あの忌々しい事件から10年、俺も魅音も大学を卒業して今は雛見沢に戻ってきている。
今は今日から開店の魅音のおじさんのエンジェルモート2号店の店長を任されている
「おい、魅音そろそろ開店だろ。レナはまだ来ないのか?」
「え、まだ来てないの?」
と開店の準備で掃除している手を止めてこっちを振り向いた。
「まったくなにやってんのよ。今日はグランドオープンで忙しくなるのに」
そう、このエンジェルモート2号店は今日から開店なのである、店員は今のところ俺と魅音とレナと沙都子の4人だ。
だが、このクソ忙しいグランドオープンの開店30分前に店にいるのは俺と魅音の二人だけだ。
レナは大方外の行列につかまっているのだろう。
まあ、着いたら馬車馬のように働いてくれるから心配はない。
問題はもう一人の従業員の沙都子の方だ。
どうやら、昨日の夜、突然自衛隊から電話がかかってきたらしく、今は富士の樹海に訓練用トラップをしかけにいっているようだ。
多分夜には帰ってくるだろう
それにしても、と窓の前にたって外を覗いてみるとすごい行列ができている。
本当にこれを3人で回せるのか?と疑問に思っていると、
ギィ~
と裏口が開く音がした。
「遅いぞレ………」
レナが入ってきたのかと思って振り向くとそこには詩音と悟史が立っていた。
「はろろ~ん、けいちゃん。どう、しっかりやってる?
もしかして、窓の外をみて少しおびえてるのかな~」
店にはいてくるなりこの挑発。悟史もいつものことながら詩音の発言に苦笑いを浮かべながらことの成り行きをうかがっている。
「ちょっと、詩音。からかいに来たなら帰ってよ。グランドオープンで忙しいんだから」
どうやらいつもの姉妹喧嘩が始まってしまったみたいだ。
姉妹でわいわいしているのを遠めに見て
「おい、悟史。今から手伝ってくれないか?
どうやらレナが行列に巻き込まれてるみたいでまだ着かないんだよ。頼む!!」
と悟史に相談したら、
「もちろん、そのつもりで着たんだよ。沙都子の代わりになれるかはわからないけど。いきなり休まれたら仕事にならないんじゃないかと思ってね。開店初日でクビになったらさすがの妹がかわいそうだからね」
とうれしいことに沙都子の代わりを買って出てくれた。
と言うことは、
「おい、詩音。お前が働いてくれなきゃ大事な義妹がクビになるぞ~」
と軽く言うと、
「ちょ、ちょっと待ってよ。働けばいいんでしょ?
そうすれば沙都子はクビにならなくてすむんでしょ?」
と心配になったらしく急におどおどし始めた。
「ああ、そうだな。ていうか、もともとそのつもりできたんだろ?素直じゃないな~
俺ら3人じゃ無理だと思って。と言っても、悟史が一緒に働いて4人になったところで大して代わらないっていうのもわかってるんだろ?それで、着いてきたんだろ?」
悟史は圭一の発言に「む~」と言っていたが、詩音は
「そうですよ、普通の日だったら、お姉と圭ちゃんとレナさんと沙都子の4人いればまわせると思いますけど、今日はなんていったってグランドオープンですからね。しかも、沙都子の代わりが悟史君じゃ、どんなにがんばっても回るわけないじゃないですか」
とこれまた聞いてる悟史は拗ねたように「む~」と言っている。
「ちょっと待ってよ。僕だって沙都子と同じように仕事だってできるよ」
と反論したが、詩音は悟史が少し拗ねているのを知って、頭をなでながら
「そんなに怒らないでください。わかってますよ。悟史くんがしっかり働けるってことぐらい」
と見上げるように言った。
悟史は照れて何もいえなくなっているが、その二人を見ていた魅音が
「あちぁ~、悟史の奴もう尻にしかれてるな~」
「ああ、でも詩音のあの表情は本当にドキッとするんだよな~」
と答えた後、魅音を見てみると
「また、詩音のことばっかりほめて、どうせ私は可愛くないですよ~だ」
といって拗ねてしまった。
そんな表情ばかりをしていれば可愛いのになと思っていると、
ガチャ
とドアが開き、
「ごめんなさい、下の行列の中に梨花ちゃんがいたから一緒に中に入ろうとしたら、梨花ちゃん信者の人たちに足止めされちゃって」といって中に入って来ると確かに後ろから梨花ちゃんが入って来た。
部活メンバーで一番代わったのは梨花ちゃんだろう。黒い髪は前のとおり伸ばしているが、表情や言動から子供らしさが消えて、どこか妖艶さが漂っている。
昔から時々大人っぽい言動をすることが多かったけど、今ではその物言いが普通になっている。
「本当に何なのよ、人の顔を見るなりうじゃうじゃ寄ってきて、もう、勘弁してよ」
と本当にうんざりしたように言い放った。
「おはよう、梨花ちゃん。今日は良く来てくれたね。話す時間はできないかも知れないけどゆっくりしてってよ」と梨花ちゃんに言うと
「けいいち~」
と昔のような子供っぽい物言いで近づいてきた。
「どうして僕だけお店で働かせてくれないのですか~?みんなはたのしそうなのに~」
と急に涙目になっていた。
きた!
