前回からの続き

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こんにちは、絶學無憂です。

セルフ筋肉反射テストの習得には、筋紡錘チャレンジ（筋紡錘のテクニック）を最初に練習するのがいいんじゃないかという形でご紹介しました。

私が人にゼロから筋肉反射テストを教える機会というのはこれまで一回しかありませんでしたが、その相手にはこれをやってもらいました。眼の前で実演した後で、本人に自分でやってもらうと最初から出来てました。ちょっと驚いてましたが。その時はそれ以上は進まなかったんですが、後で聞いても筋紡錘チャレンジの結果はずっと再現している、ということでした。

ちなみに私自身が最初にやったのは、ぜんぜん違う方法です。一人で行うOリングテストや、左右の手の指を組んだ状態で腕を引っ張り合うテストをやりましたが、どちらにしても思いっきり力任せの筋肉テストでした。

思いっきり力を入れた時に、ある条件のもとでは踏ん張りが効かないというのが違いとして分かるというものです。

何度も書いているように、筋紡錘チャレンジのような事前テストをやっていなかったので、スイッチングを起こしていて無意味なテストになっていても気が付かないので危険でしたが、加えて、このような力任せの筋肉テストは非常に効率が悪いものです。たくさんのテストを行うと、当たり前ですが指の筋肉や腕の筋肉が疲れて、痛みを覚えます。

ここから先も古いブログの記事の焼き直しになるのですが、力を使わない筋肉反射テストについて触れてみたいと思います。

どうしてmuscle testing　つまり筋肉テストの訳語が「筋肉反射テスト」となっているかというと、どうやらグッドハートのキネシオロジーが日本へ入ってきた時にそれを最初に書籍で紹介した伊東聖鎬（せいこう）氏が筋肉反射検査と名付けたことに由来するようです。詳しく彼の書いたものを読むと、「最初は筋肉検査をやっていたが、それでは筋肉の疲労が激しく実用に耐えないことが分かったので、筋肉反射検査を開発した」ということが書いてありますから、彼の意図としては、明らかにmusle testingの訳語である筋肉検査（筋肉テスト）と、筋肉反射検査（筋肉反射テスト）は別々の概念になっています。

今では、あまり区別されずに、なんでも筋肉反射テストと呼ばれることが多くなっていますが、力任せのテストが筋肉テスト、力を使わないテストが筋肉反射テスト、というのが元々の意味だったと考えて良いでしょう。

この「反射」という言葉に込められた意味というのが、ほとんど力を必要としない、ということと関係しています。

伊東聖鎬著「脳の情報を読む方法」に記載してある方法では以下のように書かれています。ここでは、友人が被検者（テスティー）で、あなたが検者（テスター）です。

19ページより

友人とあなたは向かい合って立つ。

友人は、肩幅程度に足を開く。あなたは片足を半歩前に出す。

友人は片腕を真横に水平に伸ばす。伸ばす腕はどちらでもよい。残った腕は楽に下に垂らす。

伸ばした腕の手の甲は上側になるようにする。その手は親指を外側に軽く握る。

あなたは、友人の肩—腕—手の甲がほぼ水平であるかどうか確かめる。ことに腕全体が肩より高くならないようにすることが大切。

あなたは友人の腕に、自分の利き腕の手指四本（人差し指、中指、薬指、小指）を軽く添えるようにのせる。

そして、友人の腕に軽くふんわりと加圧し、友人は、この加圧に対して伸ばした腕をしっかり水平に保つようにする。友人ははね返そうという力を用いず、あくまでもまっすぐなまま腕の水平位を保つようにする。そのとき友人の腕が水平位のままのとき（これはあなたの加圧と均衡しているからです）、ブレることなくカチッと止まります。この状態を「ロックしている」と言い、またこの位置を「バランス点」と言います。ここでは反射は無い（ゼロ）状態です。

ここまでが検査の準備になります。この手順の中で大切なことは、友人に腕を「肩—腕—手の甲の水平位を保つ」という意識をしっかり持ってもらい、あなたが加えた圧に対してそれ以上の力で反発させないことです。

他方、あなたは、四本指で加圧する時、強い力をかけるのではなく、自分の肩と肘の体勢をしっかり決め、友人の腕の僅かな緊張の変化を読み取るようにします。頬をやんわりとへこます程度の力で行うのです。

