ぬばたま まどろみのなか 時間はふる過差のごとく 降り積む聴こゆ 夜空へと月光の曲は吸われたり 一音づつを連ねて 蝶々は枝に卵を産みつけし 真夏の朝を知らず眠りぬ ぬばたまの闇を産みたる傘ごし 感官にみるカドミウムを含んだ 致死量の絵の具のいろの夜 籠りたるさかなとなりて痛む胸鰭 冷たく温き生き物をくちびるに受く 廃棄されたるコンピューターの記憶は 藍の雫をこぼす また時雨きてよりゆくこころ