雛見沢はおろか、興宮の男心と財布の紐をがっちりキャッチして離さない甘え声、このコトバが出てくるとどうしてもどうも弱い。
「ごめんよ、梨花ちゃん。本当は手伝ってもらおうと思ってたんだけど、葛西さんに梨花ちゃんが今やめられると困ると言われたから引き抜けなかったんだよ。本当にごめん」
と言うと甘えモードだった梨花ちゃんの表情が変わり、
「あの髭め、私の楽しみを邪魔しやがって、今度なめたこといったらすぐに店をやめてやるんだから」
と暗黒闘気をまといながらつぶやいた。
そう、今梨花ちゃんは興宮の葛西さんが支配人をしている店で働いている。
しかも、すぐにトップにのし上がり、親衛隊もできている。
しかし、店の中と外とでは態度が違うにもかかわらず、店で出る天使の笑顔が忘れられずリピーターが後を絶たない状態である。
そのせいで葛西さんも頭が上がらくなっているのだ。
「それはそうと梨花ちゃん。今日は手伝ってくれるんだろ。もうすぐ開店だから頼むよ」
さっきの話の流れからして手伝いたかったのだと予想を立てると
「当たり前よ。そのつもりで来たんだから」
と言い放ったが顔は楽しそうだった。
「ありがとう」
と言って近づいて頭に手を載せて悟史のお株を奪うように頭をなでた。
「み、み~、ちょっと圭一、何してるのみんなの前で恥ずかしいじゃない」
と恥ずかしながら手を払いのけた。
俺は、いつかのように
「ごめんね、きれいな髪だったからつい触ってしまった。罪作りな髪だね 梨花」
「よ、呼び捨てにされたです~」
と甘えモードと素の間の本当に恥ずかしそうにうろたえているそんな梨花ちゃんを見ていると、もう一息と思い。
「可愛いよ リ・カ」と顔を近づけながらいった。
ポンと可愛い音を立てながら湯気を出している梨花ちゃんを見ていると
「ちょ、ちょ、ちょ、圭ちゃん、な、なにしてんのさ~」
と顔を紅くした魅音が近づいてきた。
「そうだな、もう開店の時間だな」
と時計を見ると9時55分、開店5分前になっていた。
「じゃあ、今日はみんながんばって働いてくれよ。興宮はおろか雛身沢中の人間が来るんだ。一号店をすっからかんにしてやろうぜ」
という号令とともに
「お~ぅ」
と言う声が返ってきた。
と思ったらドアの外からも
「K~、K~」
と聞き覚えのある声が聞こえてきた。
その声はどんどん大きくなり、開店の10時になったら外に並んでいる客が全員で歓声を上げていた。ドアを開けて
「おっしゃ~、みんな待たせたな。開店だ~」
と叫ぶと、列の一番前にいた亀田君が
「おぉぉぉぉぉ」
と言いながら店の中に入ってきた。
「おいおい、いくらなんでもこんなに入りきらないぞ」
雄たけびを上げながら入ってくる客を席に案内しながら、圭一は不安を覚えた。
「ケ~イ、なぜ教えてくれなかった。俺も知ってれば開店の準備ぐらいには来れたのに」
心底悔しそうに亀田君は訴えてきた。
「そんなことをいっても、亀田君は今やプロ野球界のエースじゃないか。準備を手伝うっていったて試合を休まないといけなくなるだろ」
「そんなことは関係ない。俺の人生の恩人であるKのためなら、試合を1試合休むことになろうが
1シーズン休むことになろうが関係はない、だから、次からは気兼ねなく呼んでくれ」
なんか、とてつもなく熱い話をしながら亀田君はケーキをむさぼり始めた。
開店から2時間
最初はエンジェルモートのファンが行列をなしていたが、今は一般客のランチタイムへと移行している。亀田君たち往年エンジェルモートファンは、
「またあとで来る!!」
と言い残し、一般客へ席を明け渡した。どうやら、今後のことも考えてくれているようだった。
カランコロ~ン
ドアの鐘がなり目を向けると、入江先生と鷹野さん、富竹さんが立っていた。
「おや、盛況だね」
富竹さんは入ってくるなり席を見渡してそういった。
「はい、おかげさまで満員御礼ってとこですよ。そういえば、富竹さんと鷹野さん結婚したんですよね。おめでとうございます」
「ありがとう」
鷹野さんはあの頃の笑顔とは見違えるような清々しい笑顔で答えた。
「いや、参ったな。お祝いにきたつもりが逆にお祝いを言われると思ってなかったよ」
富竹さんはテレながら答えた。
「本当にめでたいですね。ところで前原くん。沙都子ちゃんと梨花ちゃんはどこにいるんですか」
入江先生は相変わらず、沙都子と梨花ちゃんのことしか頭の中に入ってないようだ。
「ああ、沙都子は自衛隊に借り出されて富士の樹海に行ってます。
梨花ちゃんはホールで働いてますよ。
ところで、富竹さん、今日沙都子を休みにしたのは富竹さんなんですよね。
昨日の夜、電話したんですよね」
入江先生に梨花ちゃんが働いているのを指差した後、富竹さんへの詰問に入った。
「あらあら、前原君。ジローさんをあまりいじめないでね。上からの命令なんだもん、ジローさんには責任はないわ」
と鷹野さんがフォローしたが
