男はつらいよ 寅次郎頑張れ!
 ★★

松竹/95分/1977年(昭52)12月24日公開 <第20作>    
原作    山田洋次    脚本    山田洋次 朝間義隆    監督    山田洋次
撮影    高羽哲夫    音楽    山本直純    美術    出川三男
共演-倍賞千恵子・下條正巳・三崎千恵子・前田吟・太宰久雄・笠智衆
ゲスト-藤村志保・中村雅俊・大竹しのぶ・石井均・桜井センリ・杉山とく子


併映『ワニと鸚鵡とオットセイ』監督:山根成之 出演:郷ひろみ、樹木希林
動員数188万1千人/ロケ地・長崎県平戸
 

★「男はつらいよ」シリーズ第20作目。


タイトルバックの音楽は一番のみで長い間奏があり最後にサビの部分が繰り返される。以後、このパターンが主題歌として定着していく。

寅が帰ってくると居候の中村雅俊と一悶着、警察も来て大騒ぎとなる。米倉斉加年のお巡りさんが第16作以来同じ役で出ている。この回は他に杉山とく子や桜井センリなども再出演している。いわゆる山田組の常連役者たちなのだろう。

今回は寅は喧嘩してすぐに旅に出るのではなく、朴訥とした青年、中村雅俊と食堂で働く純粋な大竹しのぶの恋模様に絡んでいく事になる。このパターンは第14作の十朱幸代と上條恒彦と似ている。実年齢で中村26歳、大竹20歳なので前回よりはかなり若返った。さすがに20歳の大竹に寅が惚れるわけには行かず、かと言って今回のマドンナ藤村志保はなかなか出てこない。

中村は大竹に失恋したと勘違いして、とらやの二階でガス自殺を図るのだが、ホントにガスが爆発して階段から転げ落ちてくる。煤で真っ黒になった中村も含めての山田洋次の演出は、リアリティーを重視してきたこのシリーズではかなりの違和感がある。三文喜劇映画のパータンだった。

映画が始まって一時間近く、やっと長崎の平戸で寅は藤村と出会う。藤村志保はこの時38歳。大映のスター女優として主に時代劇で活躍して来た。出番が少ないせいかあまり印象に残らない。中村と藤村が東京の大竹に会いに行くために、赤の他人である寅に留守番を頼む設定はとても無理がある。ましてや行き先は寅の実家がある葛飾なのにだ。

ラストに寅は振られるわけだが、何か無残さばかりが残り、いつもあるアイロニーが感じられない。エンディングで旅回りの一座と会うのもご都合主義の極みでカタルシスも何もない。

ただひとつ爆笑したシーンが有る。とらやでみんなが囲んで栗を食べながら寅を心配している。画面左手にタコ社長が栗を食べているのだが、皮が引っかかったらしく大口開けて必死に取ろうとする。ガバッ!、と皮が取れて社長はひと安心するのだが、セリフもない、とらやの人達との絡みもないシーンだが観ていて大爆笑してしまった。太宰久雄、一世一代の名アクションだった