1938(昭和13)「国民精神総動員実践網要綱」『都市問題』27(1),98.

国民精神総動員中央連盟では,その実践活動の基幹となるべき「国民精神総動員実践網」の組織要綱を,過ぐる自治制発布五十周年記念日を機として発表し,その全国的実施を期し,とりあへず都市に於けるそれを確立すべく運動を開始してゐる。右実践網はその運用によって総動員運動の実践を完からしめんとするものであるが,他方市町村に於ける自治行政の恒久的補助機関たらしめんことを所期してゐる。即ち「地理的沿革に基く住民の集団的結束を固め,我国古来の旧慣たる隣保協同,相互教化の美風を発揚し,以て此の時局に対処すると共に,地方自治運営の根基を鞏固ならしめ」る。


これが具体的機構としては,町村にありては部落の区域に五戸乃至十戸よりなる伍人組,什人組を,都市にありては町内会の区域に五戸乃至二十戸を以てする隣組,隣保班(町内会の区域大なる場合はその上に連合組を置く)を設置し,そしてこの細胞組織の運用によって運動の徹底,隣保相扶,自治協同の実を挙げんとするものである。従って自治行政の立場よりも注目を要すると思はれるので,こゝにその組織を紹介する。

実践網の組織

(一)町村の部
(イ)町村に於ける実践網の単位は凡そ五戸乃至十戸よりなる伍人組,什人組等の実践班とす。
(ロ)伍人組,什人組等の実践班には世話人を置き,世帯主及主婦随時会合す。
(ハ)部落に於ては其の代表者を中心として毎月全戸の常会を開催し世帯主を主として主婦及家族参会す。部落に於ては必要に応じ臨時実践班の世話人会を開くものとす。
(ニ)町村に於ては毎月町村長を中心として各部落の代表者及町村内指導者の常会を開催す。


(二)都市の部
(イ)都市に於ける実践網の単位は凡そ五戸乃至二十戸よりなる隣組,隣保班等の実践班とす。
(ロ)隣組,隣保班等の実践班には世話人を置き世帯主及主婦随時会合す。
(ハ)町の区域を以て町内会を組織し,町内会長を中心として毎月実践班の世話人及町内指導者の常会を開催す。
(ニ)市に於ては市長を中心として毎月町内会代表者の常会を開催す。
(ホ)六大都市其の他区の設置ある市に於ては区は区長を中心として町内会代表者,市は市長を中心として区の代表者の常会を毎月開催す。
(ヘ)実践班と町内会との間に組(仮称),町内会と区との間に部(仮称)を置くことを得。

 (三)其の他
(イ)大町村は都市の例に依ることを得。
(ロ)官公衙,学校,法人,会社,工場等は実践班の一戸と見做し部内に於ては各々常会を開催する。
(ハ)ビルヂング,アパート等にありては其の実情に応じ適宜実践班を組織するものとす。