「いやいや、そんなことはないよ。僕がもう少し上の立場にいたら沙都子ちゃんも一緒に開店の用意ができていたんだからね。本当に申し訳ない」
といって富竹さんは頭を下げた。
「なんて、ウソですよ。確かにみんなで開店の準備ができればよかったですけれど、悟史も詩音も手伝いに来てくれてますからね。今は、沙都子一人いなくても大丈夫ですよ」
「そうか、本当にみんな勢ぞろいなんだね。でも、僕からもさっき要請しといたけど、訓練が終わり次第沙都子ちゃんはヘリで送ってもらえるようになってるから、夜にはくるよ」
といって富竹さんはウインクした。
「あ、席が空いたみたいですね。今日は楽しんでってください」
と富竹さんたちを案内して別れを告げた。
それから3時間後
富竹さんたちが帰って2時間後
時間は3時になっている。
レナたちも疲れが見えてきていたが、客足が途絶えることがなく、今も行列ができている。
「ね、ねぇ圭ちゃん、開店からお客さんが途切れることがないんだけど、どういうことだと思う」
魅音が泣き言を言ってきた。
「ほんとに今日は雛身沢の村人と興宮の人が全員来てるんじゃないか」
二人で泣き言を言い始めたらレナも入ってきて
「そうだね、何かおかしいぐらいに人が入ってるよね。もしかしたら、みーちゃんのおばあちゃんが動き出してるのかもしれないね」
とさらっと怖いことをいい始めた。
もしそれが本当だったら、今日は村人全員が来ること間違いない。
「ま、まさかな。たかが親戚の店の2号店のために村人全員を動かしたりはしないだろ」
冷や汗を流しながら魅音に同意を求めると
「そ、そ、そうだよ。そんなことはないよ。多分」
語尾が聞き取れなかったが、魅音も恐怖を感じていただろう。
「ちょっとなにサボってんのよ。私も少し休みたいんだけど」
といって不機嫌そうな梨花ちゃんが輪に加わった。
「あ、梨花ちゃんおつかれ様。さっきっからひっきりなしに親衛隊めぐりに行ってたね」
「もう本当にうんざりよ。何なのあれ、せっかく違う店で働いてんだからいつもと違う客の相手をしたいわよ」
と毒づき始めた。
「まあ、まあ、梨花ちゃん。今から、しばらくの間休憩してていいから、休憩が終わったらもう少しあいつらの面倒を見てくれよ。後でサービスするからさ」
と何とか梨花ちゃんの機嫌を直そうと思っていったことだったが。
その答えは
「にぱ~、本当なのですか圭一」
と天使の笑顔を見せた後
「その言葉、忘れないでね」
と悪魔と見まごうほどの妖艶な笑顔を見せた。
「ちょ、ちょっと待て、梨花ちゃん。だ、大丈夫だと思うけど俺にできることにしてくれよ」
梨花ちゃんの笑顔に恐怖を感じて釘をさすように告げたが、それが逆効果だったのか
「そうね、圭一にできることだったら何でもしてくれるということかしら。楽しみにしているわ」
と告げて休憩を取るために外に出て行った。
「大丈夫なの圭一君?」
「そうだよ、あんな約束して本当に大丈夫なの?」
レナも魅音も心配になったのか俺に問いかけたが、仲間を信じる。あの雛身沢の事件のあと俺が学んだ大事なことの一つを思い出し、
「ああ、大丈夫だよ。梨花ちゃんもあんなことをいってるけど、そんなに大変なことは頼まないよ」
と、そのときの俺は、梨花ちゃんがあんなことを言い出すとは露ほども思っていなかったため、あの笑顔は照れ隠しなのだと思っていたが、まさか、あんなことになるとは…
「お~ほっほっほ。みなさま方お待たせいたしました。私、只今戻ってきました」
いつもの高笑いが聞こえてきたのは閉店2時間前の夜8時のことだった。
「お、沙都子やっと戻ってきたな。すまんが、すぐにホールに出てくれ。休んでる時間なんてないぞ、目指すわ商品完売だ」
迷彩服で現れた沙都子に、間髪を居れずに命令をすると、いつもどおりの蔑んだ言い方で
「あらあら、圭一さん。どうやら大変困っているご様子ですね~。やっぱり私が居なくては店が回らなかったのかしら~」
といっていたがこちらには沙都子をへこます一撃必殺がある。
口先の魔術師をなめるなよ。
「ああ、そうだな、沙都子が居なくて店が回らなかったよ」
ここまでは、いつもの声のトーン。
沙都子も、まだ俺が何をしようとしているのかがわかってないように高笑いをしようとしたとき、それをさえぎるように怒涛の攻めに移った
「だがな、この込み具合が予想できていたから、わざわざ開店前にエンジェルモートに修行に行っていた人材が来ずに、ブロッコリーとカリフラワーの区別もつかない兄とキッチンに入るなり缶詰こわーいといってホールしかできない詩音をおいて、森の中で特技を披露しにいった馬鹿女のせいだけどな。
そもそも、開店フェアーで忙しくなる明日はガンバローとかいったにも関わらず自分は夜中にいきなり電話をかけてきて明日は休ませていただきますとかいって、今頃になってのこのこ高笑いを浮かべて参上するような奴に今までの俺らのがんばりを 笑う資格はな~い!!
