母の日の朝。

 

 

母の目が覚めない

 

 

耳元で何を話しかけても

体を揺り動かしても

 

目を閉じたまま反応がない

 

 

 

2024年5月12日、日曜日

 

 

こんなことは今までで初めてのこと

 

朝、7時ごろ様子を見に行った時は

すでに着替えを自分で済ませ

オムツも自分で履き替えて

 

いつにも増してしっかりしていた。

 

支度が早くできすぎて

ベッドに腰掛けたまま

上半身横になって二度寝してしまった様子、

 

起こそうと話しかけても

寝ぼけてはっきりしない感じなので

 

まだ時間があるから

ちゃんと横になって休んでもらうことに。

 

その後

7時半ごろ様子を見に行き

寝ている母に話しかけたのだが

応答がない

 

ついさっきは

呼びかけに返事をしていたのに

 

目を閉じたまま

全く反応がなくなってしまった。

 

 

熱は、平熱。

呼吸は、普通に穏やか

血圧は、ちょっと高め

 

苦しそうな様子はなく

ただ、眠ったまま意識が覚めない

 

 

そうこうしているうちに

時刻は、朝8時少し前

 

 

取り急ぎ

デイサービスに欠席の連絡をし、

訪問看護に往診を依頼した。

 

「二度寝したまま目が覚めないんです」

 

 

訪問してくれた看護師さんが

寝ている母に何度呼びかけても

応答なし

 

まぶたがたまにほんの少し動くので

 

聞こえてはいるけど

体が動かせないのだろうか?

見ることや話すことはできないけれど

頭の中はわかっているかも知れないと思った

 

 

看護師さんが

体温、血圧、脈拍、呼吸などチェック、

聴診器を当てて

体の音も確認してくれる。

 

血圧が180と高い以外は

特に異常は、無し。

 

相変わらず意識は戻らず

呼びかけに反応なし、

体も動かない

 

 

今のところ

何かの発作とか呼吸困難とかの

危険な症状は認められないため

 

一旦、

看護師さんは引き上げて

しばらく様子を見ることに。

 

 

と、思っていたら

 

看護師さんが引き上げたあと

訪問看護ステーションから連絡が入り

 

母の主治医に連絡して確認したところ

救急搬送して医療機関を受診するようにとの

指示が出たそう。

 

 

えっ、

救急車を呼ぶのかぁ。。。

と、一瞬ひるんだものの

 

主治医の先生の意向だし

 

そういえば母は

先週の金曜日に頭痛がして

その後、まだ少し頭が痛かった

ということもあり

 

病院で脳などに異常がないか

検査するにこしたことはない、

(何度か転倒して頭を打っていたし)

 

1日ぐらいは入院して

点滴でも打って安静にするのも

良いかもしれないとも思い

 

 

かくして

 

穏やかな日曜日の朝

 

平和な田舎の村に

救急車の音が鳴り響くこととなった。

 

 

連絡して十数分後ぐらいで

サイレンの音が聞こえ始め

 

だんだんと近づいてくる

 

変な高揚感(?)のようなものが

頭の中に湧いてくる

 

 

部屋のベッドには

すやすやと穏やかに寝ている母

 

外からは

近づくサイレンの音と人の足音

 

現実と非現実が入り混じっているような感覚

 

 

 

緊急車両が到着すると

 

上下水色でパリッとした制服の

3名の救急隊員が

 

織り目正しく手際よく

 

状況確認、指示出し、

声かけ、搬送

 

あっという間に

 

母は救急車中の人となり

私も一緒に乗り込んだ。

 

 

沿道には

驚いた村人(近所の人)たちが

わらわらと出て来て

心配そうに見守っている

 

もしかして

喪服の準備を考えた人も

いるかも知れない。。。

 

。。。

 

 

救急車の中で、母は

意識はないものの穏やかな顔で

 

血圧や脈拍なども危険な数値はなく

血糖値や酸素の量など測るも

どれも正常値の範囲内

 

そのうち、

救急隊員の呼びかけに

少し手が動くようになって来たり

目が開いたりして

徐々に体が目を覚まし始めた。

 

