『都市教化留意要項』

 

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全国民の過半数を占むる都市生活者教化の重要性に鑑み,本調査会は先きに数次の協議に基き,其の留意要項を指摘したるが,更に去る昭和八年八月十八,九両日に亘り宇治山田市に開かれたる全国主要都市代表の会同たる都市教化懇談会の協議を参酌し,尚ほ多少の所見を加へ,暫く左の数項を挙ぐ。

 

国民教化の大目標に向っては素より都市と農村とを分つべきにあらざるも,両者頗る事情を異にし必しも一を以て他に及ぼし難きが故に,玆には全般的なるものを略し特に都市教化として留意すべき諸項を列挙す。其の項目頗る多般に亘るを免れざりしは都市は農村の如く一様ならず,各自発展過程を異にし,集団の性質も,産業の状態も,将た又環境に於ても,文化に於ても其の趣を異にし所謂政治都市あり,商業都市あり,工業都市あり,信仰都市あり,遊覧都市ありて,一様の教化施設を以て各都市に共通し難きを慮り,各自当該都市は其の現実状態に適応すべく取捨按排せられんことを望みつゝ,茲に広く各般の留意要項を網羅す。


[中央教化団体連合会(1933)『都市教化留意要項』]