「う、そ、そんな~」
といって泣き出しそうになりながら跪いてしまった。
が、そんなのはどうでも良かった。
いま、一番心配しないといけないのは、俺の後ろにひしひしと感じている嫌な殺気だった
「ちょっと圭ちゃん、その言い草はどういうことかしら、わざわざ、私の可愛い沙都子をいじめるだけでは飽き足らず、悟史君ならびに私まで侮辱するだなんて」
目を吊り上げて怒る詩音の顔を見るなり、殺されると思った俺は、
「す、すまん、今のは言葉のあやだ。沙都子にも誤るから許してくれ」
と土下座をする勢いで誤ると、さっきまで跪いていた沙都子の表情が変わり
「(ニヤリ)」
少しづつ顔を上げた。
しかし、その顔にはさっきのニヤリとした表情はなくなっており、涙を浮かべていた。
「ひ、酷いですわ。圭一さん、私だっていきたくて行ったわけではなくってよ。突然拉致されるかのようにヘリに連れ込まれて、それでも、心配させてはいけないと圭一さんに無理を言って電話をしたのに~」
と言い訳を始めた。
しかし、さっきのニヤリが気になっていた俺は、どうしても信じることができなかったが、もともと、沙都子がだまそうとしていたのは俺ではなかったようだった。
「あ~、なんて可愛そうな沙都子。もう、こんな店長のことなんてほっといて帰りましょう」
そう、沙都子の標的は最初から俺ではなく詩音だったのだ。
詩音は、わき目も振らずに悟史と沙都子の手をとって帰り支度を始めた。
このままでは、本格的に店が回らなくなってしまう。
そう思った矢先思いも寄らないところから助け舟が来た。
「ちょ、ちょっと詩音、僕は帰らないよ」
あの『む~』としかしゃべれないと思い込んでいた悟史が助けてくれようとしているのだ
「そもそも、圭一君の言い分も正しいわけだし、もしここで帰ってしまったら、結局沙都子は働くトコがなくなっちゃうんだよ。そんなの兄として認められないよ」
「あ、ありがとう。悟史、お前本当にいい奴だな。完全に詩音の尻に敷かれてるわけじゃないんだな」
と本心がほんの少しだけ出てしまったが
「む~?」
という反応からして、聞こえてはなかったんだろう。
そして、最愛の人から反対された詩音はどうしていいのかおろおろするばかりだった。
なので、道を示してやるのが一番いいのではないかと思い、一言助言してやることにした。
「おい、詩音。お前今どこに住んでるんだ?」
「え?」
何で今頃そんな質問をするのか心底わからないという表情を浮かべながら
「悟史君たちのうちに泊まってますよ」
といって沙都子と悟史のほうを見た。
ここまでくればもうそこ
「沙都子が働きに出てる間は悟史といっしょに居れるんだぜ」
ガーン
今更になって気づいたのか?晴天の霹靂といわんばかりにショックを受けている詩音。
しかし、そんなのは関係ない、ここまで優位に立ったのだ。さっさとこの茶番を終わらせるために
最後の一仕事だ。
「おい、詩音。最近いつ悟史とデートしてきたんだ?このところ沙都子がじゃまでろくにいちゃいちゃできなかったんだろう?」
全てを見てきたかのようなこのいいよう。まあ、種を明かせば全て魅音からの情報なのだが、まあ、あるものは利用する。
これが口先の魔術師の本領発揮だぜ!!
「この先、沙都子が店に居れなくなったら二人の時間はもっと減るんだぜ。それでいいならみんなで帰ってくれもかまわん」
最後の言葉を聴き終わると、詩音は肩をわなわなと振るわせ始めた。
「圭ちゃん、それは本当なの?沙都子が居なくなれば二人っきりの時間が取れるの?」
よし、引っかかった。ここまできたらもう安心だ。
詩音は完全に悟史とのラブラブ生活の妄想を働かせている。
こうなれば後は沙都子にさっきまでの復讐をするまでだ。
「安心してくれ詩音。沙都子はうちの店で朝から晩まで働いてもらうことになるから、その間は悟史とおまえの二人っきりの時間だ。俺が保証する!!
だから、今日のところは二人っきりの時間のためだと割り切って働いてくれ、頼む」
俺の言葉をさえぎるかのようにすごい勢いで詩音はホールへと走って仕事をし始めた。
悟史はというとそんな詩音の行動を見て苦笑いを浮かべながらキッチンに戻っていった。
残された沙都子は、
「おに~、あくま~」
といつまでたっても小学生のような言葉を発し続けていた。
本当に見た目しか変わってない奴だ。
とあきれていると
外からすごい音が響き始めていた。
いや、音ではなく歓声のようなものだった。
さっきの言い争いでいつの間にかオーダーストップになっていたのに気づいた。
沙都子に早く着替えて片付けだけでも手伝うように告げると、伝票の整理に取り掛かった。
しかし、伝票の整理をしようにも、外でこんなに歓声が上がっていると集中がどうしても途切れてしまう。何とか伝票の整理とキッチン、ホールの片づけが終わったのは閉店時間から30分後の10時半だった。
「はぁ~、みんなお疲れ様~」
最後の仕上げにみんなにねぎらいの言葉とコーヒーを配っていると、みんなからも喫茶店としてはうれしい悲鳴が聞こえてきた。
「け、圭ちゃん。明日からはこんなことないよね?用意していた分のケーキと本店のケーキをほぼ全てこの店だけで売ってたんだよ。明日もこんなにお客さんが来たら私たちだけで回しきれないよ~」
と魅音
「あ、あれ。膝が大爆笑しててたてないよ~。明日もこんなことになるのかな?かな?」
とレナ
「むぅ~」
と悟史
「こ、これで明日からは夢の………」
と詩音
「もう駄目、こんなの千年の魔女にも耐えれない。こんなことならまだあのときのほうが良かったわよ」
と梨花ちゃん
「うぅ~、明日からが地獄ですわ。この陰険店長の下で仕事をしないといけないなんて~。しかもこの込みようですし~」
と沙都子
まあ、なんにしてもエンジェルモート圭一店は大繁盛のうちに初日を終えた。
続く
すみません、使い回しです
梅雨も明ければひぐらしが鳴き始めます
なので、あの苦しんだ卒論と同じ分量の作品を
忘れられないうちにあげます
まあ、ひぐらしネタでは一番長く
それなりにかけていると思うので久しぶりに読む方も
初めて読む方もどうぞお楽しみください
ひぐらしのなく頃に~エンジェルモート圭一店 営業編
今は今日から開店の魅音のおじさんのエンジェルモート2号店の店長を任されている
「おい、魅音そろそろ開店だろ。レナはまだ来ないのか?」
「え、まだ来てないの?」
と開店の準備で掃除している手を止めてこっちを振り向いた。
「まったくなにやってんのよ。今日はグランドオープンで忙しくなるのに」
そう、このエンジェルモート2号店は今日から開店なのである、店員は今のところ俺と魅音とレナと沙都子の4人だ。
だが、このクソ忙しいグランドオープンの開店30分前に店にいるのは俺と魅音の二人だけだ。
レナは大方外の行列につかまっているのだろう。
まあ、着いたら馬車馬のように働いてくれるから心配はない。
問題はもう一人の従業員の沙都子の方だ。
どうやら、昨日の夜、突然自衛隊から電話がかかってきたらしく、今は富士の樹海に訓練用トラップをしかけにいっているようだ。
多分夜には帰ってくるだろう
それにしても、と窓の前にたって外を覗いてみるとすごい行列ができている。
本当にこれを3人で回せるのか?と疑問に思っていると、
ギィ~
と裏口が開く音がした。
「遅いぞレ………」
レナが入ってきたのかと思って振り向くとそこには詩音と悟史が立っていた。
「はろろ~ん、けいちゃん。どう、しっかりやってる?
