第4回 WBCマイク・トラウトWe’ll be back! と防衛大臣辞任の小池百合子さん I shall return (令和5年5月8日)

 

 いや~、WBCでの日本チームの闘いぶりは素晴らしかったですね。野球小僧だった自分は、正座で応援してました(笑)。感動しました。あらためて「おめでとう!」そして「ありがとう!」。

 

 何に感動したかって、もちろん優勝は凄いことですが、日本チームの正々堂々かつ謙虚な態度、仲間と相手チームへの敬意・思いやり、ファンや関係者への感謝の心、その上での全身全霊のプレー。そんな彼らを見て、日本人っていいなと思い心が奮えました。

 

 外国のチームにも素晴らしいところはたくさんありましたね。中でもチェコは、他に仕事を持ちながらの選手生活なのにレベルが高かったですし、何だか野球に対する素直な愛情が表れていたようで好きになりました。

 そして、決勝戦のアメリカチームはさすがの強さでした。そして、強さだけでなくフェアプレーを貫いていて清々しく思いました。

 

 試合終了後、アメリカのマイク・トラウト選手がインタビューを受けて、潔く日本チームを評価した後で We’ll be back!「我々はまた戻ってくる」と言っていたのが私には印象的でした。3年後に、ぜひまた、手に汗握る試合を見たいと願っています。

 

 ここで、トラウト選手のWe’ll be back! を聞いて、映画ターミネーター(1984年)でシュワルツネガーの言ったI’ll be back!を連想したのですが、同時に、小池百合子さんが防衛大臣を辞めた時(2007年)に言った I shall returnも思い出しました。

 

 小池さんのこのセリフは、ダグラス・マッカーサー元帥が日本軍に負けてフィリピンのコレヒドール要塞を脱出し、どうにかオーストラリアに辿り着いた時に使った言葉として有名です。

 

 まず、フィリピンで戦っている間、実際には負け続けだったにも関わらず、アメリカ軍部は「勝ちっ放しだ」というアメリカ版「大本営発表」を続けていたので、マッカーサーは国内では英雄でした。ところが、現地フィリピンでは大きなミスを続けたばかりか、安全なコレヒドール要塞に引き籠って前線にも出てこないので、「Dugout Doug(壕に籠ったまま出てこないダグラス)」というあだ名を付けられ、歌まで作られて兵士の間で流行していました。

(参考)http://www.combat.ws/S4/SAMIZDAT/DUGOUT.HTM

 

 そして、10万人とも言われる部下を置いたままで自分は家族と逃げたので、I shall return.は当時のアメリカ兵の間では「敵前逃亡」の意味で使われたそうです。

 

 こんな背景があるので、小池さんはマッカーサーのI shall return.よりもターミネーターのI’ll be back.を使った方がカッコ良かったのではないかと思いました。

 

◆私のデータ群の中で、マッカーサーのI shall return を引用した社説を1つ見つけましたので、勉強してみました。

 

ニューヨーク・タイムズ(200082日)

【 The Defense Debate Begins 】(防衛論議が始まる)

 

(社説概要)

 共和党全国大会は、防衛政策と軍事力の伝統的な主題に戻り、クリントン政権が退役軍人を見捨て、国防を崩壊させたと批判した。しかし、主要演説者であるジョン・マケイン上院議員は、自身の負けを暗示するとともに、ジョージ・W・ブッシュ候補に対する賞賛を表明した。また、コンドリーザ・ライス元国家安全保障担当大統領補佐官は、ブッシュ政権の外交政策を批判し、中国やロシアなどの潜在的なライバルと真剣に向き合っていないと非難した。ただし、ブッシュ候補の主張には曖昧な点があるため、具体的な政策については今後のキャンペーンで明らかになる。

 

 では、社説の冒頭部分を引用しますが、I shall return は最後の一文にあります。

 日本語訳は全て管理人の試訳です。

 

 The Republican Convention in Philadelphia set aside its nurturing themes about children last night and returned to the traditional G.O.P. territory of defense policy and military strength.

 フィラデルフィアの共和党大会は、昨夜、子供に関する育成についてのテーマを脇に置き、国防政策と軍事力というG.O.P. (Grand Old Party 共和党)の伝統的な領域に立ち返りました。

 

 Popular war heroes like former Senator Bob Dole and Gen. Norman Schwarzkopf implied that the Clinton administration had let veterans down and allowed defenses to erode.

 ボブ・ドール元上院議員やノーマン・シュワルツコフ元帥のような人気のある戦争の英雄たちは、クリントン政権が退役軍人を失望させ、防衛力を弱めたことを示唆しました。

 

 But a strangely subdued note was struck by the keynote speaker, Senator John McCain, the self-described "distant runner-up."

 しかし、基調演説者であるジョン・マケイン上院議員は、自称「遠い次点者」であると奇妙に控えめな意見を述べました。

 

 His generous but obviously unenthusiastic praise of Gov. George W. Bush was punctuated with intimations of his own mortality.

 ジョージ・W・ブッシュ知事に対する彼の寛大であるが明らかに熱狂的ではない賞賛は、彼自身の敗戦の暗示で中断されました。

 

 His maudlin address seemed designed to echo Gen. Douglas MacArthur's farewell and perhaps to suggest a subtext of "I shall return" if Mr. Bush falters in November.

 彼の感傷的な演説は、ブッシュ氏が 11 月に動揺した場合、おそらく、ダグラス・マッカーサー元帥の別れと「私は戻って来る」という言葉を想い起こさせるように作られたように思えます。

 

(単語の整理)

・maudlin 感傷的な、涙もろい

・address (正式な)挨拶、演説

・echo (~を)反響させる、鳴り響く、同調する

・farewell 別れの言葉、告別の挨拶

・subtext 根底にある[背後の]意味

 

 この一文では、翻訳AIはechoに苦労したようで、翻訳内容が割れたり、少しおかしい内容もありました。シロートとしては、そのニュアンスをどう日本語にするかが難しかったですね。一応、「想い起こさせる」としてみましたが、「想起させる」<同じか(笑)>、「結び付けさせる」も頭に浮かびました。そこで、社説データベースでechoが使われたものを検索してみると、山のように出てきて、翻訳がなかなか難しかったのですが、それはまたの機会にしましょう。

 

 蛇足になりますが、この社説では、マケイン氏は実際には演説でI shall return を使っていないと読めます。それを想起させるような演説だったのかも知れませんが、それはニューヨーク・タイムズの解釈です。いわば「あなたの感想ですよね」(笑)なので、実際にマケイン氏がそうした思いで演説をしたのかどうかは分かりません。それを敢えて文字にしたということは、同紙はマッカーサーのこの言葉が当時バカにされていたことを忘れてしまったのか、それとも知っていてブッシュ氏とマケイン氏を揶揄したのでしょうか。

 頭が痛くなってきたので(笑)これで終わります。

 

(注)このブログの内容を使った結果について、管理人は一切の責任を負いませんので、自己責任でお願いします。