet. He speaks of establishing a "dictatorship of the law." Strong law enforcement may certainly be helpful in a country as lawless as Russia, but after more than eight months in office, the former KGB agent has done little to curb the corrupt oligarchs' power or gun-toting gangs of organized criminals.

 彼がやっていることはあまり安心できない。プーチンは民主主義を守ると約束しながら、政府によるメディア統制を強化した。彼は、治安当局にインターネットに対する影響力を与える立法を支持した。彼は「法による独裁制」を確立すると語っている。ロシアのような無法地帯の国では強力な法執行機関が役に立つのは確かだが、元KGBエージェントは、8カ月以上の在任期間を経ても、腐敗したオリガルヒの権力や組織犯罪者による銃を持ったギャングを抑制することには、ほとんど何もしていない。

(注)8カ月以上の在任期間とは、首相、大統領代行を務めた期間のことである。

 

欧米、特にアメリカは、カッコいいことは言いますが、世界中で盗聴しているのはどなたでしたっけ?特に、911の後ではインターネットも携帯電話も全部やってるんじゃないでしょうか。ロシアを「法による独裁」と言うのは勝手ですが、自分たちも実は「盗聴による独裁」(笑)なのでは?

 

  Bringing order to Russia will be a top priority. Under Yeltsin, market reforms led to widespread property thefts and the rise of an economically powerful class of moguls controlling much of the wealth. But unlike Yeltsin, Putin does not owe his election to the oligarchs, and he should be free to try to break the power of the criminal elements in his bid to maintain public support for economic changes. Nominating economist Mikhail M. Kasyanov as prime minister was the right first move.

 ロシアに秩序をもたらすことが最優先課題になるだろう。エリツィン氏の下で、市場改革により財産窃盗が蔓延し、富の大半を支配する経済的に強力な実力者階級の興隆につながった。しかし、エリツィンとは異なり、プーチンはオリガルヒ(新興財閥)のおかげで当選したわけではなく、経済改革に対する国民の支持を維持するために、犯罪分子の力を断ち切ろうとする自由があるはずだ。経済学者ミハイル・M・カシヤノフ氏を首相に指名したのは、最初の一手としては正しかった。

 

旧ソ連が崩壊した後の混乱時、ロシアに極端な自由経済を指導する学者を送り込んだのはアメリカだという指摘があります。急速な民営化で新興財閥が大きな利益を上げる一方で、GDPが落ち込んで貧富の格差が大きくなり、平均寿命も下がったのです。秩序も危なくなりましたが、プーチン政権は何とか踏みとどまりました。その4~5年後にユーコス事件などが起きることになります。プーチンの味方をするつもりはありませんが、ざっくりと言えば、当時、彼が行ったエネルギー企業の国営化などは、欧米の大資本からロシアの資源を守るという側面があったと思います。

 

  Putin should use the center-right majority in the Duma, the lower house of parliament, to push for much needed tax reform and a law clearly establishing the right of private ownership of land. The new president has succeeded in creating among ordinary Russians an image of himself as a competent, decisive leader capable of tackling mounting domestic problems and restoring the country's image abroad. If he can indeed do that without compromising democratic values he will succeed.

 プーチン氏は、必要性の高い税制改革と、土地の私有権を明確に確立する法律を推進するため、下院の中道右派多数派を活用すべきだ。新大統領は、増大する国内問題に対処し、対外的に国のイメージを回復できる有能で決断力のある指導者というイメージを一般ロシア人の間に作り出すことに成功している。もし彼が、本当に民主主義の価値観を損なうことなくそれができるなら、彼は成功するだろう。

(参考)Duma ロシアの国会、下院

 

欧米の言う民主主義とは、経済の自由化をどんどん進めて、彼らの大資本を受け入れさせる狙いもあるので、いいものとは限りませんな。「彼は成功するだろう」というのは、「我々は成功するだろう」(笑)と聞こえてしかたがありません。

 

 ボヤキが多くなってしまいましたので、今回はこの辺で。

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