もしかして、窓の外をみて少しおびえてるのかな~」
店にはいてくるなりこの挑発。悟史もいつものことながら詩音の発言に苦笑いを浮かべながらことの成り行きをうかがっている。
「ちょっと、詩音。からかいに来たなら帰ってよ。グランドオープンで忙しいんだから」
どうやらいつもの姉妹喧嘩が始まってしまったみたいだ。
姉妹でわいわいしているのを遠めに見て
「おい、悟史。今から手伝ってくれないか?
どうやらレナが行列に巻き込まれてるみたいでまだ着かないんだよ。頼む!!」
と悟史に相談したら、
「もちろん、そのつもりで着たんだよ。沙都子の代わりになれるかはわからないけど。いきなり休まれたら仕事にならないんじゃないかと思ってね。開店初日でクビになったらさすがの妹がかわいそうだからね」
とうれしいことに沙都子の代わりを買って出てくれた。
と言うことは、
「おい、詩音。お前が働いてくれなきゃ大事な義妹がクビになるぞ~」
と軽く言うと、
「ちょ、ちょっと待ってよ。働けばいいんでしょ?
そうすれば沙都子はクビにならなくてすむんでしょ?」
と心配になったらしく急におどおどし始めた。
「ああ、そうだな。ていうか、もともとそのつもりできたんだろ?素直じゃないな~
俺ら3人じゃ無理だと思って。と言っても、悟史が一緒に働いて4人になったところで大して代わらないっていうのもわかってるんだろ?それで、着いてきたんだろ?」
悟史は圭一の発言に「む~」と言っていたが、詩音は
「そうですよ、普通の日だったら、お姉と圭ちゃんとレナさんと沙都子の4人いればまわせると思いますけど、今日はなんていったってグランドオープンですからね。しかも、沙都子の代わりが悟史君じゃ、どんなにがんばっても回るわけないじゃないですか」
とこれまた聞いてる悟史は拗ねたように「む~」と言っている。
「ちょっと待ってよ。僕だって沙都子と同じように仕事だってできるよ」
と反論したが、詩音は悟史が少し拗ねているのを知って、頭をなでながら
「そんなに怒らないでください。わかってますよ。悟史くんがしっかり働けるってことぐらい」
と見上げるように言った。
悟史は照れて何もいえなくなっているが、その二人を見ていた魅音が
「あちぁ~、悟史の奴もう尻にしかれてるな~」
「ああ、でも詩音のあの表情は本当にドキッとするんだよな~」
と答えた後、魅音を見てみると
「また、詩音のことばっかりほめて、どうせ私は可愛くないですよ~だ」
といって拗ねてしまった。
そんな表情ばかりをしていれば可愛いのになと思っていると、
ガチャ
とドアが開き、
「ごめんなさい、下の行列の中に梨花ちゃんがいたから一緒に中に入ろうとしたら、梨花ちゃん信者の人たちに足止めされちゃって」といって中に入って来ると確かに後ろから梨花ちゃんが入って来た。
部活メンバーで一番代わったのは梨花ちゃんだろう。黒い髪は前のとおり伸ばしているが、表情や言動から子供らしさが消えて、どこか妖艶さが漂っている。
昔から時々大人っぽい言動をすることが多かったけど、今ではその物言いが普通になっている。
「本当に何なのよ、人の顔を見るなりうじゃうじゃ寄ってきて、もう、勘弁してよ」
と本当にうんざりしたように言い放った。
「おはよう、梨花ちゃん。今日は良く来てくれたね。話す時間はできないかも知れないけどゆっくりしてってよ」と梨花ちゃんに言うと
「けいいち~」
と昔のような子供っぽい物言いで近づいてきた。
「どうして僕だけお店で働かせてくれないのですか~?みんなはたのしそうなのに~」
と急に涙目になっていた。
きた!