この際、あなたの耳を友人の腕に近づけるようにし、あたかも腕から情報を聞き出すかのようにすると、なおよいでしょう。

ところで、脳反射検査で利用する筋肉は、どの筋肉でもよいのです。ここでは、肩から腕についている「三角筋」を使っています。三角筋に力を入れた状態が、水平位なのです。

検査に入っていく前に、「バランス点」を確認しますが、加圧しようとしたとき水平位を保てず、腕がブラブラしている場合があります。

このように「バランス点」がとれない場合には、体の向きを少し変えて同じこと（1〜7）を行ってください。「バランス点」が確認できるまで、友人の体を少しずつ方向を変えながら、その都度1〜7を行って下さい。カチッと腕がロックし、「バランス点」が確認できる方向があるはずです。

なぜ方向を変えると、「バランス点」が確認できない状態から確認できる状態に変化するのか。これには訳があるのですが、それは後に詳しく説明します。結論だけ言っておきますと、友人は最初の位置において、何らかの影響を受けていたのです。

では、友人の腕がロックし、水平位を保つことが確認できたら、次に進みます。

検者は「バランス点」まで加圧したまま手を離さずに、さらにもう少し圧を加えます。この加圧を「チェック」と言います。

あなたは、8でチェックのために加圧した力だけを抜き、「バランス点」(7)に戻ります

8のチェックのための加圧も、ごく軽い力で行います。このときに何かの影響を受けていると、バランス点が無くなりロックしなくなるのです。つまり腕の筋肉に緊張が起こらなくなるのです。この腕のロック状態から、水平位を保持できなくなった状態に変化することを（+）反射と言っているのです。

細かく言えば、最初の手の位置から、ロックするバランス点までには「遊び」が多少あります。これはちょうど車のハンドルの遊びみたいなものです。

このバランス点を一旦確認した上で、検査される側の手はそのままの位置をキープするだけを意識しつつ、もう片方の手でほんの僅かに圧を加えると、たとえば筋紡錘のテクニックで筋肉のスイッチを切ってある場合や、もともとその筋肉のスイッチが切れている場合には、ずるずるずるずると関節が動いてしまう。

伊東聖鎬さんは、このように本来じゅうぶん耐えられる程度のごく弱い負荷に対して、筋肉が屈してしまうというのは、「脳の反射」によって、筋肉に力が入らなくなっているからだと考えました。彼の用語ではこのようになっているようです。

（−）反射というのは筋肉が、位置を保持できる→保持できる、というように状態が変わらないことで、タイミングが合っている
（+）反射というのは筋肉が、位置を保持できる→保持できない（アンロック）、あるいは保持できない→保持できる、というように状態が変わることで、タイミングがずれている

伊東聖鎬氏自身の言葉によれば「腕の筋肉を緊張させる脳の反射がずれることでタイミングがずれてしまうのです。」

私の言葉で解説を試みると、こんな風になります。

バランス点では、検査で調べている筋肉と、反対の手で加えている圧との間で力が拮抗して均衡状態を作っています。

この状態、バランス点においては、筋肉は多少緊張していますが、伸び縮みという長さの変化は起こっていません。じっとその場にあるだけですから、こういうのをアイソメトリック（isometric 等尺性）な筋収縮と言います。

バランス点から、さらにわずかに付加を加えたとき、筋肉がロックする正常状態、つまり（−）反射の状態では、加えた分の負荷に対抗するように、調べている筋肉のほうもさらにアイソメトリック収縮が加わって、自動的に加わったぶんの負荷を瞬時にキャンセルすることによってバランスを維持し、ロック状態を維持するわけです。

この部分は神経生理学的にうまく理解できそうな気がしますが、実際にどのような仕組みが働いて、同じ関節の位置を維持できているのか、今の所私は把握していません。関節の位置をそのままにしようという意思が必要ですから、脳からの情報が重要なのは確かですね。そしてまた、関節の位置をそのままにしようという意思が必要であることから、動物実験を考えるのはとてもむずかしいのかもしれません。

ところが、（+）反射、つまりアンロックする状態では、バランス点から、さらにわずかに付加を加えたとき、この新しいわずかな負荷に対抗すべく筋緊張を瞬時に調整する部分の仕組みが働かないのです。なのでわずかな力でも押されるがままにずるずるずるずると関節が動いてしまう。

このことを知るとセルフ筋肉反射テストにどのようなメリットがあるでしょうか。

はじめから私の紹介する方法では、思いっきり力を入れて筋肉反射テストをやりましょうとは言っていませんが、「新しいわずかな負荷に対抗すべく筋緊張を瞬時に調整する部分の仕組み」が働いているか、そうでないかを調べるだけだとすれば、押す方の手も押される方の手もほとんど力を必要としないということになります。

そして、これは単に筋肉が疲れにくいというメリットもありますが、より繊細に筋肉の状態を調べていることになり、結果の精度も上がるかもしれません。

次回へ続く

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24. セルフ筋肉反射テストのやり方を教えてください。その12 - 力を使わない筋肉反射テスト