 

母の日頃の体調を確認され

「認知症はありますか?」

「持病はありますか?」

「耳は遠いですか?」

 

どれも「無い」と答えると

「すごいですねぇ」と

褒められた。

 

なんだか和んだ感じ?の中、

あっという間に病院に到着し

 

ER、救急病棟に搬入される

母のあとについて中へ入った。

 

。。。

 

あらためて

救急隊員から病院スタッフ等々

すべての人たちの

 

手際の良さ、迅速さ、連携の良さ、

そして最新設備の素晴らしさに

 

すごいなぁと感動した。

 

。。。。。

 

その感動は

その後の待合室での長い待ち時間中に

すっかり萎えてしまったのだが

 

半分睡眠に入ってしまいそうになり

意識を失いかけたころ

 

遠くから呼ばれているような声が聞こえて

我にかえった

 

。。

 

処置室の中に入ると

車いすに乗った小さな老婆の後ろ姿。

 

近づくと

母が普段どおりの顔で座っていた。

 

スリッパにマジックで手書きの「ER」

ベッドからそのまま来たので

履き物を貸してくれていた

 

 

まだ少しぼーっとしてはいるものの

会話はほぼ普段どおり。

 

 

聞いてみると

 

体は全く動かせなかったけど

わたしたちが話しかけていたことは

ちゃんと聞こえてわかっていたとのこと。

 

看護師さんが

とても大きな声で

耳元で自分の名前を何度も呼んだのも

覚えていた。

 

ベッドからタンカに乗せられる時に

「今から救急車に乗るからね」と

私が言ったのも覚えているとのこと。

 

母の腕には

水分補給らしき点滴が刺してある

 

血液検査の時の注射針のあとが

痛いとのこと。

 

 

しばらくすると

担当してくれた医師から説明があり

 

血液検査、心電図、超音波検査、

画像(CT)検査、

あとは呼吸心拍の一定時間観察などなど

 

どの検査も異常は認められず

 

特に処置が必要なことはなし

もちろん薬も必要なし

 

このまま「帰宅OK」が出た。

 

今回、特に何もないけれど

年齢的に、いつ何があっても

おかしくないので

気をつけてとのこと。

 

 

こんなにたくさん検査したんじゃ

確かに待ち時間が長いわけだ。

 

心配していた

脳の損傷などもなく

心臓も血液も大丈夫

 

これでひと安心。

 

 

会社を休んで

ついて来てくれた弟の車で

無事、お昼過ぎに帰宅。

 

 

心配してくれたお隣の奥さんが

会いに来てくれて

母はベッドで休みながらも

普通に会話を交わすことができた。

 

 

たった半日の出来事だったけど

 

デイサービスのスタッフや

お友達、ご近所さん、

ケアマネさんから看護師さん

主治医の先生まで

 

本当に

あたたかく見守られて

 

ありがたいことだなあと、しみじみする。

 

 

今年の母の日のギフトは

はからずも、

 

天の計らい?

天のイタズラ?なのか

 

そんなこんなのアクシデントと

いろんなことへの有難さの実感

 

ということになりました。

 

。。。。

 

 

母はその晩、夕食に

焼きそば少々と、お粥、

デザートにティラミスを食べ

大河ドラマ「光る君」を鑑賞、

その後いつも通り就寝。

 

 

今朝は至って普通に目覚めたけれど

ベッド横のポータブルトイレで

よろけて転倒

 

大きな音でかけつけると

ケガはなく、痛みもないとのことで

そのまま支度を済ませる。

 

今朝の朝食は

チーズを乗せたパンと紅茶、

デザートにバナナ1本を食し

 

無事

デイサービスへと出かけることができた。

 

。。

 

なんでもない毎日の日常が

なんだか夢まぼろしのように

儚くて貴重なものに見える。

 

死んでから

あの世で目覚めたときには

もっとそう思うんだろうなという

気がする。

 

とりあえず

生きてるだけで丸もうけ

なんだと思っておこう。