雛見沢はおろか、興宮の男心と財布の紐をがっちりキャッチして離さない甘え声、このコトバが出てくるとどうしてもどうも弱い。
「ごめんよ、梨花ちゃん。本当は手伝ってもらおうと思ってたんだけど、葛西さんに梨花ちゃんが今やめられると困ると言われたから引き抜けなかったんだよ。本当にごめん」
と言うと甘えモードだった梨花ちゃんの表情が変わり、
「あの髭め、私の楽しみを邪魔しやがって、今度なめたこといったらすぐに店をやめてやるんだから」
と暗黒闘気をまといながらつぶやいた。
そう、今梨花ちゃんは興宮の葛西さんが支配人をしている店で働いている。
しかも、すぐにトップにのし上がり、親衛隊もできている。
しかし、店の中と外とでは態度が違うにもかかわらず、店で出る天使の笑顔が忘れられずリピーターが後を絶たない状態である。
そのせいで葛西さんも頭が上がらくなっているのだ。
「それはそうと梨花ちゃん。今日は手伝ってくれるんだろ。もうすぐ開店だから頼むよ」
さっきの話の流れからして手伝いたかったのだと予想を立てると
「当たり前よ。そのつもりで来たんだから」
と言い放ったが顔は楽しそうだった。
「ありがとう」
と言って近づいて頭に手を載せて悟史のお株を奪うように頭をなでた。
「み、み~、ちょっと圭一、何してるのみんなの前で恥ずかしいじゃない」
と恥ずかしながら手を払いのけた。
俺は、いつかのように
「ごめんね、きれいな髪だったからつい触ってしまった。罪作りな髪だね 梨花」
「よ、呼び捨てにされたです~」
と甘えモードと素の間の本当に恥ずかしそうにうろたえているそんな梨花ちゃんを見ていると、もう一息と思い。
「可愛いよ リ・カ」と顔を近づけながらいった。
ポンと可愛い音を立てながら湯気を出している梨花ちゃんを見ていると
「ちょ、ちょ、ちょ、圭ちゃん、な、なにしてんのさ~」
と顔を紅くした魅音が近づいてきた。
「そうだな、もう開店の時間だな」
と時計を見ると9時55分、開店5分前になっていた。
「じゃあ、今日はみんながんばって働いてくれよ。興宮はおろか雛身沢中の人間が来るんだ。一号店をすっからかんにしてやろうぜ」
という号令とともに
「お~ぅ」
と言う声が返ってきた。
と思ったらドアの外からも
「K~、K~」
と聞き覚えのある声が聞こえてきた。
その声はどんどん大きくなり、開店の10時になったら外に並んでいる客が全員で歓声を上げていた。ドアを開けて
「おっしゃ~、みんな待たせたな。開店だ~」
と叫ぶと、列の一番前にいた亀田君が
「おぉぉぉぉぉ」
と言いながら店の中に入ってきた。
「おいおい、いくらなんでもこんなに入りきらないぞ」
雄たけびを上げながら入ってくる客を席に案内しながら、圭一は不安を覚えた。
「ケ~イ、なぜ教えてくれなかった。俺も知ってれば開店の準備ぐらいには来れたのに」
心底悔しそうに亀田君は訴えてきた。
「そんなことをいっても、亀田君は今やプロ野球界のエースじゃないか。準備を手伝うっていったて試合を休まないといけなくなるだろ」
「そんなことは関係ない。俺の人生の恩人であるKのためなら、試合を1試合休むことになろうが
1シーズン休むことになろうが関係はない、だから、次からは気兼ねなく呼んでくれ」
なんか、とてつもなく熱い話をしながら亀田君はケーキをむさぼり始めた。
開店から2時間
最初はエンジェルモートのファンが行列をなしていたが、今は一般客のランチタイムへと移行している。亀田君たち往年エンジェルモートファンは、
「またあとで来る!!」
と言い残し、一般客へ席を明け渡した。どうやら、今後のことも考えてくれているようだった。
カランコロ~ン
ドアの鐘がなり目を向けると、入江先生と鷹野さん、富竹さんが立っていた。
「おや、盛況だね」
富竹さんは入ってくるなり席を見渡してそういった。
「はい、おかげさまで満員御礼ってとこですよ。そういえば、富竹さんと鷹野さん結婚したんですよね。おめでとうございます」
「ありがとう」
鷹野さんはあの頃の笑顔とは見違えるような清々しい笑顔で答えた。
「いや、参ったな。お祝いにきたつもりが逆にお祝いを言われると思ってなかったよ」
富竹さんはテレながら答えた。
「本当にめでたいですね。ところで前原くん。沙都子ちゃんと梨花ちゃんはどこにいるんですか」
入江先生は相変わらず、沙都子と梨花ちゃんのことしか頭の中に入ってないようだ。
「ああ、沙都子は自衛隊に借り出されて富士の樹海に行ってます。
梨花ちゃんはホールで働いてますよ。
ところで、富竹さん、今日沙都子を休みにしたのは富竹さんなんですよね。
昨日の夜、電話したんですよね」
入江先生に梨花ちゃんが働いているのを指差した後、富竹さんへの詰問に入った。
「あらあら、前原君。ジローさんをあまりいじめないでね。上からの命令なんだもん、ジローさんには責任はないわ」
と鷹野さんがフォローしたが
「いやいや、そんなことはないよ。僕がもう少し上の立場にいたら沙都子ちゃんも一緒に開店の用意ができていたんだからね。本当に申し訳ない」
といって富竹さんは頭を下げた。
「なんて、ウソですよ。確かにみんなで開店の準備ができればよかったですけれど、悟史も詩音も手伝いに来てくれてますからね。今は、沙都子一人いなくても大丈夫ですよ」
「そうか、本当にみんな勢ぞろいなんだね。でも、僕からもさっき要請しといたけど、訓練が終わり次第沙都子ちゃんはヘリで送ってもらえるようになってるから、夜にはくるよ」
といって富竹さんはウインクした。
「あ、席が空いたみたいですね。今日は楽しんでってください」
と富竹さんたちを案内して別れを告げた。
それから3時間後
富竹さんたちが帰って2時間後
時間は3時になっている。
レナたちも疲れが見えてきていたが、客足が途絶えることがなく、今も行列ができている。
「ね、ねぇ圭ちゃん、開店からお客さんが途切れることがないんだけど、どういうことだと思う」
魅音が泣き言を言ってきた。
「ほんとに今日は雛身沢の村人と興宮の人が全員来てるんじゃないか」
二人で泣き言を言い始めたらレナも入ってきて
「そうだね、何かおかしいぐらいに人が入ってるよね。もしかしたら、みーちゃんのおばあちゃんが動き出してるのかもしれないね」
とさらっと怖いことをいい始めた。
もしそれが本当だったら、今日は村人全員が来ること間違いない。
「ま、まさかな。たかが親戚の店の2号店のために村人全員を動かしたりはしないだろ」
冷や汗を流しながら魅音に同意を求めると
「そ、そ、そうだよ。そんなことはないよ。多分」
語尾が聞き取れなかったが、魅音も恐怖を感じていただろう。
「ちょっとなにサボってんのよ。私も少し休みたいんだけど」
といって不機嫌そうな梨花ちゃんが輪に加わった。
「あ、梨花ちゃんおつかれ様。さっきっからひっきりなしに親衛隊めぐりに行ってたね」
「もう本当にうんざりよ。何なのあれ、せっかく違う店で働いてんだからいつもと違う客の相手をしたいわよ」
と毒づき始めた。
「まあ、まあ、梨花ちゃん。今から、しばらくの間休憩してていいから、休憩が終わったらもう少しあいつらの面倒を見てくれよ。後でサービスするからさ」
と何とか梨花ちゃんの機嫌を直そうと思っていったことだったが。
その答えは
「にぱ~、本当なのですか圭一」
と天使の笑顔を見せた後
「その言葉、忘れないでね」
と悪魔と見まごうほどの妖艶な笑顔を見せた。
「ちょ、ちょっと待て、梨花ちゃん。だ、大丈夫だと思うけど俺にできることにしてくれよ」
梨花ちゃんの笑顔に恐怖を感じて釘をさすように告げたが、それが逆効果だったのか
「そうね、圭一にできることだったら何でもしてくれるということかしら。楽しみにしているわ」
と告げて休憩を取るために外に出て行った。
「大丈夫なの圭一君?」
「そうだよ、あんな約束して本当に大丈夫なの?」
レナも魅音も心配になったのか俺に問いかけたが、仲間を信じる。あの雛身沢の事件のあと俺が学んだ大事なことの一つを思い出し、
「ああ、大丈夫だよ。梨花ちゃんもあんなことをいってるけど、そんなに大変なことは頼まないよ」
と、そのときの俺は、梨花ちゃんがあんなことを言い出すとは露ほども思っていなかったため、あの笑顔は照れ隠しなのだと思っていたが、まさか、あんなことになるとは…
「お~ほっほっほ。みなさま方お待たせいたしました。私、只今戻ってきました」
いつもの高笑いが聞こえてきたのは閉店2時間前の夜8時のことだった。
「お、沙都子やっと戻ってきたな。すまんが、すぐにホールに出てくれ。休んでる時間なんてないぞ、目指すわ商品完売だ」
迷彩服で現れた沙都子に、間髪を居れずに命令をすると、いつもどおりの蔑んだ言い方で
「あらあら、圭一さん。どうやら大変困っているご様子ですね~。やっぱり私が居なくては店が回らなかったのかしら~」
といっていたがこちらには沙都子をへこます一撃必殺がある。
口先の魔術師をなめるなよ。
「ああ、そうだな、沙都子が居なくて店が回らなかったよ」
ここまでは、いつもの声のトーン。
沙都子も、まだ俺が何をしようとしているのかがわかってないように高笑いをしようとしたとき、それをさえぎるように怒涛の攻めに移った
「だがな、この込み具合が予想できていたから、わざわざ開店前にエンジェルモートに修行に行っていた人材が来ずに、ブロッコリーとカリフラワーの区別もつかない兄とキッチンに入るなり缶詰こわーいといってホールしかできない詩音をおいて、森の中で特技を披露しにいった馬鹿女のせいだけどな。
そもそも、開店フェアーで忙しくなる明日はガンバローとかいったにも関わらず自分は夜中にいきなり電話をかけてきて明日は休ませていただきますとかいって、今頃になってのこのこ高笑いを浮かべて参上するような奴に今までの俺らのがんばりを 笑う資格はな~い!!
「う、そ、そんな~」
といって泣き出しそうになりながら跪いてしまった。
が、そんなのはどうでも良かった。
いま、一番心配しないといけないのは、俺の後ろにひしひしと感じている嫌な殺気だった
「ちょっと圭ちゃん、その言い草はどういうことかしら、わざわざ、私の可愛い沙都子をいじめるだけでは飽き足らず、悟史君ならびに私まで侮辱するだなんて」
目を吊り上げて怒る詩音の顔を見るなり、殺されると思った俺は、
「す、すまん、今のは言葉のあやだ。沙都子にも誤るから許してくれ」
と土下座をする勢いで誤ると、さっきまで跪いていた沙都子の表情が変わり
「(ニヤリ)」
少しづつ顔を上げた。
しかし、その顔にはさっきのニヤリとした表情はなくなっており、涙を浮かべていた。
「ひ、酷いですわ。圭一さん、私だっていきたくて行ったわけではなくってよ。突然拉致されるかのようにヘリに連れ込まれて、それでも、心配させてはいけないと圭一さんに無理を言って電話をしたのに~」
と言い訳を始めた。
しかし、さっきのニヤリが気になっていた俺は、どうしても信じることができなかったが、もともと、沙都子がだまそうとしていたのは俺ではなかったようだった。
「あ~、なんて可愛そうな沙都子。もう、こんな店長のことなんてほっといて帰りましょう」
そう、沙都子の標的は最初から俺ではなく詩音だったのだ。
詩音は、わき目も振らずに悟史と沙都子の手をとって帰り支度を始めた。
このままでは、本格的に店が回らなくなってしまう。
そう思った矢先思いも寄らないところから助け舟が来た。
「ちょ、ちょっと詩音、僕は帰らないよ」
あの『む~』としかしゃべれないと思い込んでいた悟史が助けてくれようとしているのだ
「そもそも、圭一君の言い分も正しいわけだし、もしここで帰ってしまったら、結局沙都子は働くトコがなくなっちゃうんだよ。そんなの兄として認められないよ」
「あ、ありがとう。悟史、お前本当にいい奴だな。完全に詩音の尻に敷かれてるわけじゃないんだな」
と本心がほんの少しだけ出てしまったが
「む~?」
という反応からして、聞こえてはなかったんだろう。
そして、最愛の人から反対された詩音はどうしていいのかおろおろするばかりだった。
なので、道を示してやるのが一番いいのではないかと思い、一言助言してやることにした。
「おい、詩音。お前今どこに住んでるんだ?」
「え?」
何で今頃そんな質問をするのか心底わからないという表情を浮かべながら
「悟史君たちのうちに泊まってますよ」
といって沙都子と悟史のほうを見た。
ここまでくればもうそこ
「沙都子が働きに出てる間は悟史といっしょに居れるんだぜ」
ガーン
今更になって気づいたのか?晴天の霹靂といわんばかりにショックを受けている詩音。
しかし、そんなのは関係ない、ここまで優位に立ったのだ。さっさとこの茶番を終わらせるために
最後の一仕事だ。
「おい、詩音。最近いつ悟史とデートしてきたんだ?このところ沙都子がじゃまでろくにいちゃいちゃできなかったんだろう?」
全てを見てきたかのようなこのいいよう。まあ、種を明かせば全て魅音からの情報なのだが、まあ、あるものは利用する。
これが口先の魔術師の本領発揮だぜ!!
「この先、沙都子が店に居れなくなったら二人の時間はもっと減るんだぜ。それでいいならみんなで帰ってくれもかまわん」
最後の言葉を聴き終わると、詩音は肩をわなわなと振るわせ始めた。
「圭ちゃん、それは本当なの?沙都子が居なくなれば二人っきりの時間が取れるの?」
よし、引っかかった。ここまできたらもう安心だ。
詩音は完全に悟史とのラブラブ生活の妄想を働かせている。
こうなれば後は沙都子にさっきまでの復讐をするまでだ。
「安心してくれ詩音。沙都子はうちの店で朝から晩まで働いてもらうことになるから、その間は悟史とおまえの二人っきりの時間だ。俺が保証する!!
だから、今日のところは二人っきりの時間のためだと割り切って働いてくれ、頼む」
俺の言葉をさえぎるかのようにすごい勢いで詩音はホールへと走って仕事をし始めた。
悟史はというとそんな詩音の行動を見て苦笑いを浮かべながらキッチンに戻っていった。
残された沙都子は、
「おに~、あくま~」
といつまでたっても小学生のような言葉を発し続けていた。
本当に見た目しか変わってない奴だ。
とあきれていると
外からすごい音が響き始めていた。
いや、音ではなく歓声のようなものだった。
さっきの言い争いでいつの間にかオーダーストップになっていたのに気づいた。
沙都子に早く着替えて片付けだけでも手伝うように告げると、伝票の整理に取り掛かった。
しかし、伝票の整理をしようにも、外でこんなに歓声が上がっていると集中がどうしても途切れてしまう。何とか伝票の整理とキッチン、ホールの片づけが終わったのは閉店時間から30分後の10時半だった。
「はぁ~、みんなお疲れ様~」
最後の仕上げにみんなにねぎらいの言葉とコーヒーを配っていると、みんなからも喫茶店としてはうれしい悲鳴が聞こえてきた。
「け、圭ちゃん。明日からはこんなことないよね?用意していた分のケーキと本店のケーキをほぼ全てこの店だけで売ってたんだよ。明日もこんなにお客さんが来たら私たちだけで回しきれないよ~」
と魅音
「あ、あれ。膝が大爆笑しててたてないよ~。明日もこんなことになるのかな?かな?」
とレナ
「むぅ~」
と悟史
「こ、これで明日からは夢の………」
と詩音
「もう駄目、こんなの千年の魔女にも耐えれない。こんなことならまだあのときのほうが良かったわよ」
と梨花ちゃん
「うぅ~、明日からが地獄ですわ。この陰険店長の下で仕事をしないといけないなんて~。しかもこの込みようですし~」
と沙都子
まあ、なんにしてもエンジェルモート圭一店は大繁盛のうちに初日を終えた。
続く
すみません、使い回しです
梅雨も明ければひぐらしが鳴き始めます
なので、あの苦しんだ卒論と同じ分量の作品を
忘れられないうちにあげます
まあ、ひぐらしネタでは一番長く
それなりにかけていると思うので久しぶりに読む方も
初めて読む方もどうぞお楽しみください
ひぐらしのなく頃に~エンジェルモート圭一店 営業編